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サステナビリティ

EUタクソノミー:気候に関する新しい規則についてのQ&A


1-EUタクソノミーの概要とその必要性

EUタクソノミーは、欧州連合の新しい法令であり、企業や投資家が「気候に優しい(クリーン)」と主張できる経済活動を具体的に分類しリスト化したものです。投資家の観点からは、企業分析においてタクソノミーに沿った事業活動の割合を確認することが可能となり、より多くの情報を基に企業間比較を行うことができるようになります。

グリーン・サステナブル投資の分野では、環境・社会・ガバナンス(ESG)要因に関連するデータの収集と分析において大きな進展がありました。これにより、気候変動リスクを含むESGリスクに基づいて企業を評価し、低炭素社会の実現に貢献する企業を特定した投資商品の開発につながってきました。

それでも、金融業界では、企業の事業活動が将来のネットゼロ経済に本当に貢献しているかどうかを判断するための、確固とした基準がないままでした。EUタクソノミーは、このギャップを埋め、また、環境関連の野心や表現が実際の行動や結果と一致していない「グリーンウォッシング」の排除の一助となることが期待されます。

2-EUタクソノミーの仕組みについて教えて下さい。

EUタクソノミーは強制力のある規制ですが、タクソノミーに沿った収入と資本支出の開示という観点からのみです。企業がタクソノミーに沿った事業活動の比率を高めることや、投資家がその比率が相対的に高い企業を選好することへの強制力はありません1 。しかし、EUが2050年までにカーボンニュートラルな経済を実現するという目標を追求する中で、これらの開示が企業や投資家の意思決定の枠組みを作り、影響を与えていくことが期待されています。

EUタクソノミーは、情報開示に基づく2つの規制と連動するように設計されています。 (1) 「企業のサステナビリティ報告に関する指令」は、社会的要因と環境的要因を組み合わせたもので、全ての上場企業に適用されます。 (2) 「サステナブルファイナンス開示規則 (SFDR)」は、金融機関の持続可能な商品の説明方法を規定しています2 。EUタクソノミーの下、アクサIMや他の資産運用会社は、投資商品の「クリーン」度合をお客様に開示することが求められています。

事業活動が「タクソノミーに沿ったもの」と認定されるためには、以下に示す6つのEU環境目標のいずれかに実質的に貢献し、他の5つの目標に大きな害を及ぼしていないことが必要です。各目標に対するこれらの用語の詳細は、規則の本文に記載されています。また、活動を認定するためには、最低限の社会的セーフガードを満たし、技術的な審査基準に適合していなければなりません3

3-環境目標への「実質的な貢献」はどのように評価されるのですか?

規則の全文には、個々の事業活動において何が「実質的」であるかの具体例が示されています。一般的には、カーボンニュートラルであることと、地球の気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃以内に抑えることに沿ったものであることが重要とされています。

これは、環境に与えるインパクトが小さい活動だけでなく、再生可能エネルギーのようにインパクトの大きい活動の代替となりえる活動も含まれます。また、廃水処理のように他の活動による影響を軽減したり、炭素吸収源として機能する湿地の復元など、プラスの環境貢献ができる活動も含まれます。

また、この規制では、間接的に「実質的」度合を満たす2種類の活動も特定されています。一つは、過渡的な活動であり現在のところ実行可能な低炭素代替案がないものの、関連業界ではベスト・イン・クラスであることが証明されている事業です。このような活動は、低炭素の代替手段を妨げず、炭素集約的な資産を「固定化」しない場合にのみ認められます。二つ目は、風力タービンのブレードを製造している企業など、他の場所で実質的な効果をもたらす活動を行う企業も対象となります。

4-EUタクソノミーはどのように展開されるのですか?

EUタクソノミーは2020年7月に正式に施行され、2022年1月から上記のEU環境目標のうち「気候変動の緩和」と「気候変動への適応」の開示が義務化されました。残りの目標に関する報告の義務化は、2023年1月に実施される予定です。

EUタクソノミーは当初、欧州における温室効果ガス(GHG)直接排出量の約80%を占めるセクターのうち、上場企業の約40%の経済活動が対象となります4 。タクソノミーの中身は今後進化していくため、この対象範囲は時間の経過とともに拡大することが予想されます。また、炭素集約型企業にとって不可欠な移行プロセスの資金調達をどのように反映させるか、ソーシャル・タクソノミーの開発を同時進行させる必要性など、解決すべき課題も残されています。

欧州委員会が発表した、企業活動と投資ポートフォリオの整合性に関する当初の試算は、タクソノミーが進化していくことが強調されていました。同委員会によると、企業活動と投資ポートフォリオの整合性は1%から5%の範囲にとどまる可能性がありますが、EUグリーン・ディール(2050年までにネットゼロを達成するという目標を支援する一連の政策イニシアティブ)の実施により、この割合は「大幅に増加」すると予想されています。

5-EUタクソノミーでは、化石燃料や原子力をどのように扱われますか?

化石燃料および原子力の扱いについては、規則が形成されていく中で、議論の一つになっていました。あらゆる形態の石炭と石油はタクソノミーに沿った分類には含められませんが、欧州委員会は2022年2月、原子力と天然ガスを「明確かつ厳しい条件の下で」含めることを認める提案を発表しています。これは、実行可能な代替技術が確立されていない部門のために設けられた「過渡的活動」区分に分類されることに基づいています。この提案は今後数カ月間、欧州議会および加盟国理事会で精査されますが、採択される可能性はかなり高いでしょう。

原子力と天然ガスが含まれることでEUタクソノミーの信頼性に影響が出るのでは、という一部投資家グループの見解もありました。しかし、原子力も天然ガスも、世界がより炭素集約的なエネルギー源への依存を減らしていく中で、ネットゼロへの道筋をスムーズにする中間的なエネルギー源であると考えられています。欧州委員会は、原子力と天然ガス事業について、第三者検証の要件を含む、より厳しい開示要件を導入することで、この懸念に対処しようとしています。

より広範には、石油・ガス会社はタクソノミーに沿った活動や投資を通じて評価を得ることができます。例えば、大手エネルギー企業が太陽光発電による収入の割合を大幅に増加させた場合、これはタクソノミー開示に反映され、投資家はその進捗を同業他社と比較できるようになります。

6-アクサIMは、EUタクソノミーの開示をどのように実施しますか?

当社のEUタクソノミー開示プロセスは時間をかけて進化していくものとなりますが、当規則は資産やポートフォリオをより評価し易くするための仕組みになると考えています。当社では、企業分析において3段階アプローチを採用しています。まずタクソノミーの適用範囲に含まれる活動から得られる収入の割合を特定し、それらの活動に対して「実質的貢献度」を計算し、最後に他の環境目標に対して大きな損害を与えていないかどうかを評価します。これにより、企業の事業活動のうち、タクソノミーに沿った活動の割合を算出します。

このプロセスは、ポートフォリオ・レベルまで広げることができます。EUの6つの環境目標すべてにわたり、当社のタクソノミーと整合したエクスポージャーをお客様に報告することが可能となります。

EUタクソノミーは多くの側面で進化を続けますが、当社のタクソノミー開示に関する報告も、時間とともに進化していきます。例えば、環境目標を考慮する運用戦略のうち、SFDRで最も厳しい「第9条」に分類されているものについては、2021年のファンド年次報告書内でタクソノミーの整合性を開示しています。そして、2023年からはSFDRの定期報告書内でタクソノミーの整合性を報告し、また、SFDR第8条・第9条に分類された運用戦略については同年のESG報告書でも報告します。

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