グリーン、ソーシャル、サステナビリティボンド市場の成長可能性とESG要因分析の重要性を強調
アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)の債券グローバルヘッドであるマリオン・ルモレデックは5月24日、Responsible Investor主催のカンファレンス「RI Japan 2022」のセッション「債券戦略におけるサステナビリティ」にパネリストとして登壇いたしました。ルモレデックは、グリーン、ソーシャル、サステナビリティボンド市場の成長可能性とESG要因分析の重要性を強調し、アクサIMの取り組みを説明しました。
RI Japan 2022では「世界で急速に進化するサステナブルファイナンスと日本の今」をテーマに国内外のオピニオンリーダーが、加速する世界的なサステナブルファイナンスの潮流や日本の対応状況、規制・政策対応や責任投資のベストプラクティスなどについて活発な議論が展開されました。
その中で「債券戦略におけるサステナビリティ」セッションでは、既存債券とグリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドの比較、ソブリン投資におけるESG要因の組み入れ、サステナビリティリンク債の将来に関して話し合われました。
ルモレデックの主要コメントは以下の通りです。
- アクサIM、そしてアクサグループは、責任投資そして気候変動への行動にコミットしている。当社は、温室効果ガス排出量の2050年ネットゼロを目指す「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」に加盟しており、ネットゼロ目標達成に向けた行動を取り、ESG 要因を重視している。債券投資においてもESG要因は重要になってきており、当社は全債券投資においてESG要因を考慮している。
- 当社のESG導入には3つの柱がある。まず、「ESGデータおよびリサーチのフレームワーク」であり、リサーチやポートフォリオ構築の段階でESGデータを統合する。ポートフォリオ・マネージャーへの指針となるような強固な定量データ作成を目指す。そしてESGテーマが資産、セクター、地域にどのような影響を与えるかに関する定性リサーチも日々実施している。2つ目の柱は「除外ポリシー」であり、ESGに適合しない銘柄のエクスポージャーを排除する。アクサIM独自の基準およびセクター方針を導入し、例えばタバコ企業などを投資対象から外す。3つ目の柱は「長期的な投資家としてのダイアログ(アクティブ・オーナーシップ)」で、エンゲージメントや議決権行使を積極的に行い、ESGリスクが顕在化する前に特定するようにしている。
- グリーン(G)、ソーシャル(S)、サステナビリティ(S)ボンド市場は大きく成長している。まだ世界の全債券市場規模の3%未満に過ぎないが、2020年から2021年にかけて急速に拡大してきており、興味深い市場になりつつある。従来型債券とは異なり、GSSボンドでは資金の利用使途や対象プロジェクト、重要業績評価指標(KPI)を確認できる。
-
従来型債券と環境債の利回り差は「グリーニアム」と呼ばれているが、ユーロ建て債券市場では平均5bpsのグリーニアムが見られる。グリーニアムはセクターごとで異なっており、需給の不均衡が影響している。例えば、自動車セクターでグリーニアムが大きくなっているが、公益セクターでは比較的小さい傾向がある。グリーニアムはダイナミックに動くことがあり、2020年に発行されたドイツの10年グリーン国債のグリーニアムは当初1bpsだったが、昨年9月には7bpsとなり、最近は3bpsに戻っている。当社は、アクティブ運用マネージャーとして、ミスプライスの機会から利益を得るために当社独自のツールを使い、グリーニアムの進展を注視している。
- (保有期間が長く、流動性が低い日本の債券市場へのアプローチに関する質問に対して)長期投資では、気候変動リスクへのエクスポージャーが増大する。気候変動への長期的なリスク要因は、気候の変化が経済に与える影響の「物理的リスク」と、低炭素経済への移行に伴って発生する「移行リスク」の2つに分けることができる。物理的リスク抑制は移行リスク削減より複雑なため、当社はクレジットリサーチに基づく「気候移行フレームワーク」を開発し、投資対象企業の定量、定性両面のKPI把握に努めている。日本の債券市場は極めて長期的な投資ホライズンの特徴があり、流動性も低いが、ソブリン債や社債について気候変動リスク対応の議論は必要だろう。
- グリーンボンドのクオリティに関する問題が指摘されているが、確かにすべてのグリーンボンドが同じではなく、慎重な検討が必要である。当社は独自のフレームワークを開発し、関連するすべてのKPIを常にチェックし、そして公表している。
- 債券に関するエンゲージメントは、重大な投資リスクを抑制する上で重要である。債券の場合には、株主のように年次株主総会で議決権行使を行えないが、当社はその運用規模を活かし、発行体経営陣との定期的な意見交換を行っている。短期的にはKPIのチェックとフィードバック、長期的には、ネットゼロ目標が信頼に足るものかを常にチェックしている。
当社のグリーン、ソーシャル、サステナビリティボンドの評価フレームワークにつきましては、こちらから資料(英語)をご覧ください。
ご留意事項