
債券市場:投資家の為の多機能市場
- 2025年4月22日 (5 分で読めます)
主なポイント
債券市場は、経済や政策の不確実性が高まる中で、投資家にポートフォリオを適応させるための豊富な投資手段を提供します。
市場は均質ではなく、市場の部門毎にさまざまな様相を示しています。金利見通しを主に反映する債券部門もあれば、株式市場と相関性が相対的に高くなっている債券部門もあります。
また、さまざまな満期があるため、投資家は債券戦略を利用して負債をヘッジし、将来のキャッシュフローを管理することができると考えています。
債券の利息支払いは、さまざまな期間にわたって、短期の変動金利に連動するか、または、一定の率に固定されています。また、債券デリバティブは、金利リスク、クレジット(信用)リスク、為替リスクをヘッジすることを可能にし、中核となるポートフォリオのリターンに対する信頼性の向上に役立つと考えられます。
さらに、資産担保証券やレバレッジドローンなどのストラクチャード・クレジット商品を通じて、住宅ローン、自動車ローン、消費者ローン、銀行融資などのクレジット活動からキャッシュフローリターンを獲得することも可能と見ています。つまり、債券市場では、様々な投資手段を用いた多様な戦略が提供可能であると見ています。
インカムの上昇
2022年以降、主要な中央銀行は政策金利を2008-2009年の金融危機前の水準に近い水準まで引き上げており、金融危機後の期間に経験した低水準とは異なっています。金融危機後のゼロ金利と量的緩和が債券市場の利回りを押し下げ、結果的にトータルリターンを押し上げましたが、債券市場ではインカムであまりリターンを得ることができず、この資産クラスの価値の中核となる部分が損なわれていました。
しかし現在(執筆時)、インカムリターンは増加しており、2020年から2021年の低水準からの利回りの上昇を反映しています。2025年3月31日までの1年間で、米国投資適格社債市場1 では4.7%のインカムリターンを得ていました。2
同じ期間のインカムリターンはユーロ社債指数3 では2.5%、米国および欧州のハイイールド指数4 ではそれぞれ6.8%と5.0%でした。欧州の投資適格債券指数の平均クーポンは、2022年の1.45%という相対的に低い水準から現在では2.6%に増加しています。
つまり、企業にとっては債券市場で資金を調達するための支払い利息が上昇する一方、投資家にとってはインカムリターンが上昇していることを意味します。この状況は、債券戦略ポートフォリオのトータルリターンのために確固とした基盤を提供し、マルチアセット戦略においてパフォーマンスの源泉を多様化することができると見ています。今後数四半期で政策金利は低下すると見ていますが、債券市場から得られるインカムリターンはしばらくの間相対的に堅調に推移すると見ています。
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政策の影響
2022年以降、金利が上昇したことは債券市場でのリターンの重要な要素となっていると見ています。しかし、金利の見通しには経済と政策の不確実性が反映しています。つまり、米国の関税政策が経済成長の鈍化を引き起こす可能性が高く、これは通常、中央銀行の金融緩和を促進する要因となると見ています。実際、これがアクサIMグループの中心的なシナリオです。
しかし、米国の関税政策はインフレの加速をもたらす可能性があると見ています。これは、中央銀行の利下げを妨げるものではありませんが、利下げによってイールドカーブ(利回り曲線)がスティープ化(急勾配化)するかもしれません。しかし、その状況は通常リセッション(景気後退)の際に起こる現象と見られています。
インフレを懸念する投資家にとって、ポートフォリオの価値を保護するための機会として、インフレリンク国債投資戦略を検討するべきと考えます。ブレイクイーブン・インフレ率(BEI、名目国債とインフレリンク国債の収益率が等しくなるインフレ率)は、ドナルド・トランプ米大統領が4月2日に関税計画を発表して以来低下していますが、短期に満期を迎えるインフレリンク債券戦略は、関税が消費者に転嫁され消費者物価指数が急激に上昇する場合に恩恵を受けると考えられます。
もっと幅広く見ると、国債市場ではイールドカーブのスティープ化が進んでいるため、投資家はデュレーションが長めの債券戦略を検討すべきではないかと考えています。しかし、現在のところ、デュレーションリスクを多く取った場合に、利回りが上昇するとリターンが得られない可能性があり、よりアクティブな債券投資戦略の場合には特にその可能性が強くなると見ています。
現在、米2年国債と10年国債のイールドスプレッド(利回り差)は約50ベーシスポイント(bp)です。しかし、リセッション時には250bpから300bpのスプレッドが見られることがあります。欧州では、ドイツ国債のイールドカーブは米国債よりもスティープであり、欧州中央銀行(ECB)は金融緩和サイクルを米連邦準備制度理事会(FRB)よりも先に進めています。しかし、ここでも、過去にはカーブが今よりも大幅にスティープだったことがありました。
リスク管理
長期デュレーションの国債への投資戦略は、準備資産を管理する必要がある長期投資家や長期の負債に対応する質の高い資産を必要とする投資家にとっては相対的に良好な投資戦略と見ています。しかし、リターンを追求する投資家にとっては、近年のリスクとリターンの状況下では、当戦略はあまり良好な投資戦略とは思われません。
先進国の財政安定性が懸念されることを考慮すると、この現状が近い将来に大きく変わることはないと見ています。その兆候として、国債利回りとスワップレート(短期変動金利と固定金利を交換する金融契約における固定金利)の差が拡大しており、この拡大は、財政に対するリスクプレミアム(リスクに対して支払われる対価)が上昇していることを示していると見ています。
この状況は、米国や英国、欧州の国債市場で現れています。しかし、長期国債戦略は、マクロ経済サイクルに関して短期的な戦術を立て投資を行うには有効であると見ています。つまり、経済成長が鈍化すると、予想金利が低下する傾向があり、2年国債と10年国債の利回りがそれぞれ50bp動く場合、10年国債のパフォーマンスの方が上回ると考えられます。
債券市場は、金利とクレジットの二つの要素によって構成されています。この市場には、金利やクレジットを活用してリターンを得るためのさまざまな方法があり、両要素がマイナスリターンを生むことに対してもヘッジ手段を見いだせると見ています。
見通しが不確実な現状を考慮すると、債券ポートフォリオが持つ両要素への感応度を制限することは、今のところ投資家にとって選択肢となるかもしれません。短期デュレーションで質の高いクレジット債券戦略は、低下するキャッシュ金利を上回るリターンを提供し、金利予想の変動やクレジットの悪化に対して感応度が相対的に低いと考えられます。
債券戦略のポートフォリオにおいて、クレジットの組入れを増やすことによってリターンを高めることができると見ています。社債やローン、その他のクレジット資産からのキャッシュフローがリターンを下支えすると見ています。重要なことは、クレジットリスクの水準を理解することと見ています。相対的に質の高い投資適格債券市場に関しては、ファンダメンタルズについて引き続き相対的に良好な見方をしています。つまり、企業は近年、以前よりもバランスシートをうまく管理しており、利息支払い義務を果たす能力を相当程度維持していると見ています。
さらに、債券市場では、主に負債のキャッシュフローに合わせる必要がある個人や従来の保険・年金基金を含むさまざまな投資家から社債に対する相対的に強い需要が見られます。
しかし、経済が弱含む期間は、企業利益やキャッシュフローに対する課題に直面する中で、投資家がより高いリスクプレミアムを求めるために、クレジットスプレッド(発行体の信用力の差に基づく利回りの差)が拡大する可能性が高くなると考えています。この現象は特にハイイールド市場に現れると見ています。
歴史的には、S&P 500などの株式指数の動きとハイイールドのクレジットスプレッドの動きとの間には強い相関関係があると考えています。経済が軟化する兆候が増す中で株式市場がさらに下落すれば、スプレッドがワイドニング(拡大する)可能性が高くなると見ています。
次は何か?
アクサIMグループは、米国のハイイールド債券市場の質は近年改善していると見ています。現時点では、スプレッドが過去の経済悪化局面に見られた極端に拡大した水準に達するとは考えていません。それでも、スプレッドがある程度拡大するものの、短期間と見ているため、ハイイールド債券戦略からリターンの向上を確保する機会を得られると見ています。
例えば、2016年2月に米国のハイイールド債券市場5 のスプレッドが887ベーシスポイントに達した際、その後1年間のトータルリターンは23%、3年間で33%でした。
改めて、債券市場は均質ではないと見ています。リスクの範囲は、相対的にクレジットの質が高いキャッシュのような変動金利物から、小型株式に似たリターン属性を持つレバレッジ資産まで広がっています。
これにより、投資家にとって、債券ポートフォリオのインカムを生み出し、インフレ加速に対するヘッジを行い、また、経済状況が悪化した際に相対的に安価な資産に投資することで機動的に収益を得るなど、様々な戦略の選択肢が提供されていると見ています。
歴史的に見て、相対的に良好なリスク調整後リターンは、クレジット資産から得られ、その利率、タームプレミアム(期間プレミアム、償還までの期間の長さに伴う上乗せ金利)、クレジットスプレッドが組み込まれています。短期的には、そのような資産は見通しの不確実性を反映するために、資産価格が設定しなおされる可能性があると見ています。しかし、そうなる場合、中期的なリターンは現在の利回り水準を考慮すると相対的に良好なものになると考えています。
これまで以上に、債券市場で得られる多様なリターンの源泉とリスク水準は、投資家にとって非常に有益な重要な手段と見ています。
パフォーマンス等のデータの出所:LSEGワークスペース・データストリーム、ICEデータサービス、ブルームバーグ、アクサIMグループ。特に記載がない限り、2025年4月15日現在。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。また、記載内容は、特定の金融商品への勧誘や推奨を意図したものではありません。
(オリジナル記事は4月22日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
本資料で使用している指数について
S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。
ナスダック総合指数:米国NASDAQに上場している全銘柄の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。
ICE BofA 米国社債指数、 ICE BofA ユーロ社債指数、ICE BofA 米国ハイイールド指数及びユーロハイイールド指数:ICEデータ・インデックス社が公表している米国の投資適格社債、ユーロ圏の投資適格社債、米国のハイイールド社債、ユーロ圏のハイイールド社債の値動きをそれぞれ示す指数です。
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