五里霧中のインフレピーク
キーポイント:
- 米国のインフレ率のピークは依然として捉えどころがなく、今週もFRBによる追加の大幅利上げが求められている(当社は75bpsを予想)。
- モーリス・オブストフェルド氏の国際的な協調金融政策の呼びかけに関する当社の見解について言及する。
- 今週末のイタリア総選挙については、極右政党「イタリアの同胞」のメローニ党首の、EUとハンガリーの対立へのコメントを注視する必要がある。
米国のインフレがいつピークを打つかは依然として捉えどころがありません。インフレの「外生的要因」は緩和が続いていますが(石油を除く米国の輸入物価は現在、コア消費者物価よりも低い伸びを示しています)、国内のインフレ圧力は高まり続けています。春の終わりごろに米労働市場の軟化が見られましたが、その後目覚ましく回復しています。長期インフレ期待の低下はFRBに幾分の慰めをもたらし、FRBが十分に信認を取り戻したことを示唆していますが、それでもFRBのリサーチは、依然として上昇している短期インフレ期待が賃金と物価の動向にとって重要であることを示唆しています。こうしたことから、今週もFOMCで大幅利上げが予想されます。市場では100bpsの引き上げを求める声もあり、選択肢としてそれはあるでしょう。しかし、当社の基本シナリオである75 bpsの利上げであっても、政策スタンスは抑制的な領域に達します。このため、適度な慎重さが必要です。
大幅利上げが相次いでおり、中央銀行間で「利上げの頂上決戦」の様相を呈しています。IMFの元チーフエコノミストで経済学者のモーリス・オブストフェルド氏 は、過度な引き締めリスクを減らすために、国際的な協調金融政策を取るように呼びかけました。当社は原則的にはこの呼びかけに同意しますが、実際には、為替管理が政策の一部である場合にのみ、このような協調が真に効率的になるでしょう。協調的なアプローチであっても、それぞれの引き締めのレベルは、景気サイクルにおける各経済の位置づけに依存すると思われます。ユーロ圏とは対照的な米国経済の過熱を考えると、ドルとユーロの間に大きな金利差が残るでしょう。その結果、ユーロ安が輸入インフレを加速させ、ECBを「極度の利上げ」に駆り立て、国際的に事前に合意されていた引き締めペースが危うくなる可能性があります。 当社は、このような大掛かりな国際協調政策がすぐに実現するとは考えていません。
最後に、欧州委員会がハンガリーへの構造基金の一部(補助金)を停止するようこのほど勧告したことについて触れます。今週末に行われるイタリア総選挙で、右派連合のメローニ党首の勝利が予想されており、EUに対して「闘争的な」東部加盟国と協調する可能性があります。これでは、EUのさらなる前進は望めないでしょう。
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