雇用データ、市場の強気論者を直撃
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FRB と ECB の先週のコミュニケーションにおける「ハト派的な材料」は、市場が予想していたほどではなかった。そして 米国の強い雇用統計は、当然のことながら市場の熱気を冷ました
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当社は、ユーロ圏での「信用インパルス(企業向け銀行融資)」の急激な低下を懸念している。ECB は、賃金交渉が経済状況の悪化に反応するのが遅いと考えている可能性がある
「ハト派ピボット(ハト派への政策転換)」が差し迫っていると考える上では、2 つの条件が満たされる必要があります。 第一に、中央銀行のコミュニケーションが変化する必要があります。 第二に、データフローが、許容できる時間の枠内でのインフレの着地と整合している必要があります。 先週、FRB と ECB のメッセージには、誇張されるべきではないと思われるものの、あいまいな(または はっきりしない)変化がありました。 パウエルFRB議長が記者会見の質疑応答において、市場がまだ(年後半の)利下げを織り込んでいることに対する反論が、やや曖昧になってきました。また ECB は、インフレの基本シナリオに関するリスクが現在「よりバランスの取れた」ものになったことを認めました。 しかし、これらのハト派的な材料への市場の熱狂は、金曜日に発表された強力な米労働市場のデータによって打ち砕かれました。
ラガルドECB総裁のコミュニケーションの若干の下方シフトは、3 月以降の 25 ベーシス ポイントへの利上げペースの単なる減速を予告するものであり、利上げを一服させるという意味ではないように思われます。当社は基本シナリオ(ECBは5月までの利上げで3.25%まで金利水準を上げ、その後利上げを休止)を維持しており、リスク方向については、利下げというより、利上げを見ています。現在、市場はユーロ圏の成長見通しを過信しすぎていると当社は考えており、「信用インパルス」のマイナス領域への大幅な悪化を懸念しています。当社はまた、 2023 年の欧州労働市場の機関的な特徴( 集中型の賃金交渉システム)は、経済活動の悪化に対する賃金ダイナミクスの反応を遅らせる可能性があるとECBが懸念している、と考えています。米国などでは、過去のインフレデータが、分散型賃金交渉で大きな役割を果たしています。
一言で言えば、米国では、金融引き締めがまだ労働市場を抑制するほどには効いていないことが問題であるのに対し、欧州では、金融引き締めが経済全体に浸透し始めてはいるが、インフレ圧力への影響が緩やかであることが問題です。当社は、中央銀行高官のコメントが最近「タカ派的ではない」ように聞こえるとしても、中央銀行の忍耐に賭けるべきではないでしょう。
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