米国の最新のインフレ率が示唆するもの
キーポイント
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9月の米国消費者物価指数(CPI)は市場予想を上回った
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インフレ率は8月より低く、モメンタムが減速していることを示唆している
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当社は、全償還年限のインフレ連動債に価値を見出し始めている
米国の9月の消費者物価指数は8.2%となり、8月(8.3%)を下回りましたが、市場予想を上回りました。これは、コアインフレ率の上昇分の40%を占める、住居費などのサービス価格のアップサイドサプライズによってもたらされました。
サービス価格インフレは国内の経済活動と密接な関係があり、住居費だけでなく、医療や交通サービス(バス、電車、航空の料金)なども強いインフレ傾向を示しています。他の要因としては、エネルギー価格は低下したものの、食品価格が堅調に推移したことが挙げられます。商品インフレ率は前月比0%で、新型コロナ起因のインフレが解消されつつあることを示唆しており、これは明るい材料です。
9月のCPIは、今後数カ月、インフレは減速するものの、定着するリスクがあるという当社のシナリオを裏付けるものでした。3カ月年率換算のコアインフレ指標を見ると、まだ過熱状態とはいえ、インフレの勢いが減速していることが確認できます(青線はコアインフレ、緑線はコアインフレから住居費を除いたもので、いずれも3カ月年率換算)。
出所:アクサIM、Bloomberg 2022年10月13日時点
今後については、多くの先行指標がインフレ圧力の緩和を示唆していますが、まだいくつかのリスク領域が残っています。
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商品価格は世界的なサプライチェーン圧力の低下(9月は5カ月連続の低下)に伴い、減速すると思われます。
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サービス価格は、CPIの計算方法に多くの時間差があるため、過熱した状況が続くと思われます。コアインフレ率に最も寄与する住居費は、医療費インフレと同様、かなりのタイムラグをもって計算されます。したがって、近い将来、これらはCPI全体の数字の足を引っ張るようになるかもしれません
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コモディティ価格は、特にOPECプラスによる最近の原油生産量削減により、依然として上昇リスクとなっています
全体としては、インフレの減速という当社の見通しは変わりません。米国でのインフレはピークを過ぎたと考えられ、米連邦準備制度理事会(FRB)は今後数カ月でタカ派的な姿勢を崩すとみられるため、実質利回りはピークに近づいていると当社は考えています。
実質利回りはサイクルの最後の水準に達しており、ブレークイーブンインフレ率はFRBのインフレターゲットと整合的であると考えます。高いインフレ率によってインフレ連動債は好調で、景気循環の後期においては全償還年限のインフレ連動債は堅実な投資となるとみられます。 短期デュレーション債と比較するとボラティリティがより高いものの、このボラティリティを許容できる投資家にとっては、予想されるサイクルの最後の水準の恩恵を利用するべく、全償還年限のインフレ連動債を検討する戦略的な好機となる可能性があります。
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