FRBやECBとは異なるアプローチを取るイングランド銀行
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FRBはターミナルレート(現在の引き締めサイクルにおける政策金利の最終到達水準)の引き上げに前向きだが、英イングランド銀行は "あえて異なる"アプローチを取っている。
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債務上限引き上げを巡るドラマは避けうるかもしれないが、米中間選挙は将来の頭痛の種を宿している。選挙後、「財政マヒ」が起きる可能性は高いが、米国経済の状況を考えると、完全には悪いニュースではないかもしれない。
(お断り:Macrocastは来週休刊いたします。次号は11月21日(月)に発行する予定です。)
来月発表の米インフレ率が著しく高いデータにならない限り、FRBはおそらく12月に50bps「だけ」の利上げを目指すとみられます。しかし、パウエルFRB議長が語っているように、重要な問題はもはや「どれだけ迅速に」利上げを行うかではなく、「どの水準まで」利上げを行うか、また「いつまで」高い金利を維持するかです。FRBはターミナルレート引き上げの可能性に言及することで、「慎重な引き締めペースへの移行が目前に迫っている」とする過度にハト派的な市場の解釈を抑制しようとしています。一方、イングランド銀行(BOE)は、市場に対して、インフレ抑制に必要な引き締め総量の過大評価(結果的には引き締め総量およびターミナルレートの低め誘導)を市場に働きかけています。この違いは、BOEが英国に迫る緊縮財政を意識していることに起因すると思われ、BOEの金融政策委員会は、FRBのレトリックから乖離することで、為替レートに対して慎重なリスクを取る用意があるとみられます。もちろん、米国経済が急速に軟化し始めれば、「政策ギャップ」を維持しやすくなります。当社は最近の米労働市場のデータフローを注視しています。景気軟化の兆候と景気過熱の根強い証拠が共存しており、かなり不明瞭になっています。なお、予想ターミナルレートの下方修正の引き金となるような「決定的証拠」もまだありません。
当社の見解では、先週のラガルドECB総裁の講演はタカ派的なものでした。浅い景気後退はインフレ抑制に十分ではない、というメッセージは「実質的に」理解できますが、そのコミュニケーション効果は極めて強力です。もし浅い景気後退で十分でないとすれば、ECBが問われるのは、ECBがさらに抑制的領域に踏み込んで深刻な景気後退を引き起こすことを積極的に望んでいるのかということです。
今週、米民主党が下院の、あるいは上下両院の過半数を失ったとしても、バイデン政権が「レームダック・セッション(上下両院で新たな議員が就任する前の期間)」をうまく利用すれば、今後の「債務上限引き上げに関するドタバタ」を回避するテクニカルな方法はあります。しかし、今回の中間選挙がもたらす主な影響は、2024年の大統領選挙に向けた米国内の政治的対立の激化であり、特に投票手続きに関するものでしょう。
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