夜明け前の暗闇:グリーンボンドにとって困難な年だが、前途は明るく
債券市場は年初来で、歴史的な金利上昇とクレジットスプレッド拡大の影響を大きく受けてきました。グリーンボンドについては、この困難なマクロ環境から、過去になかったマイナスリターンが生じており、6月末時点では、ICE BofAML Green Bond Hedged EURインデックスのリターンは-14.46%に留まりました1 。しかしながら、この急成長中の債券資産クラスについては、短期的にも長期的にも楽観視できる理由があります。
厳しい背景
債券市場が直面したインフレの状況は、ウクライナ紛争によってさらに高まりました。このため、中央銀行は金融政策のスタンスを根本的に変える必要に迫られています。米連邦準備制度理事会(FRB)はすでに政策金利を計1.5%引き上げ、市場は年内にさらに1.7%ほど引き上げると予想しています。一方、欧州中央銀行(ECB)は債券購入計画の終了予定を発表し、7月に0.50%の利上げ(2011年以来)を行い、市場は年内に計1.30%前後の利上げを予想しています。
こうした中、6月末の米独10年国債利回りはそれぞれ150bps上昇し、3.01%、1.34%となりました2 。このように、金利の反発は、過去5年から10年の間に観察された上昇を数カ月で帳消しにしました。また、金融引き締めとインフレ圧力による成長への不安の影響を受け、クレジットスプレッドは急激に拡大しました。
このような背景から、グリーンボンド・ユニバースのマイナスのパフォーマンスは、金利の大幅な上昇とクレジットスプレッド拡大の組み合わせによって説明できます。重要なのは、グリーンボンドが従来債券ユニバースよりも大きな影響を受けていることです。グリーンボンドのパフォーマンスの低下は、主に2つのユニバース間の金利および信用感応度の差に起因するものです。
グリーンボンドの波乱に注目
一見すると、2つのユニバース間のデュレーションの差はわずかです。下の「グローバルグリーンボンドとグローバル債券の主な特徴」に関するグラフが示すように、グリーンボンドは約7.6年、通常債券は7.1年です。
しかし、通常債券ユニバースの一部は、年初から比較的安定した金利で推移している負債に関連しています。下の「通貨別のデュレーション寄与度トップ3」のグラフが示す通り、主にユーロと米国の金利の影響を受けるグリーンボンド・ユニバースに対し、日本の通常債券の感応度は約1.3年でした。
このバイアスを調整すると、グリーンボンド・ユニバースは、従来債券ユニバースよりも金利上昇の影響を大きく受けていたことがわかります。さらに、グリーンボンドはクレジットへのエクスポージャーが高いため、今年に入ってから拡大したクレジットスプレッドの影響をより受けやすくなっています。
したがって、2022年のグリーンボンド市場は最悪の組み合わせとなり、相対リターンで従来債券に対してマイナスウエイトを占める結果となりました。
グローバルグリーンボンド(緑)とグローバルアグリゲート債券(青)の主な特徴3
通貨別のデュレーション寄与度トップ3
セクター別内訳(%)4
出所:アクサIM、ブルームバーグ、ICE BofAMLインデックス、2022年6月30日時点
今後の投資機会
現在のようなインフレ環境は、インフレ圧力と景気後退の見通しの間で揺れ動く債券市場の大きな変動を継続させる可能性があります。現在のボラティリティは、短期的には大きな変動に対応できる投資家に機会を提供し、長期的には現在のバリュエーションは投資家にとって魅力的な展望を提供すると当社は考えています。
6月末時点で、グリーンボンド・ユニバースの直接利回りは、通常債券ユニバースより約40bps高い(ユーロヘッジで1.39%に対し1.78%)というのも楽観視できる理由です。次に、グリーンボンド・ユニバースの平均スプレッドは、通常債券ユニバースより70bps高く(OASベース)、過去最高の水準となっています(「主な特徴」のグラフの通り)。グリーンボンド・ユニバースの銘柄構成は変わっていないため,スプレッドの上昇はグリーンボンド・ユニバースが通常債券ユニバースよりも大きくリプライシングしたことを反映しています。当社は、このリプライシングが投資機会を提供し、グリーンボンドのトンネルの先に光が見えつつあると考えています。
また、グリーンボンドのリスクプロファイルは、バランスの取れたものであることも忘れてはなりません。グリーンボンド・ユニバースの半分が企業の発行体です(通常債券ユニバースでは25%)。このため最近では、通常債券ユニバースとの比較でクレジットスプレッドに対する感応度が高まっていますが、長期的にはソブリン関連債券からの分散と期待リターンの向上という利点があります。
また、グリーンボンドは、発行体が資金使途を環境に配慮したプロジェクトに特定し、投資家が明示的に資金配分できるもので、その主旨は変わっていません。これにより、グリーンボンドは、従来債券と比較した場合に資金使途の透明性が高い、という独自のメリットを投資家に提供できます。なお、すべてのグリーンボンドが同じではありません。このため、アクティブ運用アプローチにより、投資家は、発行体の持続可能性に関して、特定のプロジェクトだけでなく、発行体の全体的な戦略も評価することで、グリーンボンドにアクセスできるようになるでしょう。
これまでのところ、グリーンボンドにとって厳しい状況が続いています。しかし、比較的高い利回り、魅力的なバリュエーション、バランスのとれたユニバースと透明性などの長期的なメリットなど、グリーンボンドについては楽観視できる理由があります。
グローバルグリーンボンドとグローバルアグリゲート債券のスプレッド推移
出所:アクサIM、ブルームバーグ、ICE BofAMLインデックス、2022年6月30日時点
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