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より良い社会への変化を志向:債券投資におけるESGと責任投資

  • 2019年6月3日 (5 分で読めます)

2019年4月後半にロンドン近辺に居合わせた方やその頃の英国ニュースを目にされた方であれば、環境保護団体「エクスティンクション・リベリオン」が呼び掛けた気候変動対策を訴えるデモについてご存じかもしれません。このデモが起きたのは、復活祭の週末としては過去最高の気温を記録し、16歳のスウェーデン人環境活動家グレタ・トゥンベリさんが英国を訪れ多数の国会議員と会談し、気候変動の脅威がこれまで以上に注目された時期でした。

こうした報道は、世間が気候変動問題に関心を向けていることを示唆しています。しかし、多くの気候変動否定論者の発言を耳にすると、非常にがっかりさせられます。また、地球温暖化問題の解決に向け官民が費やしている努力をよく分かっていない市民がどれだけ多いのかにも気付かされます。

ESGに対する資本の役割

資産運用業界では、社会全体の目標実現に向け、投資評価に関してリターンの追求に加えて非財務目標も取り入れる動きが急速に進んでいます。対象は気候変動にとどまらず、環境・社会・ガバナンス(ESG)問題全体に広く及びます。

資産運用にESGをいかに組み入れるかについて標準的な手法は皆無の状況ですが、1つの基本原則は存在します。それは、現代経済における資本配分は投資家の裁量に委ねられているということです。つまり、資本が投じられるのは、投資家が最大のリターンを見込めると考え、リスクが最小で、かつ社会が非財務パフォーマンスの変化を望む分野となるでしょう。特に非財務パフォーマンスがますます重要になっています。

非財務パフォーマンス指標には、企業活動から排出される二酸化炭素の量、主要管理職に占める女性の数、国際連合(UN)の持続可能な開発目標(SDG)達成への貢献度、企業ガバナンスの透明性などがあります。

どの企業も資本コストの最小化を望んでいます。そのためには、リターンを高め、リスクを削減し、ESGの全般的な実績を向上させるべく、時間をかけて企業行動を変えていかなければなりません。これを実現した企業こそが、資本コストの低下という形で競争優位性を得られると考えます。これはひいては株主に利益を、債券保有者にリスク軽減をもたらすことにもつながるはずです。

リスク管理の一手段としてのESG

信用格付けと同様、ESGも多くの点からリスク管理の一手段と見なすことができます。ある企業が事業における環境対策の不行き届きゆえに行政処分や法的措置を受ける恐れが高まった場合、信用も著しく低下しかねません。

債券投資家にとって、伝統的な信用指標に加えて新たな企業リスクプロファイルの監視手段を持つことのメリットは明らかです。

資産運用業界では、個々の発行体、セクター、国のESGプロファイルやリスクプロファイルの精緻な測定手法が生み出されています。こうした状況においては、ESGスコア、パフォーマンス、リスク間の関係性が高まるのは必然といえます。

伝統的な信用格付けとESGの発展はいずれも、信用プロファイルに起因する債券価値の減損リスクを強く反映したものです。例えば、投資家はESGスコアの低い発行体に対し、そのビジネスモデルが持続不可能となるリスクを補うべく、相対的に高い利回りを要求する可能性があります。

資本コストが上昇した場合の帰結は、ビジネスモデルが持続不可能となるか、ESG水準の向上に向けてビジネスモデルを変えるかのいずれかしかありません。法規制環境が変化を後押しするのは確かですが、投資家も極めて重要な役割を果たします。その証拠が、ESGの組み入れ、サステナブル(持続可能性)ファンド、インパクト投資の急速な発展です。

アクティブ運用の見地からは、ESG分析が運用プロセスの中核要素になっていくと考えます。資産運用会社は、クリーン経済分野のような進化しつつあるトレンドを捉えるとともに、ESG水準が低い発行体への投資を減らして下方リスクの最小化を狙うことで、投資対象の適切な選択が可能となります。

アクティブ運用の強み

ESGに関して、アクティブ運用には多様なレベルが存在します。その一例が、資産運用会社や機関投資家が投資対象としない企業や国を定める、除外方針に基づく運用です。除外されるのは、特定の兵器製造にかかわる企業など、活動が公共の利益と一致しないと目される企業や国となります。

特定活動の投資対象からの除外に加え、現在ますます注目を浴びているのがインパクト投資です。これは、(温暖化ガス)排出量削減、国連のSDG達成、マイクロファイナンスプロジェクト支援といった具体的な成果の実現を目指して資金を投じるものです。こうした運用戦略は目標を絞り込みやすく、特にプライベートエクイティに関連しています。

機関投資家にとっての課題は、財務上のリターンやパフォーマンスを第一としつつ、投資プロセスにESGを組み入れることです。ただし、これら2つは相入れないものではありません。それどころか、企業に行動改善を迫ることは、長期的な財務パフォーマンスの向上にもつながるでしょう。

年金基金や保険会社のような大手機関投資家が運用方針という武器を通じて企業の活動や政府の政策に及ぼし得る影響力には、やはり甚大なものがあります。

投資家にとっても、ESGに優れた企業への投資は長期的にはより高いリターンにつながるとみられています。このため、ポートフォリオのESG目標を掲げている機関投資家に対しては、ESG目標の達成に向けてアクティブ運用の採用をお勧めしたいと思います。筆者の考えでは、インデックス運用は経済における効率的な資金配分手段ではなく、ましてや非財務成果の向上に向けた資金配分手段として効率的でないと言えるでしょう。

ガバナンスの向上

債券運用で重視されるのは信用であり、信用分析の中核を成し続けているのが企業のガバナンス評価です。これは、バランスシートの効果的な管理、債券保有者と株主双方の利益への配慮、信用格付けへの注力に関し、企業経営陣の能力と意思を信頼できるか否かの評価といえます。

ガバナンスの範囲を超えて企業のESG全般の実績と管理方法も把握することは、伝統的な信用評価の延長として当然の展開ですが、これを実現するには労力もリソースも必要です。このため資産運用会社は信用分析の範囲をさらに広げ、責任投資の専門家とも手を組んで企業にESG問題に関する働きかけを行っています。

今日、フォルクスワーゲンの排ガス検査不正のような問題が起きた場合には、必ずやその企業の経営陣が大幅に入れ替えられます。これには、責任投資方針を掲げる投資家がこのような問題に重きを置くことが少なからず影響しています。ESG方針が大きく後押ししているこうした変化は、企業経営の向上とESGプロファイルの改善につながるものと期待されます。

ESG水準の長期的向上を狙った債券ポートフォリオを実現するには、幅広い要素の測定値を用いて各企業のESGプロファイルを注視し続ける能力が必要となります。さらに、こうしたデータを読み解き、企業のパフォーマンス向上要因を見極めながら、ESGスコアと伝統的な信用指標を併用して相対価値を判断していく能力も求められます。

ESGの利点

ESGは金融業界の多くの分野で、アクティブ運用の中核要素となりつつあります。ESG分析は銘柄選定面での新たな差別化につながるだけでなく、投資家の非財務要件充足にも貢献します。低金利でファンダメンタルズが安定したクレジット市場においては、伝統的な信用プロファイルが同一の企業同士を比較していずれかの債券への投資を選択する際に、ESG分析が違いをもたらす可能性もあります。

こうした分析が短期的には相対パフォーマンスに表れないとしても、さらには、ESGプロファイルに劣る企業への投資と比較して相対価値や期待リターンに短期的には目に見える違いが出ないとしても、それでもESGプロファイルが優れた企業に投資したいという投資家の傾向は、ますます明確になっています。

実際、資産運用会社が新たな顧客への売り込みを行う際やプラットフォームへの自社ファンド追加を働きかける際には、ESG投資に関する実績が不可欠な要素となっています。こうした中でESG要件は商品開発動向をも変えつつあり、サステナブルファンドやグリーンボンド等の特定のインパクト投資商品は、資産運用会社の商品ラインアップにおいて存在感を増し続けています。

社会の変化を支える金融市場

ESGが運用の中核に位置するまでに至ったのには、金融市場が一役買っています。株式市場は、新エネルギーの開発を目指す企業や伝統的な農業経営手法の壁に挑む企業から、公的医療制度への負担軽減をもたらす新たな技術を活用して医療を変革する企業まで、多種多様な企業への投資の場を提供しています。

債券市場は、企業行動だけでなく場合によっては国の政策にも影響を及ぼすだけの資本配分を可能としています。なお、気候や環境に関する目標達成を目指す社会においてなすべきことは、これにとどまりません。

時として、短期的なリターンに影響を及ぼし得る決定を下すことが必要となるかもしれません。ただ、それによって、世界の平均気温上昇を2度未満に抑える目標に貢献できるのであれば、長期的なメリットが短期的影響を補って余りあるといえるでしょう。

最後に触れておきたいのは、どうすれば先進国以外の国々に環境対策強化を促せるのか、という関心が高まっている課題です。この点では、主要エネルギー源として石炭への依存度が高い中国が極めて高い壁となっています。ただし中国は同時に、急拡大しているグリーンボンド市場を抱えており、さらにエネルギー効率の高い工場、輸送システム、建物の増加をもたらすプロジェクトへの投資機会を投資家に提供しているという側面もあります。

責任投資とは結局、社会の良い方向への変化を後押しすることです。関係者が力を合わせてこうした変化を目指すことが、社会の繁栄につながるでしょう。資産運用業界は、責任投資を中核に据えた運用へと急速に舵を切る中、そのメリットを広く明確に伝えていく必要があります。

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    本レポートは当社リサーチ専用ウェブサイト「Tomorrow Augmented」に掲載された英語原文「Change for the better: ESG and fixed income」を翻訳したものです。

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