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視点:CIO

投資とボラティリティ:政治リスクを考える

  • 2022年4月6日 (5 分で読めます)

この2年間、投資家は市場のボラティリティに耐え、それを乗り越えていかなければなりませんでした。その主な要因は当初は新型コロナウイルスの大流行でしたが、最近では金融引き締め政策の導入やロシアによるウクライナ侵攻などで、新たな不確実性の波が押し寄せています。

ロシアの行動は、人的被害だけでなく、経済的にも大きな損失をもたらすでしょう。政治的緊張が軍事的衝突にエスカレートしたことで、世界の株式市場は売られ、原油価格は7年ぶりに1バレル100ドルを超えました。短期的な市場の変動だけでなく、世界のエネルギー供給、インフレや金利の動向などにも影響を与える可能性があります。

地政学および国際関係は常に金融市場と投資パフォーマンスに大きな影響を及ぼしてきました。政治リーダーの不明確な公式声明、継続する貿易戦争、あるいは軍事衝突に至るまで、様々です。投資家が不確実性を嫌うことは、これまでの歴史を見ればお分かりの通りです。政治家や政策立案者の言動には、市場に影響を与える可能性が潜み、実際に影響を与えています。

政治および政治的レトリック

政治問題などが浮上すると投資家は現金化の誘惑に駆られますが、そうしてしまうと損失を固定化させることになり、その後の回復を逃してしまう可能性があります。確信を持ち、長期的なリスク許容度が高い投資家にとっては、短期的なボラティリティは、政治が原因かどうかにかかわらず、優良資産を割安で手に入れる好機となります。

例えば、2020年に起きた新型コロナ感染拡大は未曽有の事態でしたが、市場の変動にもかかわらず、ワクチン開発や政府・中央銀行の前例のない景気刺激策により、世界株式は16.5%上昇して年を越しました1 。 一方で、2021年5月にはイエレン米財務長官が、経済の過熱を阻止するために米国の金利を引き上げる必要があるかもしれないと警告し、世界市場の売りを誘いました。その後同長官は、インフレ問題は当面は発生しないと投資家を安心させようとしました2 。結局、2021年に株価は再び力強い上昇を見せ、MSCIワールドインデックスは22.4%上昇して1年を終えました3

約10年前の2013年には、バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が債券購入プログラムの停止に言及し、今では悪名高い「テーパー・タントラム(テーパリングとタントラム(かんしゃく)を組み合わせた造語)」で米国債利回りを急上昇させました。しかし、当初の動揺が和らぐと、市場は回復しました。

過去のパフォーマンスを将来のリターンの目安として見るべきではありませんが、過去50年間の軍事的イベントを見ると、ボラティリティに関するいくつかの興味深い教訓を学ぶことができます。1990年のイラクによるクウェート侵攻の後、市場は4カ月で反発しました。2001年9月11日の米同時多発テロの後、市場は3週間で当初の下落分を取り戻しました4

今後の重要な選挙がさらなる動揺をもたらす可能性

政治リスクがなくなることは当面ありません。今年は先進国、新興国を問わず、重要な選挙が行われる予定です。これらはすべて、投資家の神経を逆なでする可能性があります。

米議会の中間選挙は今年11月に行われ、予備選は3月に既に始まっています。上院の3分の1以上の議席と下院の435の全議席、そしていくつかの注目すべき州知事選が争われます5

多くの新興国では、選挙の年は財政支出の増加と重なるため、すでに脆弱だった財政状態が大幅に悪化し、通貨や債券利回りに圧力をかけることが多いです6 。新興国が民主主義を成熟させるにつれ、金融と政治のサイクルはいくぶん切り離されてきましたが、2022年にはいくつかの重要な選挙が控えており、市場は政治的な出来事に敏感になる可能性があります。

ラテンアメリカでは、ブラジル、コロンビア、コスタリカが選挙に臨み、チリは新憲法に関する国民投票が行われるなど、物議を呼ぶ可能性のある選挙が目白押しです。なお、コロンビアでは最近、議会選挙と大統領選挙の予備選挙が行われ、政治的・経済的な見通しに対してはまちまちな結果となりました。ペルーでは、カスティジョ大統領の弾劾裁判が議会で承認され、政治的ノイズが再び大きくなっています。アジアでは、5月に行われるフィリピンの大統領選挙について政策の方向性が変わるかを注視する必要があり、欧州ではセルビアが重要な選挙の年を迎えます。そして2022年10月には、中国で5年に一度の最も重要な政治イベントである中国共産党第20回党大会が開催されます。

気候変動

気候変動は地政学的な問題として捉えられつつあり、特に、2021年11月に開催された国連環境サミットである第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)後の、政府の政策やプログラムに投資家は細心の注意を払っています。ネットゼロ世界への移行は、各国政府の予算配分に影響を及ぼします。複数の調査が、各国は現在、対策に向けた十分な資金を確保していないと警告しており、増税から他のセクターからの資本再配分、政府のグリーンボンド発行増に至るまで、あらゆる影響が予想されます。

さらに、ネットゼロへの移行が十分でないとみなされた国は、その国が発行した債券が投資家から敬遠されるリスクもあります。

ボラティリティは投資機会を提供

明確なことは、政治的イベントや決定は、程度の差こそあれ、常に金融市場の変動を引き起こすということです。確信を持ち、長期的なリスク許容度が高い投資家にとっては、短期的なボラティリティは、優良資産を割安で手に入れる好機となります。

このように、投資家は短期的な市場パニックに巻き込まれるのではなく、長期的な投資目標に集中することが重要です。

なお、資産クラスの分散は有効です。十分に分散されたポートフォリオの維持は損失回避を保証するものではありませんが、同時に同じ方向に動くとは限らない異なる資産クラスに投資することで、リターンの最大化および損失の最小化を目指せます。これは、長期投資家にとって、不安定な市場の影響を平準化するのに貢献するとみられます。

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