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マクロ経済リサーチ

ウクライナ危機に関するアップデート:金融市場、世界経済の成長、インフレについての見通し

  • 2022年4月4日 (7 分で読めます)

ウクライナでの戦争は、ウクライナとその国民に大きな犠牲を強いつつ継続しています。そして、金融市場は高いボラティリティに直面し、エネルギー価格は急騰しています。

本稿ではアクサIMの専門家4人が、ウクライナ危機が金融市場、世界のマクロ経済見通し、インフレ動向、エマージング市場に与える影響について、それぞれの見解を説明します。

クリス・アイゴー、コアインベストメント最高投資責任者

ウクライナ危機は、市場に大きな不確実性をもたらしています。市場がインフレ率上昇と金融引き締めの見通しに対処していた矢先に、エネルギー価格と成長予想への懸念が加わったのです。

金利は上昇し、債券利回りは2021年の低水準から大幅に上昇しました。クレジットスプレッドも大きく拡大し、投資家がより高いリスクプレミアムを求めているため、多くの株式のバリュエーションが低下しています。

このような新たなバリュエーションの状況下、市場に再参入すべきでしょうか。不確実性が高いため再参入の判断は困難ですが、市場に何が織り込まれているかを考えると、魅力的な水準に近づいている可能性が見えてきます。債券の場合、市場は今後12カ月間の金融引き締めを織り込んでおり、それが正しければ、利回りの上限が形成されることになります。米連邦準備制度理事会(FRB)が着実に金融引き締めを進める中、ベンチマークとなる10年債利回りは今回のサイクルでは2.5~3%でピークに達すると当社は見ています。

クレジット市場は依然として良好な状態にあると考えます。クレジットスプレッドの拡大は、投資適格債とハイイールド債の両方のリターンが国債のリターンよりも優れている可能性を示唆しています。

ウクライナ紛争による景気後退リスクの高まりは、株式の業績予想にまだ十分に反映されていないと思われます。引き締めサイクルの影響は遅れて現れる傾向があるため、今後一株当たり利益予想が下方修正される可能性があります。

ロシアとウクライナの和平交渉のニュースに市場はポジティブに反応しましたが、株式市場は依然として債券利回りの上昇、金融引き締め、企業業績の下方修正に対応する必要があります。インフレ動向の先行きに左右されるものの、現在の金利見通しは当面は適切な水準であると確信しています。

デイビッド・ペイジ、 マクロ経済リサーチ・ヘッド

ウクライナ戦争は、ウクライナとロシアの経済に大きな影響を与えるでしょう。ロシアに対する制裁は長期に及ぶと予想され、エネルギー価格の高騰も続くと思われます。ロシアとウクライナは主要なコモディティ供給国であるため、サプライチェーンの混乱により、世界のインフレ率は記録更新を続け、これまで予想されていたような急速な低下は見られないと考えます。

天然ガス価格上昇の影響は、実質所得、家計消費、企業投資に及ぶため、欧州は今後の成長ショックの中心にあるといえるでしょう。当社ではユーロ圏の成長率は2022年4~6月期に低下し、7~9月期には横ばいからプラスに転じると予想しています。二期連続の低下はリセッションを示唆します。年間では、ユーロ圏の2022年GDP成長率は2.1%、2023年は1.2%と予測しています。

英国も、ガス料金の上昇に見舞われ、すでに生活費の急激な上昇に直面しています。その結果、実質所得の落ち込みは英国としては1970年代以来最悪となる可能性があります。これまでのところ、財政対応は欧州よりも小さく、中央銀行は、引き締め政策を進めています。このため、英国の経済活動に大きな打撃を与える可能性があります。当社では、英国の2022年の成長率は3.8%、2023年は0.7%と見ています。

米国については、原油価格の上昇はガソリン価格に反映され、個人消費に大きな影響を与えます。実質所得は圧迫され、米国の成長率はおそらく大幅に減速すると考えられます。成長は持続するものの、在庫の急激な減少により、四半期ベースではマイナスになるリスクもあると見ています。これは2022年後半に顕著になり、その結果FRBは引き締めペースを若干弱めることになると予想しています。

中国は、構造転換のほか、新型コロナの再流行など、国内の課題に直面しています。政府目標である今年の成長率5.5%の達成は困難とみられ、これを下支えするために大幅な財政・金融刺激策が実施されると予想します。より広範なエマージング市場にとっては、食糧価格の上昇は大きな問題であり、エマージング市場の中央銀行は引き締め政策をさらに進めなければならない可能性があります。

全体としては、世界のインフレ率が顕著に上昇することで、今年の世界経済の成長率は3.1%、来年は2.8%に減速すると予想します。これにより、先進国の中央銀行による金融引き締めの必要性は薄まり、2023年には引き締め中断の余地もあると思われます。

マグダ・ブラネット、エマージング市場及びアジア債券ヘッド

米ドル建てエマージング市場債指数は、リスク回避の高まりやスプレッド拡大、米国債の急落も影響し、2022年初めから10%程度下落しています。

ウクライナ侵攻が始まると、ロシアとウクライナのソブリン債は急速にディストレス債(財務破綻に陥った企業の債券)水準に移行し、市場は両国のデフォルト確率を同じと見なしています。侵攻前のロシアの格付けが「BBB(投資適格)」、ウクライナの格付けが「B-」であったことを考えると、これは非常に驚くべきことです。

ロシアの債務返済能力はまだ比較的高いため、債務不履行の問題は同国の返済意思に関わるものとなります。例えば、ロシアはドル建て債の一部をルーブル建てで買い戻すことを提案していますが、これは債券のデフォルトイベントとなります。

それでも、両国がエマージング市場債券指数に占める割合は、ロシアが約3.5%、ウクライナが約1.5%と比較的小さいものです。ロシアがすべての債券指数から除外されても、約70カ国と、約450社のドル建て債を発行する企業で構成される、十分に分散された投資ユニバースが残ります。

コモディティ価格の上昇は、実際にはこの投資ユニバースの約半分には追い風となっています。コモディティ輸出国では交易条件にプラスの影響があり、通貨や財政を下支えしていますが、コモディティ輸入国はマイナスの影響を受けています。

エマージング市場にとっての主な逆風はFRBの引き締めです。これは米ドルの流動性低下を意味することから、歴史的にみてもエマージング市場にとってプラスにはなりません。米ドルの流動性を必要とする資金調達ニーズの高い国々が最も大きな影響を受けることになります。しかし、これまでのFRBの引き締めサイクルと比較すると、多くの新興国は現在、交易条件の改善により資金需要が減少しています。

新興国は2021年以降、積極的に金融引き締めを行い、インフレ問題に先手を打ってきたため、現在では多くの新興国が米国やユーロ圏よりも高い金利となっています。この金利差は急激な資本流出の可能性を引き下げ、新興国とその通貨にとって支援材料になっています。

今後を見ても、エマージング市場のハードカレンシー債利回りは投資妙味のある水準と思われます。投資ユニバースのハイイールド債セグメントの利回りは10%弱となっており、これは歴史的に見ても非常に高いものです。2020年の一時期を除けば、この資産クラスでは過去10年間で最も高い利回りとなっています。

ジョナサン・バルトラ、ソブリン、インフレ、FX、債券ヘッド

現在の世界的に高いインフレ率は、新型コロナ関連の混乱と短期的な原油価格上昇の結果であると同時に、3つの長期的な構造変化が影響していると考えています。それは、財政支出、脱グローバル化と貿易戦争、そしてグリーン革命です。

緊縮財政の時代は終わり、政府は消費者と企業を支えています。財政支出はすでに増えており、ウクライナ戦争による軍事支出の増加も予測されます。これは財政赤字が拡大することを意味しますが、経済成長が加速し、インフレが進む可能性もあります。

2018年に始まった米中貿易戦争の後、脱グローバル化はすでに一つの要因となっていましたが、ウクライナ戦争はこの流れを加速させ、企業にバリューチェーンおよびサプライチェーンの見直しを促しています。企業は、原材料や労働力などを最も安い供給源に頼れなくなり、自国生産を強化しようとしています。

また、グリーン革命は、世界がネットゼロに移行する中、人々の環境に配慮した購買が活発となり、インフレの要因になると考えています。

当社は、現在の極端に高いインフレ率は2022年後半に減速し始めると見ていますが、ウクライナ戦争のために導入された措置がその減速を遅らせる可能性があります。例えば、米国は石油備蓄の市場放出を検討していますが、その場合、今後在庫の積み増しが必要になります。このため、石油備蓄の放出は短期的には石油価格を下げる効果がありますが、2023年には価格を上昇させてしまう可能性があります。

それでも、市場が織り込こんでいるインフレ率を見ると、2022年のインフレ率は非常に高い予想となっていますが、来年、再来年は劇的に低下する予想となっています。

当社では、ここに投資機会があると考えています。例えば、5年物の米インフレ連動国債(TIPS)は、今から年末まで4%から5%のインカムが見込まれ、インフレ水準上昇により非常に魅力的なキャリーになると同時に、予想以上に長引くインフレに対するヘッジにもなると考えています。

ブレークイーブンインフレ率のカーブは大きく反転しており、市場はまだインフレが一過性であることを示唆しています。原油価格の暴落が最大のリスクですが、当社の中心シナリオではありません。仮に原油価格が1バレル90ドルまで下落したとしても、短期デュレーションインフレ連動債が当社の選好する戦略であることに変わりありません。前年比インフレ率が鈍化し始めるまでは、インフレ連動債市場は強気を維持すると考えています。

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