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クリーンテック戦略月次レター:金利上昇が再生可能エネルギー分野の圧迫要因に

  • 2023年10月16日 (5 分で読めます)

クリーンテック戦略月次レター(2023年9月の振り返り)

金利上昇が再生可能エネルギー分野の圧迫要因に

環境分野の構造的な成長の原動力は不変

当月は、債券市場で利回りが上昇したことが株式などリスク資産に重くのしかかりグローバル株式市場は大きく下落しました(現地通貨ベース)。米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を据え置きましたが、年内にあと1回利上げを実施する可能性とともに2024年の利下げ回数は市場が予想よりも少なくなる可能性があることを示唆しました。また、サウジアラビアとロシアが原油の自主減産を年末まで延長すると決定したことを受けて原油価格が上昇し、エネルギー・セクター以外の全てのセクターのパフォーマンスがマイナスとなりました。地域別では、米国、大陸欧州の下落幅が比較的大きかったのに対し、英国は価格の上昇したコモディティ関連企業が多いことから小幅の下落にとどまりました。また、バリュー株がグロース株を上回るパフォーマンスとなりました。

9月のクリーンテック戦略は、リスク回避志向の高まりが「地球温暖化対策」、「環境汚染防止」、「廃棄物処理・資源有効利用」、「持続的な食糧供給」の全てのリターンの重しとなり、グローバル株式(MSCI ACWI、ドルベース)のパフォーマンスを大幅に下回りました。

環境分野の構造的な成長の原動力は不変

今年は9月に入ってからも異例の猛暑が続きました。9月の日本の平均気温は平年と比べて2.66度高くなり、7月・8月に続き、気象庁が統計を取り始めてから125年間で最高を記録しました。

また、世界各地でも異常気象が続いています。米ネバダ州ブラックロック砂漠はほとんど雨が降らない地域ですが、9月上旬に豪雨に見舞われ、砂漠は一転して泥沼化しました。同地で開催されていた恒例の大規模野外アートフェスティバルの参加者1人が死亡し、数千人が泥だらけとなり立ち往生しました。また、9月中旬には、北アフリカのリビアを集中豪雨が襲い、甚大な洪水被害が出ました。死者は約4,000人、行方不明者も約1万人に上っています。同国のインフラ面の不備が指摘されており、深刻化する気候変動の影響を大きく受ける地域におけるインフラ投資の重要性が指摘されています。

7・8月に続き、9月の日本の平均気温は125年間で最高を記録しました。(写真はイメージです)

国際エネルギー機関は再生可能エネルギーの設備容量を3倍にすることを提唱

9月下旬、国際エネルギー機関(IEA)が報告書を発表し、2030年に再生可能エネルギーの設備容量を3倍にすることを提唱しました。報告書は、2050年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにするロードマップを示しています。再生可能エネルギー容量3倍の目標は、9月にインドで開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言に明記されており、11月から12月にかけてアラブ首長国連邦(UAE)で開催される第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の主要議題になるとみられます。異常気象の頻発や政策的取り組みを背景に、再生可能エネルギー・シフトや脱炭素化に向けた設備投資の拡大が見込まれます。

政策的な取り組みが、再生可能エネルギー・シフトを後押ししています。(写真はイメージです)

スナク英首相、ガソリン車禁止を現実的なスケジュールに修正

英国ではスナク首相が、電気自動車(EV)の価格の高さなどを理由に、2030年としてきた英国内のガソリン車とディーゼル車の新車販売の禁止を2035年に先送りすると表明しました。このような動きは、脱炭素の流れを後退させるとの論調もみられますが、2035年のガソリン車禁止は米カリフォルニア州や原則禁止の欧州連合(EU)とならぶものであり、政治的先行が現実的な形に修正されたとみることもできます。なお、温暖化ガス排出を2050年に実質ゼロにする目標は維持されています。

ポートフォリオの動向

環境汚染防止及び廃棄物処理・資源有効利用関連分野では、アイルランドの再生紙包装材メーカー、スマーフィットカッパグループが米国の同業ウェストロックを36%のプレミアム(買収発表時)で買収すると発表したことが嫌気され、株価が下落しマイナス寄与となりました。現在の低収益環境において、両社の事業の重複や地理的補完性を考慮すると合併による収益とコストの潜在的なシナジー効果は大きいと見られるため、買収価格は妥当であると思われます。しかし、スマーフィットカッパの業界最高と言われる経営陣が業績不振にあえぐウェストロックの事業をいかに素早く立て直せるかについては見極めが必要です。

地球温暖化対策関連分野では、ネクステラ・エナジー(NEE)がマイナス寄与となりました。同社は上場子会社のネクステラ・エナジー・パートナーズ(NEP)が配当成長見通しを引き下げたこと(NEPはNEEが開発した再生エネルギー施設を買い取り、そのキャッシュフローを配当としてNEEに還元しているが、資金調達コストの上昇からこれ以上の施設買取りが困難になったため)が影響し株価が下落しました。運用チームでは、金利上昇を背景に再生可能エネルギーの運営環境が悪化していることは認識しているものの、NEPの時価総額は20 億ドル程度に過ぎず、時価総額1千億ドル超のNEEの事業全体から見れば影響は軽微であると考えています。また、NEEは自身で再生可能エネルギー施設を開発・保有する能力を有しており、同分野の成長性に懸念はないと見ています。同社の再生エネルギー施設は米国で最大規模を誇り、インフレ抑制法の恩恵を享受できる他、同社の規制公益事業を行うフロリダ・パワー&ライトは規制環境の追い風を背景に高成長を遂げています。運用チームでは、NEEは米国の公益企業の中でも最も優良な企業の一つであり、最近の株価下落でバリュエーションは非常に魅力的な水準にあると考えています。

持続可能な食糧供給関連分野では、特殊化学企業クローダ・インターナショナルがマイナス寄与となりました。消費者、ヘルスケア、工業向けにオレオケミカル(植物系油脂を原材料として作られる製品)を製造している同社は、今年初めに消費者および農業向け製品の在庫積み上がりを背景に業績見通しが下方修正されたことを受けて株価が低迷していますが、同社製品への需要は引き続き堅調であり、在庫調整もほぼ一巡したことを示すデータも明らかになってきています。農業分野をはじめ幅広い産業向けにソリューションを提供するトリンブルは、米国の農業機器メーカーAGCOとジョイントベンチャーを設立するとの報道を受けて月末にかけて株価が上昇しました。AGCOはトリンブルの農業技術関連資産に20億ドル支払い、トリンブルはジョイントベンチャーの株式を15%保有します。

低炭素輸送関連分野では、リチウム・メーカー最大手のアルベマールが軟調なパフォーマンスとなりました。8月にEVの販売台数および自動車全体の販売台数に占める比率が過去最高水準まで達し好調を維持しているにも関わらず、EVバッテリーに使用されるリチウム価格は過去数ヵ月において低迷しています。これは、バッテリー・メーカーが年初に在庫消化を開始して以来、未だに大幅な増産に転じていないことを示唆しています。アルベマールは世界的にも低コストのリチウム鉱山、垂直統合された事業形態などを背景に同分野で優位な立場にありますが、当ファンドにおけるリチウム価格への感応度を下げるため、組入を一部削減しました。

クリーンテック関連銘柄は、足元における金利上昇や、太陽光および風力発電機器など業界固有の問題の影響で過去数ヵ月にわたって苦戦を強いられています。しかしながら、構造的な成長の原動力は確固として変わらず、現在のバリュエーションは魅力的な水準にあると考えられます。

クリーンテック戦略月次レター:金利上昇が再生可能エネルギー分野の圧迫要因に
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