クリーンテック戦略月次レター:EV分野の成長加速へ
クリーンテック戦略月次レター(2022年1月の振り返り)
EV分野の成長加速へ
世界株式の大幅下落の影響受けるも、クリーンテック関連企業の良好な見通しは継続
1月の世界株式市場は、金利先高観を反映し大幅な下落となりました。このため、長期の成長見通しに基づいてこれまで買われていた銘柄が売られやすい展開となり、市場全体を下回るパフォーマンスとなりました。
クリーンテック戦略ポートフォリオの当月のパフォーマンスは、世界株式(MSCI ACWI、米ドルベース)を下回りました。当月は、北米を始め保有銘柄の株価が全般的に下落したことがマイナス寄与となりました。
クリーンテック関連企業、良好な業績を継続
2021年通期および10~12月期の決算発表が本格化しており、これまでのところクリーンテック関連企業は、受注拡大や堅調な需要見通しを示し、良好な業績を継続しています。サプライチェーンの混乱やコスト上昇が多くの分野で依然として問題となっていますが、強力な競争力がある企業は、コスト上昇をうまく価格転嫁し、ビジネスモデルの強靭性を発揮しています。一方、価格競争力があっても受注が売上に反映されるまでに長く時間を要する企業は、すぐに製品価格を見直すことができず、短期的には利益率が圧迫されます。少なくとも今年前半は、サプライチェーンやコスト・インフレ問題が続くと思われることから、当戦略では、巧みに価格転嫁を行い、混乱を乗り切る能力を備えた企業に注力して運用を行っています。
EVや洋上風力発電で進展相次ぐ
上述の短期的な問題はありますが、当戦略ではクリーンテック関連企業に楽観的な見通しを引き続き維持しており、それには多くの理由があります。
特に低炭素輸送分野で大きな進展がありました。独フォルクスワーゲンはこのほど、2021年の電気自動車(EV)の売上が前年比64%増と大幅に伸び、欧州連合(EU)の二酸化炭素排出量削減目標を上回ったと発表しました。同社のEV比率は上昇を続けており、他の主要メーカーと同様、EV分野への投資を更に拡大し、持続可能なサプライチェーン構築など生産体制の強化の乗り出しています。
また、1月上旬に開催された米テクノロジー見本市「CES」では、米ゼネラル・モーターズ(GM)が主力車種のEV化を表明し、ソニーグループもEVへの本格参入を発表しました。さらに、日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合は、2026年度までに230億ユーロ(約3兆円)におよぶEV関連の設備投資を行うと1月に発表しました。
これら一連の動きは、EV分野の持続的な成長に寄与するプロセスや技術を提供する企業にとって多くの事業・投資機会を創出しています。
なお、当戦略のポートフォリオ・マネージャーのアマンダ・オトゥールが、EVに関する記事(「電気自動車、転換点に近づく」)を執筆していますので、ぜひご覧ください。バッテリー技術の向上および製造コストの低下によりEVの普及ペースが加速しており、内燃エンジン車(ガソリン車など)からの移行がさらに進む、と指摘しています。
スマートエネルギー分野では、2050年のネットゼロ目標を掲げる日本において、3海域の洋上風力発電の入札が行われました。入札は秋田県沖および千葉県沖の海域に関して行われ、今後さらに10超の海域で入札が予定されています。また、英国で行われた洋上風力発電の大規模な入札では、発電能力が当初の予定よりも2倍以上になりました。再生エネルギーへの転換は着実に進んでおり、中でも洋上風力発電が有力となっています。
資源有効利用関連分野では、資源廃棄を削減する製品を手掛ける企業にとって、原材料コスト上昇が追い風となっています。廃棄削減の効果が拡大し、技術開発の投資回収期間が短縮されるためです。
ポートフォリオの動向と今後の見通し
当月は全ての分野がマイナス寄与となりました。主として、スマート・エネルギー関連分野では、エネルギー効率化ソリューションを提供するアメレスコと再生可能エネルギー大手ネクステラ・エナジー、資源有効利用関連分野では、水質検査装置を製造するハルマと水処理サービスを提供するエヴォクア・ウォーター、低炭素輸送関連分野では、自動車部品メーカーのアプティブとEVメーカー最大手のテスラなどがマイナス寄与となりました。
市場におけるグロース株からバリュー株へのローテーションが大きく影響し、ポートフォリオ全般にわたって株価が下落しました。最も大きく下落した銘柄はグリーン水素など長期的な成長見通しに基づく事業を展開している企業です。一方、消費者物価指数に連動した契約を維持するなどインフレ抵抗力のある企業は、相対的に株価が持ちこたえました。
当戦略では、持続可能な競争優位性のある事業が質の高い経営陣によって運営されていることが、現在の短期的な困難を乗り越え、成長機会を捉える最善の策であると考えています。クリーンテック関連企業は、インフラ整備などの景気刺激策に恩恵を受けるとともに、地球環境を守るための行動の変化が一段と加速すると見られることから、長期的な成長が期待できると考えます。また当戦略では、クリーンテック関連企業のバリュエーションが魅力的になっている場合には、これらの中で最も優れた銘柄の追加を目指します。
ご留意事項