クリーンテック戦略月次レター:クリーンテック銘柄が堅調
クリーンテック戦略月次レター(2022年7月の振り返り)
クリーンテック銘柄が堅調
<<「スマートエネルギー」や「低炭素輸送」関連がけん引、エネルギー移行にむけた動きが下支えに>>
7月のグローバル株式市場は、弱いマクロ経済指標が発表されたことを受け、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが頭打ちになるとの期待感から大幅な上昇となりました。企業業績発表では、幾つかの業界大手の決算が予想を上回り幾分安心感が広がりました。地域別では、中国以外のすべての地域でプラスのリターンとなりました。中国では、新型コロナウイルス感染者の増加、住宅ローン返済ボイコット、当局によるインターネット企業への新たな規制などが投資家心理を冷やしました。セクター別では、一般消費財、情報技術が大きく反発したのに対し、ディフェンシブ・セクターは市場全体を下回るパフォーマンスとなりました。グロース株は数カ月ぶりにバリュー株を上回るパフォーマンスとなりました。
クリーンテック戦略ポートフォリオの当月のパフォーマンスは、世界株式(MSCI ACWI、米ドルベース)を大幅に上回りました。当月は、主として北米や欧州の保有銘柄の株価上昇がプラス寄与となりました。特に、「スマートエネルギー」と「低炭素輸送」分野の保有銘柄がけん引しました。
ロシアの天然ガス供給削減で高まるEUのエネルギー移行の動き
全般的なマクロ経済への懸念にも関わらず、エネルギー移行への動きは高まり続けています。ウクライナ紛争は、エネルギー自立問題を欧州の最重要課題として引き続き浮かび上がらせています。ロシア国営企業のガスプロムは7月下旬、ロシア産天然ガスを欧州連合(EU)に供給するガスパイプライン「ノルドストリーム」の定期点検後の供給を開始したものの、供給量を8割減らす方針を明らかにしました。これを受け、EU加盟国は8月から来年3月までの天然ガスの消費を約15%減らすことで合意しました。EUはまた、再生可能エネルギーなどの導入拡大にも取り組みます。
米国では、最近発表されたインフレ抑制法案が議会を通過すればエネルギー移行関連企業にとって大きな追い風となり、米国の気候変動目標の達成をより確実なものへ導くとみられます。インフレ抑制法案は、7月下旬に華々しく報道された半導体補助金法案可決の陰に隠れていますが、クリーンエネルギーや気候変動対策で注目すべき内容があります。報道によれば、クリーンエネルギー導入促進に約3,700億ドル(約50兆円)投資するもので、電気効率の良い家電製品の購入や住宅などの断熱性向上に補助金を出します。また、ヒートポンプや屋上の太陽光発電システム導入に際して税額控除を設け、さらに電気自動車や燃料電池車を購入する消費者にも税額控除を提供する計画です。
欧米で記録的な熱波
なお、7月には欧米は記録的な熱波に見舞われ、気候変動対策の速やかな進捗の必要性が強く認識されました。英国では観測史上初めて気温が40度を超え、ドイツやフランスでも異常な高温が続き、スペインや地中海地域では高熱で山火事が多く発生し、深刻な被害をもたらしました。米国では、首都ワシントンやニューヨーク、ボストンなどを含む北東部から中南部にかけて記録的猛暑が続きました。
再生可能エネルギーへの投資拡大続く
世界的な異常高温などの気候変動を背景に、再生可能エネルギーへの投資が拡大しています。ブルームバーグNEFによると、再生可能エネルギーへの世界の投資額は、2022年前半に前年同期比11%増の2,260億ドルに達し、上期としては過去最高となりました。これは、サプライチェーンの混乱、原材料コストの高騰やインフレにもかかわらず、需要が加速したためです。地域別では中国の投資が最大で、128%増の980億ドルでした。風力エネルギーへの投資は16%増の840億ドルとなり、英国、フランス、ドイツなどの国々が導入目標を引き上げていることから、今後洋上風力発電への投資が増えるとブルームバーグNEFは予想しています。
当戦略のポートフォリオ・マネージャー、アマンダ・オトゥールは、7月に「グリーン水素がエネルギー移行に重要な役割を果たす理由」と「生物多様性は炭素排出量と同様に重要」の2本の記事を発表していますので、ぜひご覧ください。「グリーン水素~」記事では、再生可能エネルギーを使って生成されるグリーン水素のネットゼロ目標達成への重要性と関連投資機会を説明しています。「生物多様性~」記事では、ポートフォリオのESGへの影響に関して、炭素排出量に加え、生物多様性の喪失という増大する脅威への対処の必要性を指摘しています。
ポートフォリオの動向
スマートエネルギー関連分野では、エネルギー効率化ソリューション企業のアメレスコがプロジェクト事業部門の堅調さを受け、予想を上回る決算を発表しプラス寄与となりました。経営陣はプロジェクトへの入札は引き続き堅調であり、インフレと金利上昇が逆風となっているものの、エネルギー価格の高騰が同社の提供する低コスト・ソリューションへの需要を高めていることに言及しました。その他、米国の太陽光発電設備メーカーのファーストソーラーも米国でインフレ抑制法案が発表されたのを受けて株価が上昇しました。同法案が可決されれば、ソーラーパネル購入などに適用される税額控除により売上が伸び、更には国内製造に対する優遇措置により同社製品に対する需要が一段と増えることが期待されます。
低炭素輸送関連分野ではEVメーカーのテスラが、原材料価格や輸送コストの高騰、上海のロックダウン、外国為替の変動など様々な逆風にもかかわらず、堅調な4-6月期決算を発表したことから株価が上昇しプラス寄与となりました。経営陣は需要の鈍化はほとんど、或いは全くと言っていいほど見られず、受注残は来年も続くことを示しました。上海およびフリーモント工場(カリフォルニア州)は記録的な生産台数を達成し、ベルリンおよびオースティン工場(テキサス州)は今年の目標を達成すべく急ピッチで生産能力回復を進めています。
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