FRBによる金融政策方針の見直しとインフレリスクへの対応

  • 新しい金融政策方針は雇用の最大化を重視: FRB(米連邦準備制度理事会)が発表した新しい金融政策方針の主眼は、インフレ期待の安定を通じた雇用の最大化への注力にあり、低金利環境の長期化を連想させるものだった。FRBは、景気回復の恩恵が経済的弱者に行き渡るまで金融緩和を継続する姿勢を明確にするとともに、新たに導入した柔軟な平均インフレ目標の下で、一時的に2%を上回るインフレを容認する方針を示した。最大雇用の実現に長い時間を要すると見込まれるなか、FRBの金融政策のカギとなるインフレリスクに注目が集まるものの、経済の構造変化とウィズコロナ時代におけるサービス価格の下方圧力を背景に、インフレ率が2%の目標を安定的に上回る状況は当面見込みにくい。

  • インフレ率は来年一時的に2%を超える可能性: もっとも、テクニカル的な要因によって、来年前半にインフレ率は一時的に2%を上回る水準へと加速する可能性がある。これは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済自粛が強まった今年4月に物価指数が一時的に下落した結果、ちょうど一年後の来年3月から4月は、前年比で計測したインフレ率が実力以上に押し上げられるためである。もっとも、そうしたインフレ率の上昇は一過性の動きに過ぎず、長期的なインフレ率は2%目標を下回って推移する可能性が高い。しかし、実際には計算上の一時的なインフレの加速であったとしても、同じ時期に経済回復の加速や資源価格の上昇、ドル安などが加わった場合、インフレリスクへの連想から金融市場が浮足立つ可能性が懸念される。

  •  “偽りのインフレ”リスクに備える資産選択: 過去を振り返ると、世界金融危機をきっかけとする物価下落の反動によりインフレ率が急上昇した2009年12月には、米国長期金利が短期間に大幅な上昇を演じた。同じように来年4月にかけてテクニカルな要因によるインフレ率の加速をきっかけに長期金利が急上昇することがあれば、低金利環境の継続を前提とした金融市場に変化を生じ、資産間のパフォーマンスに大きな差が出てくる可能性がある。そうした状況を前提に来年の春先までの投資戦略を検討する場合、金利上昇に備えたデュレーションの短期化に加えて、クレジット投資による利回りの確保、円安や期待インフレの上昇に耐性を持つ資産の選択が有効となるだろう。

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