クリーンテック戦略月次レター:環境汚染防止分野が好調
クリーンテック戦略月次レター(2022年10月の振り返り)
環境汚染防止分野が好調
先進国への生産回帰が追い風となり、各種産業向け水処理ソリューションのニーズが高まる
10月のグローバル株式市場は、インフレ鎮静化の兆しが見えたこと、7-9月期企業決算発表が始まり、これまでのところ予想よりも良い結果が出ていることなどを受けて反発しました。大半の地域がプラスのリターンを記録しましたが、中国市場だけは例外で、習近平総書記(国家主席)が3期目に入り指導体制を強化したことへの警戒感から急落しました。セクター別ではエネルギーおよび情報技術セクターが市場全体を上回るパフォーマンスとなった一方、消費関連セクターは出遅れました。グロース株とバリュー株はどちらもプラスのリターンとなりましたが、グロース株がバリュー株を下回るパフォーマンスとなりました。
クリーンテック戦略は10月にプラスリターンとなりましたが、世界株式(MSCI ACWI、米ドルベース)は下回りました。当月は、主として欧州や北米の保有銘柄の株価上昇がプラス寄与となりました。「スマートエネルギー」および「低炭素輸送」は市場全体に対して遅れをとりましたが、「持続可能な食糧供給」関連分野の保有銘柄は堅調でした。
半導体製造などでは大量かつ高純度の水が必要
環境汚染防止関連分野ではエヴォクア・ウォーター・テクノロジーズが特に好調でした。同社は上下水処理ソリューションにおけるリーディングカンパニーで、医薬品、化学、マイクロエレクトロニクス、食品・飲料など幅広い業種のエンド市場にサービスを提供しています。戦略的な価格決定力、燃料および鉄鋼価格の低下などによって収益が押し上げられました。また、今後は米国内への生産回帰が追い風になると見られ、中でも半導体製造など大量かつ高純度の水を必要とする業界が有望です。
その他、持続可能な食糧供給関連分野の米大手農機メーカー、ディアは大規模農業用機器の買い替えサイクル、サプライチェーン問題の緩和、農家のセンチメント改善などの恩恵によってプラス寄与となりました。ディアは同セクターにおける最も質の高い企業の一つで、好業績を受けて営業利益目標を引き上げました。
COP27で気候変動対策の段階的な前進に期待
なお、11月6日から18日まで、地球の温暖化防止対策などを話し合う第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)がエジプトで開催されます。ウクライナ戦争やエネルギー危機の厳しい環境下、異常気象に苦しんでいる途上国支援などが焦点となっています。困難な状況ではありますが、COP27を通じて地球規模の気候変動対策に関して段階的に前進するとみられています。会議の方向性については、アクサIMクライメートリサーチ・ヘッドのオリビエ・ユージンの記事(「COP27:エネルギー危機の中で開催される気候変動会議へのささやかな期待」)をご覧ください。
様々な課題はあるものの、長期的にはエネルギー移行に対する政策の後押しは一段と強まっており、主要国の大半で重要な脱炭素計画が策定されています。欧州連合(EU)は、2030年までに「温室効果ガス55%削減目標」を掲げ、主導的な立場にあります。中国は2030年までに二酸化炭素排出量をピークアウトし、2060年までにネットゼロを実現する目標によって、世界一の排出国として正しい方向へ向かって大きく前進しました。米国のインフレ抑制法は同国の歴史上最大の気候問題に対する投資であり、同国のCO2排出量を2030年までに大幅に削減する助けになると見られます。また、世界中の企業からも気候変動に向けた大幅な前進が見られます。
これらの目標を達成するためには、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)などの分野に多額の投資が必要となります。引き続き、高い技術力と競争優位性のある質の高いクリーンテック関連企業に投資することにより、地球環境を守るための政策の後押しや人々の行動の変化を背景に長期的な成長が期待できると考えます。
EU、ガソリン車の2035年販売禁止で合意
10月下旬にEUは、2035年にガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止することで合意しました。これにより、CO2を排出する乗用車と小型商用車は、ハイブリッド車を含め今後販売できなくなります。EU内では、EVへの移行が急速に進むとみられます。欧州大手自動車メーカーのEVシフトが既に続いており、このEUの措置により関連分野も含めた設備投資の加速が続くと考えます。
ポートフォリオの動向
低炭素輸送関連分野では、シリコンカーバイド素材および機器の主要サプライヤーであるウルフスピードの株価が下落し、マイナス寄与となりました。同社の業績は、古くからあるノースカロライナ州ダーハム工場において部品不足により生産が低下したことに影響を受けました。しかしながら、この問題は一時的なものであり、同社の長期的な成長見通しには引き続き確信を持っています。EVや高性能アプリケーションに用いられる同社のシリコンカーバイド半導体は、従来のシリコン・ベース半導体に比べてパワー転換効率が高く、高水準の需要が見込まれると同社では見ています。
スマートエネルギー関連分野では、半導体受託製造最大手TSMCがマクロ経済環境の悪化とそれに伴う半導体需要への影響に対する懸念から株価が下落し、マイナス寄与となりました。当月、アップル社がiPhone14向けプロセッサーの発注数を削減するという報道や、半導体メーカー、アドバンスト・マイクロ・デバイセス(AMD)社から高価格帯スマートフォンの需要やクラウドコンピューティングへの投資が弱含むことを示唆する弱気のコメントがありました。こうしたニュースの影響もあり、TSMCの株価は年初来で大きく調整していますが、最先端半導体の受託製造において独占的な地位を占め、強い価格決定力を持つ同社の長期的な成長性から鑑みて、非常に魅力的な株価水準にあると考えています。
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