クリーンテック戦略月次レター:市場は先端半導体に注目
クリーンテック戦略月次レター(2022年11月の振り返り)
市場は先端半導体に注目
半導体の能力向上はエネルギー効率改善に貢献し、再生可能エネルギー発電システムに不可欠
11月のグローバル株式市場は、米国および欧州においてインフレ鎮静化の兆しが見えたことから、前月に続いて上昇しました(現地通貨ベース)。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は利上げペースは減速する可能性がある一方、ターミナルレート(利上げ終了時に到達する金利水準)は従来見通しより高くなる可能性を示唆しました。
当月は全ての地域が上昇し、中でもゼロコロナ政策の緩和に踏み切るとみられる中国が堅調なパフォーマンスとなりました。また、全てのセクターが上昇し、グロース株はバリュー株と同等のパフォーマンスとなりました。
当月のクリーンテック戦略は「スマートエネルギー」および「低炭素輸送」の関連銘柄にけん引され、世界株式(MSCI ACWI、米ドルベース)のパフォーマンスを上回りました。「スマートエネルギー」関連分野で注目されたのは半導体で、再生可能エネルギー発電システムに不可欠であり、半導体の能力向上がエネルギー効率改善に貢献します。こうした半導体製造の世界最大手、TSMCのパフォーマンスが大きく貢献しました。当月は、主として欧州や北米の保有銘柄の株価上昇がプラス寄与となりました。「持続可能な食糧供給」および「廃棄物処理・資源有効利用」もプラスリターンとなりましたが、「廃棄物処理・資源有効利用」は市場全体に対しては遅れをとりました。
COP27で「損失と被害」基金設立で合意、民間投資セクターが重要な役割
当月開催された第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)において、各国首脳は化石燃料削減については合意できなかったものの、気候変動に最も被害を受けている発展途上国を支援するための「損失と被害」基金の設立で合意したことは歓迎すべき進展です。アクサIMクライメートリサーチ・ヘッドのオリビエ・ユージンによれば、同基金の設立などにより、民間投資セクターが今後重要な役割を担う可能性が出てきました。オリビエの記事(「投資家にとってのCOP27:ささやかながらも意義を見出す」)をご覧ください
各国で進む再生可能エネルギーへの移行
なお、ロシアからの天然ガス供給減により引き続き天然ガス価格には上昇圧力がかかっています。また最近では欧州はロシア産原油の輸入に規制を課すことを決めました。欧州では液化天然ガスの購入と産業向けの需要低下によって天然ガス貯蔵率は改善しましたが、エネルギー不足が長期化するとの恐れは尚も残っています。エネルギー価格高騰に対処すべく、欧州の複数の国において、エネルギー企業などに対する超過利潤税や特別支援策などを通じて消費者を守る措置が講じられました。
様々な課題はあるものの、長期的にはエネルギー移行に対する政策の後押しは一段と強まっており、主要国の大半で重要な脱炭素計画が策定されています。国際エネルギー機関(IEA)の12月上旬の発表によれば、再生可能エネルギーが2025年には石炭を抜いて最大の電源になると予想されます。ロシアによるウクライナ侵攻により各国はエネルギー安全保障の意識を高めており、再生可能エネルギー能力増強を加速させています。また、高騰している化石燃料に対して、再生可能エネルギーの発電コストが割安になっていることも追い風になっています。
ポートフォリオの動向
スマートエネルギー関連分野では、TSMCがパフォーマンスに最も大きくプラス寄与しました。同社の株価は、マクロ経済環境の悪化とそれが半導体需要に与える影響が懸念され、10月に年初来安値をつけ割安な水準となっていました。運用チームでは、同社は世界をリードする先端半導体企業として支配的な地位と価格決定力を持ち、極めて高い成長性を有することから長期的な見通しについて引き続き強気に見ています。
低炭素輸送関連分野では、自動車および産業向け半導体大手のインフィニオン・テクノロジーズがプラス寄与となりました。同社は自動車向け半導体の底堅い需要と強い価格決定力で利益率が向上し、予想を上回る2023年業績ガイダンスを発表しました。同社の業績は、自動車の電気化、自動運転へのシフト、再生可能エネルギーの普及、家電製品の省エネ化、IoTの普及など複数の長期的トレンドに支えられています。
持続可能な食糧供給関連分野では、農機メーカーのディアが大規模農業用機器の買い替えサイクル、サプライチェーン問題の緩和、農家のセンチメント改善などの恩恵によってプラス寄与となりました。ディアは同セクターにおける最も質の高い企業の一つで、好業績を受けて営業利益目標を引き上げました。
廃棄物処理・資源有効利用関連分野では、ダーリン・イングレディエンツの7-9月期決算が強弱入り混じる内容だったことが失望を誘いマイナス寄与となりました。売上は予想を上回ったものの、利益は複数の合併企業の統合にかかる移行コストが重石となって予想を下回りました。同社は食肉加工副産物や使用済み食用油を回収し、持続可能な原料として幅広く再利用している他、成長中の再生可能ディーゼル事業からの高いフリーキャッシュフローにより、中核事業へのさらなる投資を可能にしています。
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