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テクノロジー

米国の産業政策、成長とイノベーションの新たな波を先導

  • 2023年4月7日 (7 分で読めます)

キーポイント

  • 米国の最近の法律は、インフラ、クリーンエネルギー、テクノロジー、自動化、輸送などの主要分野への投資にとって新たな時代を切り開くと思われる

  • 新法の下で、米国企業は基本的に国内製造に対する優遇措置を受けており、これが事業活動を加速するだろう

  • インフレ抑制法やCHIPS法は数年にわたり、米国株式に非常に強力な追い風をもたらすと当社は予想する

地政学的な不確実性、未だに高水準のインフレ、引き締め局面の金融政策という現況にありながら、テクノロジーの進歩およびネットゼロへの道のりは明るい展望を示しています。

産業革命の次の段階は、より良く、よりクリーンで、より持続可能な長期的成長を実現するように見えます。科学および常に拡大するテクノロジー開発が、すでに存在する構造的トレンドの推進と加速を支えるでしょう。 

米国の最近の一連の法律は、インフラ、クリーンエネルギー、テクノロジー、自動化、輸送などの主要分野への投資に対して、新たな時代の到来を告げるゲームチェンジャーのようなものと考えられつつあります。  

2022年8月にバイデン米大統領が署名した「CHIPSおよび科学法」は、半導体生産などの米国テクノロジーの増強と「リショアリング(製造業の国内回帰)」のために2,800億ドル(約36兆円)の投資を行います。

ホワイトハウスによれば、同法は米国が今後も「ナノテクノロジー、クリーンエネルギー、量子コンピューター、人工知能を含めた明日の産業のリーダー」であることを保証するために、「米国の製造業、サプライチェーン、国家安全保障を強化し、研究開発、科学技術に投資する」ものです。1

ネットゼロ競争における米国の加速

また、2022年に8月に施行されたインフレ抑制法(IRA)は、米国に大きな変化をもたらすと考えられ、世界銀行は、これが産業の脱炭素化の経済に劇的な変化をもたらすと予想しています。2

米国が主導権を握ると思われていなかった分野で、米国は加速しています。遅れをとっていると見られていた米国は、政府の政策とそれに続く経済的機会に後押しされ、今や脱炭素社会の重要なリーダーとなる可能性があります。

そしてこれら2法を下支えするのが、2021年11月に成立した「インフラ投資・雇用法」です。1兆ドルに上るこのパッケージは、高速道、道路、橋梁を改善し、都市の公共輸送システムおよび鉄道ネットワークを近代化する目的に使用されます。3

これら3法の優先事項は絡み合っており、近年に見られた貿易戦争を考慮すると、確かに保護主義がこれに関連しているように思えます。しかし3法を総計すると、今後10年間に2兆ドルに上る米国政府の支出が盛り込まれています。4

3法の導入と施行が、複数の産業やセクターに劇的な影響を及ぼす可能性があることは明らかです。この結果として、多大な投資機会が広がりつつあります。

よりクリーンなエネルギー、よりクリーンなテクノロジー

民間部門および投資家 が炭素削減の困難な産業を脱炭素化する上で、インフレ抑制法がいくらかの助けとなると当社は予想しています。同法はクリーンエネルギーへの投資、医療費の削減、税収増を目的に、数十億ドル単位の新規支出と減税措置を計画しています。目標は米国の炭素排出量を2030年までに著しく削減することです。

マッキンゼーによると、インフレ抑制法による税額控除のおよそ430億ドルが、電気自動車(EV)、エネルギー効率の高い家電製品、屋上のソーラーパネル、地熱暖房、より安価な家庭用蓄電池の生産による排出量の削減を目的とします。5

資金は債務保証、税制上の優遇措置、助成金の組み合わせから捻出されます。このうちクリーンな電気と送電に充てる割合が大きく、クリーンな輸送もまた潤沢な資金支援を受けると見られています。 

約4,000億ドルの立法パッケージの規模から見て、今後数年間にわたりクリーンエネルギーおよびクリーンテクノロジーに大規模な投資が促され、それが潜在的な長期的投資機会の波をもたらすと思われます。6

企業が、およそ2,160億ドルに上る税額控除の最大の受益者になるでしょう。これがクリーンエネルギー、輸送、製造への民間投資に拍車をかけると予想されます。7 たとえば、リチウム電池の製造およびリサイクルへの投資は税額控除の主要対象となるため、この投資の多くと並行して進捗する、重要なテクノロジーの全般的なリショアリングの一部となると見られています。

これを総計すると、風力や太陽光などの再生可能エネルギー技術、エネルギー効率および貯留、ひいてはそれらを支えるより広範なインフラおよびサービスに対する強力な追い風に、さらなる推進力を提供するでしょう。

バイデン大統領は特に、2030年までに30ギガワットの洋上風力発電を実現するために数万人の新規雇用目標を掲げています。これは、新しい雇用を創出しつつ、1千万世帯にクリーンエネルギーを供給するのに余裕のある発電量です。8

しかし、米国がよりクリーンなエネルギーへの移行に向けて標的かつ支援の対象としているのは、企業だけではありません。ホワイトハウスによると、クリーンエネルギーやEVの税額控除を利用する世帯は年間1,000ドル以上を節約でき、ヒートポンプやその他のエネルギー効率の高い家電製品を購入する世帯には14,000ドルに上る直接還元があり、これは家計にとって年間最低350ドルの節約に相当します。

さらには、新たに約750万の世帯が屋上にソーラーパネルを設置の際に30%の税額控除があり、システムの寿命全体で9,000ドル、年間最低300ドルの節約になります。9

自動化および製造業における投資の拡大

半導体はあまねく存在しています。産業システムや機械類に欠かせない部品であり、冷蔵庫やスマートフォンからロボット、そしてEVや再生可能エネルギーなど気候変動に対処するテクノロジーに至るまで、あらゆる場所で見られます。

半導体はまた、米国が先端の半導体技術や高度な生産設備の中国への輸出に対して規制措置を取ったことからも明らかなように、政治的に論議をかもしているコモディティでもあります。10

米国は半導体設計の最先端を行く一方で、世界的な半導体製造の12%を占めるに過ぎません。製造の大半であるおよそ75%が東アジアに集中しています。11

半導体はこのように大規模なビジネスです。半導体不足による2021年の米国のGDP成長率の損失は2,400億ドルに上ったと推定されています。12 世界の半導体市場の売上は2021年に6,000億ドルに上り、マッキンゼーの分析では2030年までの成長率が年に6~8%と推定されるため、同年までに1兆ドル産業となる可能性があります。13

2022年のCHIPS法は、米国内の半導体研究および製造を活性化するための新たな資金527億ドルを提供するものです。米国政府は国内の半導体製造能力への投資の後押しを図っています。

さらに研究開発の活発化および、特に人工知能、量子コンピューター、ナノテクノロジー、クリーンエネルギーに向けた最先端テクノロジーの商品化も目指しています。米国の多数の半導体製造企業が生産設備への投資拡大をすでに発表しており、さらに海外メーカーの直接投資も期待されています。

再活性化の背景

自動化業界および製造業に対するCHIPS法の潜在的影響は著しいものがあります。新たなテクノロジーは、社会におけるロボット使用が効率、精度、安全性を向上させることを意味します。これは大きな成長機会であり、私たちはまだこの長期的な破壊的トレンドの初期段階にいます。

たとえば、米国企業は従来、半導体に年間平均60億ドルを費やしていましたが、現在では約210億ドルに上ります。これは、国内で半導体を製造するために25%程度の助成金を出しているCHIPS法が理由です。14 半導体の製造工場建設にはおよそ3年かかるため、この支出は続くでしょう。そして米国企業は半導体製造において多額の投資を行っており、総合的な投資額は年平均490億ドルから、現在ではおよそ1,200億ドルに膨らみました。15 この目覚ましい急増は、インフレ抑制法およびCHIPS法が関わっているでしょう。ここで重要なことは、この設備投資は政府支援を受けているため景況にそれほど左右されず、プロジェクトが長期的となることから、成長が長期的に支えられるということです。

さらに米国の機械類は更新が遅れていたため、これらの立法措置は投資や資本支出にとって良好な環境を作りました。16

こういった法律は究極的に、トランプ前米大統領のこれまでの状況を徹底的に見直すことになりました。前大統領は関税を引き上げたり新たに課することで、国際的な反応があり、不透明性により経済活動が大きく減速しました。しかしバイデン大統領の新法の下、企業は基本的に国内製造に対する優遇措置を受けており、これが今度は事業活動を加速させるでしょう。

EV売上が急増軌道に

こういったすべてが、電気自動車(EV)業界に非常に大きな影響を与えつつあり、しばらくはそれが続きそうです。EV価格が下がり、バッテリー技術が改良し、消費者が環境トレンドに注目するにつれ、EVに対する消費者の関心が高まりつつあります。おそらく、あまり理解されていなのは、自動車やバッテリーの製造に必要な巨額投資であり、今日決定される設備投資が12~24カ月後に生産されるEVに向けてのものであるため、投資が今すぐ開始される必要があります。

さらにはインフレ抑制法の一環で、米国民は新車EVを購入する際に最高7,500ドル、中古の購入時に4,000ドルの税額控除があります。

調査によれば、EV市場の売上は今年4,576億ドルに達し、年率17%超で成長していることから、市場規模は2027年までに8,580億ドルに上ると推定されています。17

EVと自動化および半導体業界の間には強い結び付きがあります。内燃機関自動車はおよそ人の手で製造されてきましたが、EVおよびバッテリーは自動化およびロボットによる製造だからです。それに加え、車両が内燃機関から電気仕様に移行するにつれ、半導体の使用が著しく増加します。

内燃機関車両が1台平均およそ500ドル相当の半導体を搭載しているのに対し、EVではそれが1,000ドルであり、テクノロジーの開発に伴い1,300~1,500ドルに近づくことが予想されています。そして、2022年には自動車売上の約8台中1台が電気自動車でしたが、2027年までに3台中1台または半数が電気自動車となると予想されています。18

より明るい未来

バイデン政権により整備された法律は、国内の製造基盤強化という米国の強力な意思表示です。それはまた、テクノロジーにおける米国のリーダーシップを保持し、防衛能力を高め、サプライチェーンを強化するという面で、米国が戦略的と考える産業を対象としています。

パンデミックにより、複数の産業(半導体や医薬品製造など)でサプライチェーンの弱点が露わにしました。国内生産の拡大および経済活動のリショアリングの奨励は、これに向けた対応策です。

そして、インフレ抑制法の全体的な数字は印象的ですが、極めて重要な点は、これが本質的に無尽蔵であることです。EV優遇措置やゼロ炭素電力のように、その要素の多くが「上限のない」税額控除です。したがって控除の条件が満たされる限り、米国政府はそれを受け入れるでしょう。政府の支出可能額に対して上限が設定されていないからです。19

巨額の公的資金が投入されていること考えると、将来的にはこれが数年にわたり、米国株式にとって非常に強力な追い風となる可能性があると当社は見ています。

(オリジナル記事は4月3日に掲載されました。こちらからご覧ください。)

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