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マクロ経済リサーチ

新型コロナウイルスのマクロ経済および運用戦略への影響に関するアップデート: 経済回復への道のり - 2020年4月23日

  • 2020年4月23日 (5 分で読めます)

当資料は、金融商品取引法で定義されている適格機関投資家を対象としており、一般投資家向けではありません。当資料は、4月23日にアクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサ IM)が開催した新型コロナウイルスの影響に関する顧客向け電話会議の内容を要約したものです。

新型コロナウイルス危機が、引き続き市場に大きなボラティリティをもたらしています。世界経済にとって異例で厳しい状況ですが、政策担当者および中央銀行は、市場の安定とマクロ経済対策で決然とした行動を取っています。当社の専門家が、現状に関する見解および今後の見通しと投資機会を説明します。

アクサ・グループ・チーフ・エコノミスト、ジル・モエック

ロックダウン(都市封鎖)の主要目標は医療システムの対応能力を温存することで、新型コロナの2次感染を抑えるためでした。欧州の大半の国ではこの目標は達成されつつあり、ユーロ圏の多くの国は5月中旬までに正常化すると当社は予想します。

ロックダウンのピーク時には、経済活動は通常水準を約3分の1下回っています。ユーロ圏の場合、第1四半期末にかけて2週間ロックダウンの影響を受けたので、想定ではGDPは前四半期比で約6%減少する見込みです。第2四半期の後半にかけて経済が正常化するとすれば、同四半期のGDPは第1四半期からさらに12%減少すると予想され、正常化が緩やかなペースで進んだ場合にはマイナス幅はさらに大きくなる可能性があります。

政策対応を抜きにして考える場合、中国の例が参考になります。中国は早期にロックダウンを解除しましたが、経済回復のペースは抑制されていると見込まれています。中国ではコロナ感染拡大で消費が抑えられていましたが、ロックダウンが解除されたとしても、消費者はすぐに消費に走るのではなく慎重な行動を取ると当社は予想しています。投資への影響は長引きそうです。設備稼働率はすっかり低迷し、不透明性が依然として高い状況です。企業は2次感染拡大の可能性を考慮し、設備投資計画を完全に再開させることを躊躇する可能性があります。なおシンガポールは、感染の初期段階で効果的に拡大を抑えたと言われていましたが、ここにきて感染が拡大しています。

政府は、経済政策を緊急支援策から中期的な経済回復策に転換する必要があります。企業に対する政府保証の緊急ローンは企業の生命線を維持していますが、短期で返済しなければなりません。また、FRB(米連邦準備制度理事会)の企業向けローンの金利は低いとは言えず、指標であるSOFR(担保付翌日物調達金利)よりも250~400ベーシスポイント高くなっています。こういった状況が企業のキャッシュフローを圧迫し、回復が鈍る可能性があります。

当社は、新型コロナ感染の深刻な局面が過ぎた後でも財政政策が長期的に必要と考えており、中央銀行も困難な決断に迫られると考えています。当社が最も重視しているのは、中央銀行がバランスシートに抱え込んだ公的債務をいかに早期に切り離せるかです。しかし、数十年にわたる再投資(拡大したバランスシートの維持)が必要かもしれません。これは特にECB(欧州中央銀行)にとって困難な決断になる可能性があります。というのも、拡大したバランスシートを維持する場合、極めて長期にわたりキャピタルキー(各国のECB出資比率)に再収束できないと見込まれるためです。当社の見解では、イタリアはこの不明確な状況の主な犠牲となるでしょう。

アクサIM 最高投資責任者(コア・インベストメント)、クリス・アイゴー

我々は、過去最大の一時的な経済活動の落ち込みに直面しています。順調な回復軌道を望みたいものですが、最終的な経済回復の形状と強さは不明です。

当社のコア・インベストメント部門の多く資産クラスを見渡してみると、S&P500インデックスが直近最安値を付けた3月23日以降ほぼ全てがプラスのトータルリターンをあげていて、マイナスを見つけるのが難しいくらいです。米国株が回復を先導し、小型株、新興国株式、ハイイールド債が続いています。

クレジット市場も堅調です。インフレ連動債、米国債、その他の国債も、2月中旬から3月中旬にかけての全般的な弱気相場で獲得したリターンを何とか維持しています。

それにもかかわらず、市場には乖離があり、資産運用担当者に対して投資機会を提供しています。新型コロナ危機前には、投資家は全て資産が割高となっている問題に直面していました。現在、一部の資産クラスはさらに割高になっていると見られますが、かなり割安になったものも見受けられます。

国債はさらに割高になり、利回りは魅力的ではないと多くの人は指摘しています。当社もある程度はそういう見方を取ります。しかし、超低金利環境が長期的に継続するとみられ、政府が巨額の財政赤字を維持するために中央銀行がバランスシート拡大を続ける状況下、国債は大きなリターンを生まないものの、確実なキャッシュフローを提供してくれます。

クレジットは割安になっていると当社は見ています。クレジットスプレッドは大きく、クレジット市場の大半の銘柄は中央銀行のクレジットファシリティの恩恵を受けられ、その状況は今後も継続されるでしょう。これにより、レバレッジの上昇および格下げリスクの高まりといったファンダメンタルズ悪化の影響を抑えられるとみられます。

当社は特に、クレジット市場の短期部分を選好しています。イールドカーブは再びスティープ化すると当社は見ており、クレジット市場が正常化するにつれ残存期間が短い債券の利回りはさらに低下するでしょう。

株式については、現在の株価水準は割安ではありません。特に来年にかけての企業の利益予想を考慮した場合にはそうです。それでも、現在が弱気相場と見なすのであれば(そうとは言えないでしょうが)、クレジットは投資家ではなく、中央銀行や各国財務省に向かうべきでしょう。より多くの債務と中期的見通しに関する懸念が高まるためです。

アクサIM ソブリン債、インフレ連動債、FXヘッド、ジョナサン・バルトラ

最近のボラティリティが高く不透明な市場環境の下で、多くの投資家は安全性の高い資産を求めてています。こうした中で、当社はインフレ連動債が魅力的と考えています。

各国中央銀行による量的緩和策(QE)が再開され、その規模が著しく拡大しているため、インフレ連動債はその恩恵を受けられると当社は予想しています。

ソブリンなど格付けの高い発行体によって発行されるインフレ連動債は、投資家に安心を提供します。さらに、多くのインフレ連動債は、中央銀行による資産買い入れの対象となっており、一定の流動性が確保されています。

最近の(インフレ率の低下による)実質金利の上昇は、インフレ連動債に投資する好機であると当社は考えています。歴史的に中央銀行の量的緩和策には実質金利を押し下げる効果があり、インフレ連動債の価値を下支えします。

当社では、金融緩和策が長期化するという金融市場の想定と比較して、現在の実質金利は高すぎると考えています。

原油価格の下落と世界経済がさらに減速するという見通しの結果、予想インフレ率は押し下げられています。

もっとも、2020年の予想インフレ率がほぼ0%へ低下したことは妥当だとしても、世界的な金融緩和と大規模な財政刺激策がインフレ率へ与える影響はまだ反映されていません。

2008年の世界金融危機や2011年の東日本大震災による景気後退の後に見られたように、景気回復時にはインフレ圧力が加わる可能性があります。

いずれにせよ、金融市場は将来のインフレ率の上昇に備える必要があり、当社では現在の期待インフレ率はあまりにも低い水準にあると考えています。

新型コロナの世界的拡大に伴う需要の減少により、NYに上場する原油先物価格が史上初めてマイナスになるなど、原油価格の急落は短期的なインフレ見通しを悪化させています。

もっとも、食品やエネルギー価格は短期的なインフレ率の変動に大きな影響を与える一方、中期的なインフレ率の水準に対する影響は限定的であることに留意するべきです。つまり、目を引く原油価格の変動は「ノイズ」に過ぎず、市場参加者の原油安見通しは既にインフレ連動債の価格に織り込まれているということです。

当社は実質金利のさらなる低下を予想しています。政府の財政支出拡大を支えるために中央銀行が潤沢な資金供給を続ける中で、インフレ連動債の魅力は再び高まりつつあります。

アクサIM アクティブ新興市場ヘッド、サイレシュ・ラッド

新興国は嵐の直撃を2方面から受けています。第一は新型コロナ感染の拡大に伴う医療危機であり、第二は原油およびコモディティ価格の崩壊です。これらにより今後の世界経済の減速および資産価格の下落を予想し、新興国資産の急激な格下げが起こっています。

新興国におけるコロナ感染状況は欧州大陸や米国ほどではありませんが、これは単に検査数が少ないことに起因する可能性があります。なお、多くの新興国や途上国の医療体制は貧弱で、人口も都市に集中しているため、ロックダウンは効果を上げないとの見方もあります。コロナ感染は、全般的に弱い世界経済の成長軌道と相まって、新興国の国内需要や消費の低迷に追い打ちをかける可能性があります。

なお、以前の市場危機時には新興国は資本流出を食い止めるため金融引き締めを行ない、通貨防衛のため外貨準備を使い果たしましたが、今回の場合、多くの新興国は金利を引き下げ、自国通貨の下落を許容しています。IMF(国際通貨基金)は加盟途上国に対して1兆ドルの融資を準備していますが、一定の条件があり、さらに今後債務返済が困難になると見なされる場合には融資を受けられません。G20は先週、低所得国の債務返済を年末まで猶予することで合意しました。一連の施策は、新興国が現在直面している圧力をかなり和らげると考えられます。

新興国債券のスプレッドは年初の倍に広がっており、そして勝者と敗者が明らかになっています。このため、投資する上でどの国を選ぶかがカギとなります。たとえば、当社では(海外で働いている労働者からの)海外送金やツーリズムに大きく依存している国を避けており、たとえばコスタリカやドミニカです。

当社では、原油の産出国や輸入国についても選別しており、原油生産コストが高いナイジェリアやアンゴラの保有比率を減らしています。

多くの新興国債券のイールドカーブがフラット化してきているため、当社は償還期間が短い、5年までの債券投資を選好しています。これは、中長期についてはデュレーションリスクに見合うリターンが十分ではないと当社は考えているためです。

リスク選好姿勢が戻りつつあるものの、市場は依然として安全資産追求モードです。新興国はリスクの高い資産と見なされており、リスク選好復活の恩恵をすぐには受けられないでしょう。しかし、資金調達圧力が高まり、デフォルト率も上昇した場合、状況は大きく変わる可能性があります。

ファンダメンタルズが新興国資産クラスのパフォーマンスを大きく牽引していくでしょう。そして、主に銘柄選択がパフォーマンスの違いを生み出していくと当社は考えています。

以上

新型コロナウイルスのマクロ経済および運用戦略への影響に関するアップデート: 経済回復への道のり - 2020年4月23日
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