
地政学的緊張の高まりとともに増す市場の不確実性
- 2025年3月7日 (5 分で読めます)
主なポイント
市場のパフォーマンスは、この数週間困難な状況に直面しています。投資家が2025年に向けて抱いていた、より穏やかなマクロ経済環境は、明らかに崩れ去ったと言えるでしょう。米国政府によるグローバルな貿易と安全保障秩序への挑戦は、貿易、資本の流れ、消費、投資支出、政府の政策に混乱を引き起こす可能性があります。
新年に入るにあたり、世界経済は引き続き拡大すると広く予想されていました。世界経済は主に米国の強い成長に支えられ、欧州や中国でも若干の改善が見込まれていました。同様に、インフレは中央銀行の目標をわずかに上回りながらも、政策当局が金利を中立的な水準に近づけることで、概ね低下することが期待されていました。さらに、政府の債務水準についての債券投資家の懸念は、財政政策に関して政府に一定の規律を課し、それによって長期金利の大幅な上昇を抑制することが期待されていました。株式市場では、企業の収益が株式のパフォーマンスと信用力を支え、金利水準が投資家のインカムリターンを支えると考えられていました。
不確実性の高まり
しかし、急速に変化する地政学的な出来事によって生じた不確実性から、これらの前提にもはや頼ることはできません。投資家は今や、経済成長、インフレ、金利、長期借入コストに関する不確実性に直面しており、政治リスクも無視できない状況です。
企業の収益、収益性、キャッシュフローに関する前提は著しく打撃を受けていると思われます。すべての条件が同じであれば、これは企業資産のリスクプレミアムの上昇に反映されるでしょう。関税は収益に対する明確な脅威であり、消費者の不確実性もまた別の脅威と考えます。メディアの報道によれば、潜在的な合併・買収活動の減少も示唆されています。最近の経済データはあまり説得力がなく、今後数ヶ月間にわたり消費者や企業の間での不確実性が続くというリスクがあると見ています。
これらすべては、株式の株価収益率が低下し、社債のクレジットスプレッドが拡大することを意味する可能性があります。米国市場は、これらの評価指標が他の市場よりも極端であるため、最もリスクが高いと考えられます。
米国が安全保障に関する海外支出の一部を撤退するという脅威を受けて、欧州諸国が防衛支出を増加させる必要性が生じていることが、債券市場と金利見通しに大きな変化をもたらすものと見ています。ウクライナが焦点となっており、欧州の指導者たちは、米国が安全保障の保証を提供し続けない場合、ロシアのさらなる侵略からウクライナを守ることを約束しています。
安全保障措置
しかし、米国との合意があったとしても、欧州は無条件の米国の安全保障支援を当たり前のこととは考えられません。したがって、GDPに対する防衛支出の増加の約束は、必然的により恒常的な増加をもたらすことになります。これは、支出や借入の増加を見越して、すでに欧州の国債利回りの上昇に反映されています。ドイツ政府が防衛およびインフラ支出を大幅に増加させる意向を発表した結果、ドイツ国債の利回りは3月5日に一日で30ベーシスポイントも上昇しました。政府の借入と支出の増加は、長期的な実質金利の上昇と中立金利の構造的な上昇を示唆しています。
全体的に見て、債券市場においては、より高い構造的な中立金利がよりスティープ化したイールドカーブと高いプレミアムに繋がるなど、速やかな調整が起こるものと見ています。この調整が行われれば、債券資産クラスはより高い利回りと収益の可能性から投資家にとって相対的に良好な選択肢となるでしょう。ドイツが1990年代初頭に再統一の財政ショックを経験した際、1990年に債券利回りは急上昇し、その後3年間高水準にとどまりました。ドイツが再び欧州の政治的展望の大規模な再編の中心に位置する中、投資家は同様の結果に備える必要があるかもしれません。
株式市場の観点からは、年初来から見られる欧州株式のアウトパフォーマンスの傾向は続くと見ています。米国は減税を実施できるかもしれませんが、米国のGDP成長はしばらくの間10年平均成長率に非常に近く、世界最大の経済に余剰能力はほとんどないと思われます。
財政的な刺激策は、大規模の金融緩和を許さないでしょう。一方で、関税や国内政策の不確実性から米国にさらなる混乱が生じる可能性があります。欧州は政府の支出の増加から恩恵を受けることになり、金利は米国よりも低い水準に留まると予想されます。欧州の株式バリュエーションは、米国と比較して上昇の余地が大きいと見ています。
環境は急速に変化しており、非常に予測が困難です。しかし、大きな地政学的変化があったことは明らかであり、これは欧州にとって成長を支えるものとなると考えます(欧州が実際に戦争に突入しない限り)。もし欧州がウクライナで受け入れ可能な和平合意を確保できれば、これが欧州企業の信頼感を高めることになるでしょう。
考えられるアロケーション戦略
不確実性の高まりは、割高な資産、主に米国の成長株と米国のクレジッドへのエクスポージャーを減少させることを示唆しています。政策や政治に関する不確実性は、企業の収益、利益、キャッシュフローに対する不確実性も意味します。財政支出の最大の増加は欧州諸国から来ており、これは防衛、輸送、テクノロジー、電子機器、エネルギーセクターの企業に恩恵をもたらすでしょう。
しかし、市場参加者が欧州における政府の借入増加の影響を消化するにつれて、金利のボラティリティが上昇する可能性があります。より高い中立金利を反映した世界的な長期金利の上昇は、債券市場における調整につながるでしょう。すでに欧州の国債利回りの上昇が見られます。短期的には、投資家は特に自国通貨での変動が少ない短期デュレーション債券資産の選好を検討するかもしれません。
ファンダメンタルズの観点では、欧州株式市場は、防衛、安全保障、インフラ支出の増加から恩恵を受ける企業へのエクスポージャーにおいて、潜在的にポジティブな分野であるように見えます。また、米国の成長が停滞しているように見える場合、米国の長期デュレーション債券戦略は潜在的により堅実であると考えられます。一般的に、債券市場は新しい現実を迅速に織り込む一方で、株式市場では収益、利益、キャッシュフローへの混乱はより長引く可能性があります。現時点では、慎重さを保つことが重要と考えます。
パフォーマンス等のデータの出所:LSEGワークスペース・データストリーム、ブルームバーグ、アクサIMグループ。特に記載がない限り、2025年3月6日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。また、記載内容は、特定の金融商品への勧誘や推奨を意図したものではありません。
(オリジナル記事は3月6日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
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