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マクロ経済リサーチ

新型コロナウイルスのマクロ経済および運用戦略への影響に関するアップデート: バイオ・ヘルスケア特集 - 2020年4月30日

  • 2020年4月30日 (5 分で読めます)

当資料は、金融商品取引法で定義されている適格機関投資家を対象としており、一般投資家向けではありません。当資料は、4月30日にアクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサ IM)が開催した新型コロナウイルスの影響に関する顧客向け電話会議の内容を要約したものです。

新型コロナウイルス危機が、引き続き市場に大きなボラティリティをもたらしています。世界経済にとって異例で厳しい状況ですが、政策担当者および中央銀行は、市場の安定とマクロ経済対策で決然とした行動を取っています。当社の専門家が、現状に関する見解および今後の見通しと投資機会を説明します。

アクサ・グループ・チーフ・エコノミスト、ジル・モエック

新型コロナの感染拡大防止でロックダウン(都市封鎖)を行なった先進国の経済状況に関する通常指標が出始めました。米国の1-3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比1.2%減少し、年率換算では4.8%減少しました。大幅なマイナス成長となったわけですが、それでも想定ではより大きな落ち込みが予想されていました。これは、米国のロックダウンが欧州に比べて緩いものだったためと考えられます。

そして欧州各国の間で格差が浮上しています。人々の活動状況や電力消費といったリアルタイムの間接指標や通常の経済指標によれば、ドイツで進行中のリセッションは、イタリア、スペイン、フランスが直面しているリセッションほどひどくはないとみられます。

このため当社は、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)ショック後の景気循環的な格差を最も懸念しています。ユーロ圏では、ドイツなどの主要国におけるロックダウンは緩く、政策発動の余地が大きいため、経済の縮小を抑え、長引く付随的なダメージを食い止めることが可能でしょう。しかし、南欧諸国には財政的制約があり、かなり小規模の財政刺激策しか打ち出せません。

このような状況においては通常、ユーロ圏における財政の中立化が叫ばれますが、これまで具体化されたことはありません。このため、ECB(欧州中央銀行)へのプレッシャーが高まります。

格付会社スタンダード&プアーズがイタリアのソブリン債をジャンク債(投資不適格)に格下げしなかったため、ECBは一息つきましたが、それでも今後より大規模な債券買い入れプログラムを導入せざるを得ないと当社は見ています。今週開催のECB理事会では資産購入プログラムの拡大は見送られましたが、銀行に対する緊急ローンプログラムのコストは削減されました。当社は、ラガルドECB総裁が資産購入プログラム拡大の選択肢を維持すると考えています。

他方では、新興国の状況を当社は引き続き注視しており、新興国通貨の苦闘が続いています。ロックダウン解除後の世界経済の回復が、新興国需要の急減によって損なわれるリスクを織り込む必要があります。

アクサIM 最高投資責任者(コア・インベストメント)、クリス・アイゴー

最近の市場動向は3段階に分けられます。第一段階は新型コロナ感染の拡大に関連したもので、2月19日から3月23日にかけグローバル株式は約30%急落しました。市場は無秩序な状況となり、流動性も枯渇しましたが、中央銀行が強力なクレジットおよび流動性供給を約束したことで落ち着きました。

第二段階は3月23日から4月第2週にかけての反発局面です。世界各国のGDPや企業収益の下方修正が続き、クレジット市場では企業のデフォルト予想が上方修正されていましたが、多くの市場関係者は世界的な株式のラリーに驚きました。

一部の国では感染拡大スピードがピークに達した可能性がありますが、新型コロナのパンデミックに関する懸念が完全に払拭された後の市場回復と見なすべきではないでしょう。結局、主に政策対応が金融市場の崩壊を防ぎ、景気回復への楽観的な見方が浮上したにすぎないと考えられます。

過去2週間の間に市場は第三段階である「新たな均衡」に入ったと思われます。リターンは平坦になり、クレジットスプレッドなどの市場指標も安定してきました。株式市場の水準とクレジットスプレッドは、ファンダメンタルズの悪化とリスクプレミアムの上昇を反映しています。

国債利回りは、中央銀行が目標とするレンジおよびフォワードガイダンスの範囲内に落ち着いてきました。ブレークイーブン・インフレ率は、世界的な需要ショックの影響で低いインフレ率で推移するという中長期的な見通しに沿った水準にあります。

クレジットスプレッドは、レバレッジの拡大とキャッシュフロー確保の緊急性低下を反映し、3月上旬の拡大幅からはかなり縮小しています。減配と自社株買いにより、クレジット市場の価格水準は、コロナ危機前の想定よりもかなり低いリターンを示唆するものとなっています。

経済への打撃を考慮した場合、現在の市場水準は適切なのでしょうか?これに答えることは困難ですが、少なくとも第一段階、第二段階の市場動向は忘れるべきでしょう。市場は経済的ダメージを認識すべきであり、政策的なサポートおよびリスクプレミアムが、(当面のところ)見通しの不透明性を反映しています。

クレジットリスクのさらなる低下と、弱い決算発表が続く中でも株式が現在の水準を維持するためには、カタリストが必要です。それでは、バイオテクノロジー株や広範なヘルスケアセクターの見通しをご紹介します。

アクサIM バイオテクノロジー戦略ポートフォリオ・マネージャー、リンデン・トムソン

新型コロナの世界的な感染拡大で人々の生活は劇的に変化しました。効果的な治療法やワクチンの開発により、生活が通常に戻ることができるとしてバイオテクノロジーが大きな注目を浴びています。

バイオテクノロジー株は年初来で大きく上昇しています。バイオセクターは近年、米国での薬価引き下げの政治的圧力により見通しはさえないものでしたが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)問題解決に向けた迅速なイノベーション、連携、ソリューション開発で、ここに来て新たに注目されています。

ロックダウンは新型コロナ感染拡大や緊急医療対応の急増抑止に効果的ですが、長期的なソリューションではありません。FDA(米食品医薬品局)と緊密に連携し、バイオ医薬品企業が、COVID-19の治療や疾患予防に向けた新薬開発や既存薬の再開発に取り組んでいます。当社は、数カ月間にわたる臨床データが今後発表されると予想しています。

重症患者向けの医薬品開発に関しては、良いデータが出れば迅速に承認され、患者にすぐに供給されるでしょう。ワクチンに関しては、効果的なデータが出たとしても、健康な人々に使われるため慎重な承認プロセスおよび投与が必要です。

新型コロナ対策では数百の医薬品がありますが、当社では抗ウイルス薬、抗体、ワクチンに注目しています。抗ウイルス薬と抗体は治療に使われ、ワクチンは疾患予防に使われます。抗ウイルス薬に関する当社の見解では、バイオ医薬品企業のギリアド・サイエンシズが最もリードしており、同社はレムデシビルの治験に数千人の患者を採用しています。

レムデシビルに関していろいろな情報が伝えられていますが、正式なデータは5月に発表されると当社は予想しています。もう一つのバイオ医薬品企業であるリジェネロンは、注目されている抗ウイルス薬でまもなく臨床試験を開始します。これは、ウイルスに対する免疫反応の複製が期待される抗ウイルス混合薬で、エボラ出血熱治療で効果を上げています。

ワクチンに関しては、開発のスピードは全ての予想を上回っており、幾つかのワクチンは人体を使った試験が進められています。当社はワクチン開発に関しては楽観的ですが、広範に利用できるようなワクチンの開発スピードに関しては現実的な見方を取っています。臨床データが有効である場合、最もリスクの高い罹患者がまず対象となるでしょう。

当社は以前からバイオテクノロジーにおけるイノベーションの重要性を指摘してきましたが、今ではこれは世界的に注目を浴びるところとなっています。

アクサIM ヘルスケアおよびロンジェビティ戦略ポートフォリオ・マネージャー、ダニ・ソーリンパー

新型コロナ感染が拡大するにつれ、ヘルスケアサービス企業、検査薬企業、バイオ医薬品企業の連携した対応が目立っています。企業は、新たなテクノロジーを新型コロナ対策に活用し、ヘルスケア分野全般でイノベーションの強みを発揮して前例のない結果をもたらしています。新型コロナ危機の重要な展開として、ヘルスケア製品およびサービスの需要が急速に拡大し続けています。その背景には、人口の高齢化、肥満や糖尿病といった生活習慣病の罹患率の増加、今後のパンデミックに向けた最新テクノロジーおよび治療法の確立ニーズの高まりがあります。

短期的には、ロックダウンや人込みを回避する結果として、一部のヘルスケア分野の需要が減少しています。患者と医師は、面会や不急の手術などを先送りにせざるを得ません。医師による検査件数が大幅に減少し、股関節および膝関節の置換、歯科インプラント、白内障治療などの(緊急ではない)待機的手術が滞っています。

しかし長期的に見た場合、ヘルスケア需要は正常化し、特に医療インフラ関連投資は急増が見込まれます。多くのヘルスケア企業が新型コロナの影響で今年の通期見通しを取り下げましたが、一部の企業の製品関連需要は加速しています。

新型コロナの影響で在宅勤務が急速に広がっていますが、ヘルスケアに関しても、遠隔医療や遠隔での患者のモニタリングの導入が加速しています。医師によるデジタル診療は、アレルギー、インフルエンザ、風邪、発熱、発疹などの緊急ではない病状の診断で活用できます。テラドック・ヘルス、アメリカン・ウェル、ドクター・オン・デマンドなどのデジタルヘルスケア企業の遠隔サービスは、新型コロナの感染拡大を防止するための対面医療の代替として大いに活用されています。

同様に、メドトロニック、フィリップス、マシモなどの企業は、感染患者対応ICU(集中治療室)向けの人工呼吸器、モニター、センサーの需要増加の恩恵を受けています。また、軽症患者の自宅での行動をモニターできるウェアラブルワイヤレスセンサーなども開発されており、医師および患者のさらなる感染を軽減し、救急部門での患者急増を防止しています。

ヘルスケアやヘルスケア投資は絶えず進化しており、当社では、未知の医療ニーズに対するソリューションの研究開発に多大な投資を行なっている企業に注目しています。最も複雑なヘルスケアの課題克服に成功する企業およびその製品は、患者、医師、医療報酬支払機関から高く評価されると当社は考えています。

アクサIM ロンジェビティおよびバイオテクノロジー戦略副ポートフォリオ・マネージャー、ピーター・ヒューズ PhD

ロンジェビティ(長寿)投資テーマに深く関連した企業は、世界的な高齢化により製品およびサービスの需要増加が見込まれます。ヘルスケアはロンジェビティ投資テーマの重要な一部であり、我々は年を取るにつれ、ヘルスケア製品やサービスを多く利用するようになります。

最近、市場が乱高下する中、ヘルスケア株のパフォーマンスは堅調です。新型コロナ感染拡大により、ヘルスケアセクターは世界的な緊急医療事態の解決に向けた重要なセクターと見なされています。このため、市場平均よりもヘルスケアセクターセクターへのエクスポージャーが大きいロンジェビティ投資テーマにとって追い風となっています。

ヘルスケア以外のロンジェビティテーマは低調です。旅行やレジャーなど高齢者の支出はロンジェビティの重要な要素ですが、新型コロナ感染拡大により世界的な旅行需要が急減しており、クルーズ船業界で最も顕著です。

今後の重要な問題は、新型コロナ感染を経て旅行者がクルーズ船利用を安全だと考えられるかです。以前、クルーズ船業界が直面した危機では需要は回復しましたが、今回はいつ、どの程度まで需要が回復するかは不明です。

また、ファイナンシャル・プランニングは、高齢者にとって重要な活動です。ファイナンシャル・プランニングを行なうプライベートバンクや資産運用会社の株価は、2020年第1四半期に下落しました。しかし長期的に見た場合、ファイナンシャル・プランニングは長い人生を有効活用するための重要な活動であり、当社では直近の短期的な株価の動きについて過度に懸念していません。

新型コロナ危機で過小評価されていることは、医療制度が立ち遅れている国における医療保険の需要増加の可能性で、特に新型コロナ感染が急速に拡大している国においてです。多くの保険会社の株価は低調に推移していますが、長期的には新型コロナ感染が需要増を後押しする可能性があります。

新型コロナの感染拡大にもかかわらず、世界で高齢化が進んでいるため、新型コロナで消費者の行動パターンが変化するとしても、ロンジェビティ経済の主要な牽引要素に変わりはないと当社は考えています。

新型コロナウイルスのマクロ経済および運用戦略への影響に関するアップデート: バイオ・ヘルスケア特集 - 2020年4月30日
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