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マクロ経済リサーチ

新型コロナウイルスのマクロ経済および運用戦略への影響に関するアップデート - 2020年4月2日

  • 2020年4月2日 (5 分で読めます)

当資料は、金融商品取引法で定義されている適格機関投資家を対象としており、一般投資家向けではありません。当資料は、4月2日にアクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサ IM)が開催した新型コロナウイルスの影響に関する顧客向け電話会議の内容を要約したものです。原文はこちらをご覧ください。

新型コロナウイルス危機が、引き続き市場に大きなボラティリティをもたらしています。世界経済にとって異例で厳しい状況ですが、政策担当者および中央銀行は、市場の安定とマクロ経済対策で決然とした行動を取っています。当社の専門家が、現状に関する見解および今後の見通しと投資機会を説明します。

アクサ・グループ・チーフ・エコノミスト、ジル・モエック

当社では、西側先進国における新型コロナ感染封じ込めに関してイタリアの動向に注目しています。同国の状況を見ると、日々の拡大傾向は落ち着きつつあるものの、1カ月の外出規制では感染拡大を食い止めるのに十分ではないようです。当社の予想では、外出規制のピーク時には、いかなる先進国でも生産が30-35%減少するとみています。1カ月の外出規制で、GDP成長率は年率で2.5-3%押し下げられるとみられ、外出規制が6週間続いた場合(2次的な被害が食い止められている場合を想定)には3.75-4.5%押し下げられると当社は予想しています。

重要なことは、GDP成長率の低下が今年の第2四半期までにとどまり、その後回復するかどうかです。そうなった場合には、上期の落ち込みにも関わらず、資産価格にとってポジティブです。

中国の指標は慎重に見る必要がありますが明るい材料です。同国の購買担当者PMIによれば、中国経済はもはや縮小していません。しかし、経済の回復は抑制されたものであり、一部では再感染を防ぐために感染防止策(映画館の再閉鎖など)が再び取られています。結局、世界経済が正常化するためには、全ての主要国で新型コロナ感染のピークを過ぎることが必要であり、それまでは世界貿易は停滞を続けるでしょう。

米国で注目すべき点は2つです。第一に、米国では外出禁止令が出るのが遅かったため、感染防止策が長く継続されるでしょう。そして米国での感染拡大のスピードは、イタリアを上回っています。

第二に、米国の財政政策発動の威力は、欧州に比べると弱いことです。米議会では所得支援政策は一から進める必要があり、実施には時間がかかります。欧州では、企業に対する規制や就業中の失業給付などで労働者は企業に在籍することができます。一方、米国ではレイオフ(一時帰休)が唯一の選択肢であり、状況が改善した場合、雇用主は再雇用するか否かの判断を迫られます。このため、米国では所得の落ち込みが続く可能性があります。

当社は、主要国の緊急政策対応は適切で、十分なサポートになっていると考えています。しかし、中期的な問題(特に社債および国債の急膨張)を考える必要があります。中央銀行を通じた債務の相互化や事実上の債務相殺が検討されるべきでしょう。しかし、現時点では政策担当者には、こういった政策を検討する意欲は見られません。

アクサ IM 最高投資責任者(コア・インベストメント)、クリス・アイゴー

市場は3月の最終週に新たな段階に入りました。ボラティリティ指標は低下し、クレジットスプレッドは縮小し、市場を脅かしていた資金調達の問題もやや弱まりました。企業向けのクレジット市場にも光明が見え始め、米ドル債市場ではゴールドマン・サックス、ナイキ、マクドナルド、トヨタ自動車など、ユーロ債市場ではエアバスやネスレなど、多くの起債がありました。なお、起債には高いプレミアムがついており、国債利回りに対するスプレッド(上乗せ金利)は、コロナ危機前の水準を大きく上回っています。

それでも、クレジット市場が再開しているのは健全な兆候で、投資家は中央銀行によるクレジット市場への下支えに安心しています。これは歓迎すべきことですが、市場の健全性が戻るかどうかは完全に公共政策対応に依存しており、短期ファンダメンタルズ見通しの何らかの改善によるものではありません。

クレジットスプレッドは若干縮小していますが、格下げの増加やハイ・イールド債市場でのデフォルト懸念があり、発行体は当面は高い金利を払う必要があります。なお、欧州や英国では、既に多くの企業が2020年の配当支払いを中止しています。これは、現金温存の目的や規制当局による配当中止要請が背景にあります。これは株式投資家にとってはネガティブですが、利払いは継続されるためクレジット投資家の安心感を高めるでしょう。

国債市場のボラティリティも同様に低下しています。英国および米国の国債市場では、利回りは、新型コロナ危機以前の水準を40-60ベーシスポイント程度下回る水準となっており1 、欧州主要国の国債市場では危機前の水準に近くなっています。量的緩和政策がスタートしイールドカーブのフラット化が進むと見込まれるため、より長期の利回りの若干の低下が進むと当社は引き続き予想しています。なお、イールドカーブの長期部分については、政策金利の水準が下限となります。今後、世界中で政府による大幅な借り入れ(国債の大増発)が予想されるため、それが債券利回りの上昇に結び付く可能性は否定できません。しかし当面は、中央銀行が新発国債を全て吸収し、債券市場を下支えするでしょう。

3月最終週に株式市場は反発しましたが、それでも年初来では依然として20-30%下落しています。新型コロナの世界的な感染拡大スピードに市場は注目していますが、投資家は感染封じ込め後の出口戦略をなるべく明確にする必要があるでしょう。経済活動のかなり通常水準への復帰を織り込む以前に、ロックダウン(都市閉鎖)がいかに早期に解除されるかに関する見方が必要です。そうすることで、現在は存在していない予想利益に関するコンセンサスが収束し始めるでしょう。たとえば、2020年の1株当たり利益が前年比で25%低下した場合、(リーマンショック時の)2008年のPER(株価収益率)に準じた場合、S&P500指数は最大1,500まで下落する可能性があります。

AXA IM フラムリントン株式グローバル責任者、マシュー・ロバット

世界の株式市場は、現地通貨ベースで高値から30-40%の大幅な下落に直面しました。株式市場における多くの記録が破られ、米国では1930年代以降では最速の下落となり、2008年のリーマンショック時の約2倍の速さで下落しました。

株式の利益見通しは驚くほど変わり、世界株式では当初の前年比10%前後の増加が25-50%の減少になっています。米国はロックダウンの初期段階にありますが、アジアは回復しつつあります。しかし、全ての国は今後の2次感染リスクを恐れています。いずこの企業にとっても世界は大きく変わっており、短期的な見通しは二極化しています。

一部の企業にとって短期的な注目点は、流動性を最大限に高め、事業および従業員への新型コロナの影響に対処することです。旅行、レジャー、飲食店などの消費関連企業では、短期的に売上がほぼ消滅してしまったため、存続の危機に直面しています。そういった多くの企業は政府支援が必要で、資本調達や配当削減も必要です。

一方、大きな事業機会の真っただ中にいる企業もあります。状況の恩恵を大きく受けているのは食品およびヘルスケア関連ですが、セクター全体ではありません。たとえばヘルスケアセクターでは、ワクチン、検査薬、関連医療機器の開発企業は買われていますが、緊急ではない待機的な手術をサポートする企業などは苦闘しています。

より幅広く見た場合、多くの既存オンライン企業においては、デジタル関連消費活動が増加しています。硬貨や紙幣を通じた新型コロナ伝染を避けるため、多くのお店や企業がオンライン支払いに移行しています。同様に、在宅勤務者の大幅な増加により、ブロードバンドインフラやデータセンターの需要が急増し、さらなる事業機会を生み出しています。遠隔勤務用のアプリケーションやセキュリティソフトのアップグレード需要も拡大しています。当社のデジタルエコノミー運用戦略は、こういったトレンドの恩恵を大きく享受できると当社は考えています。

もちろん当社の運用戦略も市場の調整局面の影響を受けていますが、それでも全般的には相対的なパフォーマンスは市場平均より持ちこたえています。これは、当社が強力なバランスシートを有する企業にフォーカスしてきたことを反映しています。こういった企業はネットキャッシュで利益率が高く、強力なキャッシュフロー創出力を維持しています。

アクサIM アクティブ債券運用英国ヘッドおよびAXA IM グローバル・ストラテジック債券ファンド・ポートフォリオ・マネージャー、ニック・ヘイズ

現在の環境下において投資シナリオを構築するためには、新型コロナ危機の前に私たちがどのような状況にあったか、その後に何が変わったのかを理解することが重要です。グローバルな債券市場の幅広い投資ユニバースにおける債券戦略を展開する当社では、2020年3月に至るまで以下に述べる3つのテーマにフォーカスしていました。新型コロナ危機を予期することはできませんでしたが、それらの投資テーマは現在の状況においても引き続き十分に機能すると当社は考えています。これまでのところ、3つの投資テーマは、高いボラティリティの中にあっても悪くないパフォーマンスを示しています。

デュレーション:当社は2020年の当初からデュレーションについて強気で、残存3-5年債券を中心とするポジションを維持していました。景気循環は成熟段階にあり、リスク資産は割高で、先進国中央銀行はそれまでの利上げサイクルを転換しつつありました。リスクヘッジ手段あるいは流動性対応や純粋なアルファ追求のために利用する場合であっても、国債などクオリティや流動性の高い債券を保有しておくことは、これまでと同様に重要です。こうした債券は割安とは言えないほか、各国の財政刺激策に伴って見込まれる大量の国債発行は、債券価格にとって中期的にはネガティブです。しかし危機時においては、国債のような金利感応度を持つ資産を保有しておくことは、それだけで強力な運用ツールとなります。

クレジットの選別的なロング:運用パフォーマンスを高めるためには、クレジット投資が必要です。投資家はクレジットへの投資により、インカムやキャリーを創出し、リスクの分散化を進めることが期待できます。もっとも、年初来のクレジットのパフォーマンスは予想を下回り、社債のスプレッドは株式市場と連動して悪化しました。当社は、慎重なスタンスを維持しながらも、バリュエーションが魅力的な水準となっていることを踏まえて、クレジットに対してやや強気に転じています。過度のデフォルトリスクを織り込んだ水準にある現在のスプレッドは、中長期的には大きなリターンを創出する可能性があります。当社は手始めに米ドル建てハイ・イールド債への追加投資を開始しました。

保険的な運用:現金は利回りを生みませんが、危機時において現金や国債などのリスクフリー資産を保有することはこれまで以上に重要です。当社は現金の積み増しや現金代替として1年未満から5年物の国債を保有しています。当社はまた、クレジット・デフォルト・スワップを利用して、保有する社債のクレジットリスクの一部をヘッジしています。新型コロナ危機に至る前には、こうしたヘッジは割安な保険とみられていましたが、危機後は当社の予想を大きく上回るリターンをもたらしています。現時点ではヘッジコストそれほど割安ではありませんが、依然として有効です。

債券市場の見通しは不透明ですが、それでも多くの投資機会を提供しています。国債利回りは史上最低水準にあるにもかかわらず、リスク資産の混乱により高いリターンを生んでいます。ハイ・イールド債や新興国債券、高品質な一部の新発社債からもたらされるキャリーは、非常に魅力的です。現在の環境下ではこれらの債券はかなり割安となっており、当社ではポートフォリオのリスクヘッジを減らしながら、利回り向上のために現金を活用する意向です。現在の不透明な環境を乗り越えれば、債券運用ポートフォリオは再び魅力的なリスク調整後リターンを生み出すでしょう。これにより、投資家は資産の保全から資産の成長に視点を移すことができるようになります。

以上

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新型コロナウイルスのマクロ経済および運用戦略への影響に関するアップデート - 2020年4月2日
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