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クリーンテック戦略月次レター:ハワイなどの山火事により気候対策投資の必要性高まる

  • 2023年9月12日 (5 分で読めます)

クリーンテック戦略月次レター(2023年8月の振り返り)

ハワイなどの山火事により、気候対策投資の必要性高まる

バイデン大統領、排出抑制策の継続を強調

当月は、月初に米国債が格下げされたこと、それを受けて債券市場が軟調な動きとなったことなどを背景に、これまで株式市場の上昇を牽引していた銘柄が反落し、グローバル株式市場は下落しました(現地通貨ベース)。月末にかけては、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がジャクソンホール会議(経済政策シンポジウム)で行う講演に注目が集まりました。パウエル議長は依然として高すぎるインフレ率と追加利上げの可能性を強調し、政策金利の決定は「データ次第」であるという従来の姿勢を貫きました。米国の労働市場では新規雇用者数の伸びが予想を下回り、逼迫した状態が幾分緩和に向かう兆しが見られました。

欧州では米国に比べ引き続き高水準のインフレに悩まされており、ユーロ圏の7月の消費者物価総合指数は前月から横ばい、食品・エネルギーを除くコア指数は僅かに低下したのみでした。欧州の労働市場は引き続き引き締まった状態が続いている一方で、購買担当者景気指数(PMI)は低下しており先行きの景気見通しを不透明にしています。イタリア政府が銀行に対して超過利潤税を課すことを発表したため、欧州の銀行セクターは軟調な値動きとなりました。アジアでは、中国市場はデフレ懸念や小売売上高の減速などを受けて当月も軟調となった一方、日本市場は良好な経済指標の発表を受けて他国に比べて堅調さを維持しました。

8月のクリーンテック戦略は、「スマートエネルギー」と「低炭素輸送」の関連銘柄の低迷により、グローバル株式(MSCI ACWI、ドルベース)のパフォーマンスを下回りました。「環境汚染防止および廃棄物処理・資源有効利用」の関連銘柄がこれを幾分相殺しました。

死者が100人以上出たハワイの山火事や、南欧などで頻発する山火事により、気候変動対策への投資拡大の必要性が高まっています。(写真はイメージです)

バイデン米大統領、「気候危機の影響を否定することはもう誰にもできない」

経済・金融関連以外の話題としては、ハワイ・マウイ島の山火事で大きな被害が発生したことが挙げられます。死者は100名超に上り、多くの人々が家を失い、負傷しました。同島のラハイナ地区が最も大きな被害を受け、損害額は60億ドル(約8,800億円)に上ると推定されています。ハワイでの山火事リスクは外来植生種の増加に加え、乾燥した気候の長期化によって年々高まっています。今回の山火事は強風によって被害が拡大し、ハワイ州のグリーン知事は州史上最大の自然災害であると強調しました。気候変動の影響もあって山火事リスクは増大しており、今回の悲劇により気候変動対策への投資拡大の必要性が差し迫ったものであることを示しました。

また、米海洋大気局(NOAA)によれば、世界の海面の約5割が8月に異常な高温状態になりました。地球温暖化の影響と見られ、生態系や漁業への悪影響が懸念されています。

バイデン米大統領は8月末、ハワイでの山火事や大型ハリケーンのフロリダ州における高潮被害などを踏まえ、「気候危機の影響を否定することはもう誰にもできない」と述べました。米国の一部では排出抑制策に反対するなど反ESGの動きが高まっていますが、バイデン大統領は気候変動対策を引き続き推進する考えを明確にしました。

米フロリダ州では近年、ハリケーンによる高潮や洪水の被害が大きくなっています。

ポートフォリオの動向

環境汚染防止及び廃棄物処理・資源有効利用関連分野では、オランダのエンジニアリング向けコンサルタント・設計サービス企業のアルカディス及び米国の水質・大気質測定機器メーカーのダナハーがプラス寄与となりました。

アルカディスは、以前から高いROIC(投下資本利益率)を誇り、効率的に利益を上げられる会社として知られており、新たに証券会社が買い推奨し、労働生産性が更に改善する余地があることを指摘しました。同社は11月に投資家向け説明会を開く予定で、業績ガイダンスの上方修正が期待されています。

ダナハーは、医学研究向け抗体や試薬の製造・販売の主要企業である英アブカム社を買収する計画で、これにより同社に欠けていた抗体分野の強化を狙っています。市場はこの買収のニュースを好感し、ダナハーの株価は上昇しました。また、同社は環境応用ソリューション部門を「ヴェラルト」という社名で9月30日付で分離することも発表しました。

使用済み食料油の再生利用やバイオ燃料製造を手掛けるダーリン・イングレディエンツは、予想を下回る四半期決算の発表を受けてマイナス寄与となりました。しかし、決算内容には、バイオディーゼルや再生可能ナフサを扱う「ダイアモンド・グリーン・ディーゼル事業」が好調を維持していること、最近買収した企業の統合が順調に進んでいることなど、明るい材料も見られました。

持続可能な食糧供給関連分野では、食材メーカーのケリー・グループおよび動物遺伝学企業ジーナスがマイナス寄与となりました。ケリー・グループは四半期決算で、販売数量は引き続き好調だったものの、在庫調整の動きが続いていることが嫌気されました。ジーナスは、景気低迷する中国市場での豚肉の需要減少や価格低下が重石となりました。

低炭素輸送関連分野では、米国のリチウム企業アルベマールが予想を上回る業績を発表し、年後半の業績ガイダンスを上方修正しました。リチウムは特にエネルギー貯蔵分野で強い需要が続いています。一部の投資家の間で供給過剰が懸念されていますが、運用チームでは、同社のコスト構造や電気自動車(EV)向けリチウムの長期的な旺盛な需要と照らし合わせた上でこのリスクを織り込んでいます。

一方、バッテリーリサイクル企業のLi-Cycle、シリコンカーバイド(SiC)半導体企業のウルフスピードは、ともにマイナス寄与となりました。Li-Cycleはニッケル及びコバルト価格の低下を受けてリサイクル契約の価格が見直されたため、業績発表は失望的な内容となりました。しかしながら、米ロチェスター新工場の建設は計画通り進捗しており、年内に稼働見込みであることは特筆すべき点です。ウルフスピードも業績発表で利益が予想を下回り、株価が弱含みました。同社は米モホークバレー工場の立ち上げを引き続き進めており、長期的にはSiC基板の需要に応えるだけの供給を賄うことができると考えています。

地球温暖化対策関連分野では、最近組入を開始したケイデンス・デザイン・システムズ及びアンシスがプラス寄与となりました。両社は7月末から8月初めにかけて好調な業績を発表し、ソフトウェアを基本とするビジネスモデルが引き続き魅力的であることを示しました。ケイデンス・デザイン・システムズは設計自動化ソフトウェアの分野で、アンシスはインフラストラクチャ―・エンジニリングの計画や設計を効率化するデジタルツイン(現実世界から収集したデータを使い、仮想空間上にあたかも現実空間を再現する技術)の分野で、各々リーダー的な存在です。

一方、風力発電企業オーステッドは、米国の洋上風力発電事業に関する予想外の減損を発表し、株価が大きく下落しました。この減損は、サプライチェーン正常化の遅れ、補助金の不確実性、金利上昇による保有資産の時価評価低下などによるものです。

オランダのスマートエネルギー企業アルフェンも、引き続きEV充電設備事業の不振によりマイナス寄与となりました。この不振は、同社販売網におけるコロナ後の供給不足と強い需要が続いた時期からの移行に伴う在庫調整が原因ですが、この循環的な要因を除けば、同社はエネルギー貯蔵事業やグリッドソリューション事業など急成長分野に支えられ長期的に優位な立場にあることに変わりはないと見ています。

 

クリーンテック戦略月次レター:ハワイなどの山火事により気候対策投資の必要性高まる
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