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Investment Institute
視点:チーフエコノミスト

ミッドサマー・ブルース(欧米に漂う真夏の憂鬱なニュースフロー)

  • 2022年8月1日 (7 分で読めます)

キー・ポイント:

  • 米国は依然として「本格的な景気後退」に陥っていない。米国では労働市場の動向が重要であり、米連邦準備制度理事会(FRB)は警戒を解く前に賃金上昇減速の明確な兆候を見たいであろう。

    ユーロ圏の4~6月期GDPは予想を上回る成長となったが、内容は脆弱である。ロシア産天然ガスを欧州に供給する「ノルドストリーム1」パイプラインは、能力の20%まで減らされていることが大きなリスクとなっており、欧州中央銀行(ECB)に重要な問題を提起している。

米国の4~6月期のGDPは2四半期連続でマイナス成長となったことから(「テクニカルリセッション」を示唆)、景気後退の定義に関する議論が盛んになっています。当社の見解は極めてシンプルです。確かに2022年前半の経済の縮小要因は「本格的な景気後退」と認定するには計測範囲が狭すぎるかもしれませんが、基本的なシグナル、特に消費の下支えの弱まりは懸念材料である、ということです。景気後退については、大幅な失業が主要因となるはずです。しかし、失業保険申請件数に幾分その初期兆候が見られるにもかかわらず、今のところ大幅な失業の兆候は見られません。これはFRBにとって重要です。FRBは新ケインズ派的なアプローチを諦めておらず、(物価上昇と失業の関係を示した)フィリップス曲線をまだ信じており、労働市場の悪化が賃金上昇の減速を引き起こすことを望んでいます。このため、今後数回の雇用統計の発表が重要であり、統計発表に伴い大きなボラティリティが発生する可能性があります。市場は今のところFRBの引き締め局面を見極めようとしていますが、FRBは簡単には警戒を解こうとしないでしょう。

ユーロ圏の4~6月期GDPは市場予想を上回り、米国とは対照的な結果となりました。しかし、このアップサイドサプライズの詳細を見てみると、ユーロ圏の基本的な状況は依然として極めて脆弱であることを示唆しています。新型コロナ感染拡大に伴うロックダウンから再開後のキャッチアップは、欧州の方が米国より遅れて始まっています。このキャッチアップ効果がなくなると、当社はユーロ圏のGDPも減少すると予想していますが、減少幅は欧州連合(EU)に供給されるロシア産天然ガスの量に依存するとみられます。当社の試算では、ロシアがノルドストリーム1を通じて供給するガスを容量の20%に抑え続けた場合、ドイツとイタリアはロシアからの直接供給だけでは冬を越せなくなり、他の配給に頼る必要が出てきます。つまり、EUレベルでの天然ガスのリソースプールに頼らざるを得なくなり、景気後退の行方もその影響を受けます。その一方で、ノルドストリーム1の小規模な20%の供給は、ロシアの観点からは最適なレベルであり、ロシアは欧米に対する大きな圧力を維持しつつ、物価上昇を考慮すると適切な外貨収入を得ることができます。ガス配給が引き金となった景気後退局面でECBがどのような行動を取るかが鍵になります。今のところ、ECBはさらなる利上げに踏み切るのが自然な流れと思われます。ECBのタカ派的レトリックがトーンダウンするには時間がかかるかもしれませんが、市場は焦っています。


注:Macrocastは8月はこの後休刊いたします。皆様どうぞ良い夏休みをお過ごしください。

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