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Investment Institute
視点:CIO

あらゆるものがグリーンに

  • 2024年3月6日 (7 分で読めます)

国連などのデータを見ると、世界の気温は依然上昇を続けています。そして、集約農業や開発によって自然生息地は悪化しており、気候が関連する災害は深刻度を増しています。持続可能性な未来に向かって移行するための支援や資金調達の必要性は、かつてなかったほどに高まっていると思われます。好ましいニュースと考えられることは、持続可能性を中核の価値として取り入れる政府や企業、投資家とともに、社会がおおむねこうした方向に向かっているということです。この動向により、投資機会が大きく増していると見ています。例えば、グリーンボンドの発行残高(額面)は過去5年で5倍に拡大しています。脱炭素を推し進め生物多様性の喪失を食い止める新しい技術が次々と開発されています。また、こうした開発は、株式市場の投資家に投資機会を与える新しいビジネスモデルを生み出しています。人工知能(AI)の発展と同様に、グリーン化(経済成長を達成しながら、持続可能で環境にやさしい経済に向かうこと)に向けた進展は今後も続くものであり、この時代の重要な投資テーマの一つと見ています。


一方通行 

世界の一部の地域では環境・社会・ガバナンス(ESG)投資に対し反発が起こっており、また、持続可能性に重点を置いた投資戦略の最近のパフォーマンスが市場の期待に達していないと思われる状況にもかかわらず、グリーン化に向けた進展は後戻りできないと見ています。社会は、このままでは経済成長を続けることはできないことを、認識していると思います。気候変動による生命のリスクや自然生息地の悪化があまりにも大きいと考えられるからです。経済活動はもっと持続可能性を高める必要があるでしょう。このことは、規制の進化や、現在および将来の事業計画の変化にすでに表れています。これは一方通行の道筋であり、ドナルド・トランプ共和党大統領候補が米国大統領に再選される可能性さえも、この進展を完全に頓挫させることはないと見ています。再生可能エネルギーの価格は低下傾向にあり、バッテリーのエネルギー効率の改善が売上の向上につながっています。そして、企業は、供給網の短縮、より持続可能な素材、より健康的な食品に対する顧客の需要を満たすことに価値を見出しています。 持続可能であることは、外部コストの削減に重点を置くことにつながっている為に、経済的にも理にかなっているのです。

近年の規制負担の増加を考えると、特に金融セクターでは持続可能性をめぐり疲労を感じていることは理解できることでしょう。だからといって、持続可能性に向けた長期的なトレンドが変わるわけではありません。筆者は、数カ月前から英国のウェルスマネジメント分野の顧客と話をしてきましたが、サステナブル投資戦略(経済活動や社会の持続可能性に着目した投資戦略)の選択肢は富裕層向け戦略全体の中で占める割合が高まっているようです。若年層の投資家は、年金基金や保険会社と同様に、より持続可能な戦略を求めています。今週、筆者は、伝統的なグローバル総合債券指数の一部をグリーンボンド指数に代えて利用することについて、運用コンサルタントと討議を行いました。筆者としては、ESGや持続可能性への投資戦略を主流である従来の投資戦略とは別のものとして考えるのは間違っていると考えています。つまり、世界が経済活動をESG等に適応させ地球への悪影響を小さく抑える道を歩んでいるため、こうした投資は今や主流です。ESG等への適応の道筋は、大きな投資機会をもたらすと見ています。生成AIの発展とともに、世界経済のグリーン化は、この時代の重要な長期的投資のテーマだと考えられます。

アクティブ戦略の機会 

持続可能性とAIに共通しているのは、どちらも今後も続く時代の趨勢であり、ビジネスに破壊的影響を及ぼす可能性があるということです。つまり、業務モデルを変える必要があり、投資が必要であり、また、それを効率的に変更して実装する必要性を認識している企業の経営陣がいる企業は他の企業よりも利益を得る可能性があります。投資の視点から見ると、ESG疲れや移行に対する政治的支援の減少、テクノロジー企業の市場価値がバブルのようなバリュエーションを示していることなど、はっきりしない理由を持ち出す人もいると思われます。しかし、いずれにせよ、10年後、15年後に、世界はネットゼロの達成に近づいていないとか、私たちの日常生活や消費行動の多くにAIが関係していないと納得するのは難しいでしょう。結果として、こうした発展によって、アクティブ投資戦略の機会が膨らむことになると見ています。

持続可能性計画はあるのか?  

独自の持続可能性の枠組みを開発する企業が増えています。全般的に、この枠組みには、再生可能エネルギー利用の増加や、エネルギー効率の向上、クリーンな輸送手段への変更、廃棄物の削減を通しての環境への影響の軽減、リサイクルの改善、持続可能性の高い包装の使用等に関する目標などを含みます。多くの産業企業は、より効率的な水の使用と製造過程における汚染の排除に注力する必要があります。新しい不動産開発はスマート・ビルディング(保守管理の効率化や、省エネ、利用者の利便性向上などを実現する建物)の考え方に基づいており、古い建物はよりエネルギー効率の高いものになるように改造されていきます。そして、もちろん、社会的な側面もあり、特にグローバル・サウス(南半球に多く位置する新興国及び発展途上国のことであり、北半球に多い新興国への対比で使われる)では、工業化と天然資源産出の進展が衰えず、地域社会に悪影響を及ぼしているところもあります。

持続可能性計画が年次報告書で概説され、企業が顧客や、サプライヤー(モノやサービスを提供する企業)、規制当局、投資家と行う対話の主要な部分をこの計画が占める事例が増えています。計画は、目標と主要業績評価指標(KPI)とともに詳細に監視されます。ネットゼロを達成する分野では、企業は炭素削減計画に関する科学的方法論に基づいて認証を受けることができます。この認証により、これらの計画に資金を提供するための資本を利用できるようになります。それは企業と投資家の共生を意味します。持続可能性は効率性につながるべきものと考えられますが、企業は何よりも競争力を維持するために持続可能性に適応する必要があり、一方、投資家は資本と将来のリターンを守るために持続可能なビジネスモデルに投資する必要があり、投資したいと考えていると思います。


マネーを追う 

グリーンマネー(グリーン化に関わるマネー)の動きを追うことは興味深いことがあります。例えば、企業が、グリーンボンドを発行して債務調達額を増額しようとするときに、債券の持続可能性に関する適格性は、グリーンボンド・フレームワークや第三者の意見によって保証されます。グリーンボンドは、企業がその調達資金を事業モデルの持続性を拡大することに活用することになるので、多くの債券投資家にとってインパクト投資(財務的なリターンの獲得を目指すと同時に、環境や社会にプラスのインパクト(影響)をもたらすことに貢献することも目指す投資)の対象として選択する証券です。これによって調達された資金は、既存の資産の借り換えや、持続可能性の目標達成に役立つテクノロジーやサービスへの新たな投資に充てられます。こうして、グリーンボンドの発行による調達資金の一部ないしはすべてが、サプライヤーの売上になります。再生可能エネルギーへの転換やエネルギー効率の向上、または汚染や廃棄物の削減のために使われる資金はすべて、機器やデジタル化サービス、サプライヤーの雇用等のために使われます。しばしば、購入対象が革新的な技術である場合、サプライヤーが市場のマーケット・リーダーであることがあります。そうすると、持続可能性目標を達成するために投資する企業が増えるにつれて、こうしたサプライヤーの商品やサービスの採用が増加して、売上が大きく伸びることがあります。株式投資戦略の投資機会が比較的明確に見いだせる為、クリーンエネルギーや生物多様性保護などのテーマに焦点を当てたインパクト株式投資戦略が増加しています。

グリーンボンド 

グリーンボンドの経済性と投資機会を理解するためには環境保護主義者である必要はありません。グリーンボンドへの投資家は、他の債券への投資と同様に利金を受け取ります。ICEグリーンボンド指数の時価総額は額面金額で4年前の3億7,700万ドルから現在では1. 6兆ドルに達しています。現在(執筆時)の償還利回りはドル建で4.0%、デュレーションは6.6年、平均格付けはA1です。つまり、グリーンボンドは、投資された資本が持続可能性の為に使われるという利点を持つ、市場が成長を続けている高格付けのクレジット資産クラスです。リターン属性は、従来の広範なグローバル投資適格債指数と似通っていますが、過去5年を見ると、金利上昇局面を含んでいるためにデュレーションが比較的長いことからリターンは小幅に下回っています。しかし、昨年の債券市場回復の期間にはグローバル社債指数のトータルリターンと同様の水準となりました。

新しいもの 

グリーンボンドは、投資家にグリーンへの移行と関わる機会を提供し、グリーン化を高める為に資金を費やしているビジネスからリターンを獲得する機会を提供します。しかし、発行企業の成長については、調達資金がどこに使われていて、どの企業が売り上げを伸ばしているのか、見ていく必要があると思います。株式市場は、こうした成長の機会を提供すると思います。運用業界では、こうした投資を“インパクト投資”と総称しています。投資先の企業は、持続可能な形で自身の事業を行い、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関連して表明されている環境や社会的課題についてプラスのインパクトをもたらす、または、他の企業や人々がSDGsを達成することができるようになるモノやサービスを提供する企業です。エコノミスト誌2月17日版に、製鉄、セメント、化学生産などのセクターについて、製造プロセスの電化や、脱炭素化するために高温熱を生成するために開発されている新技術に関する記事が掲載されていました。多くはまだ初期段階にすぎませんが、こうした技術が育ってくることにつれて、数年後には上場株式市場に魅力的な投資機会が広がっていく可能性があると考えます。


進展を過小評価するべきではない  

ネットゼロを達成するまでには長い時間がかかると思われます。ネットゼロに達すれば気温上昇が1.5℃(産業革命以前の気温と比較して)を超えることを防げるかどうかも明らかではありません。しかし、世界はそれを目指して挑戦し、そして工程表も明確になっています。ネットゼロに向かって構造変化が求められ、この進展は正当な理由(技術が安くなり、移行が経済的に魅力的になる等)や悪い理由(例えば、炭素税の賦課を増やして気候変動に対応する必要がある等)によって頓挫するよりも加速する可能性が高いと思います。当社グループの資産運用研究所の外部アドバイザーの一人であるNigel Toppingは、新しいグリーン技術のコストと生産性の面での進展は幾何級数的なものだと一貫して述べてきました 。

移行が進むにつれて、グリーンボンド市場は成長し、発行体の数も種類も分散が進み、グリーニアム(通常の社債に比べてグリーンボンドの発行コストが低下すること)がもっと明確になり恒久的な属性になる可能性もあります。グリーンボンド市場が拡大すればするほど、ネットゼロに必要な持続可能な資産への投資が増え、その結果、進展に不可欠な技術や機器、サービスを提供する企業の売上を押し上げ、株式を支援することにつながると考えられます。つまり、投資家は債券と株式の両方の成長機会から恩恵を得られる可能性があるということです。グリーン成長・インカム戦略とでも呼びましょうか。

繰り返し唱える 

もちろん、これは新しいことではありません。サステナブル投資業界はすでに確立されており、当社グループのような運用会社は持続可能性を事業の中心に据えています。当社グループの目標の一つは、今後数年間で投資先企業からの二酸化炭素排出量を大幅に削減することです。また、環境にプラスの影響を与える活動に投資することに焦点を当てた生物多様性戦略もあります。当社グループが行うすべての投資は、期待される財務的リターンと持続可能性の両面から見て意思決定を行います。市場はサステナブル投資の時代に突入していると見ています。しかし、やるべきことはまだまだたくさんあるので、時々それについて意見を言うことは悪いことではないと考えます。なぜなら、パンデミックと世界的な安全保障とエネルギーへの懸念の高まり以来、この価値観は攻撃にさらされているからです。

気候変動の抑制と環境保護に重点を置いた、より持続可能な未来への移行が続いていくことは、今後数年間でより多くの資本が明確に持続可能な投資に投入されることを示唆していると見ています。これにより、経済のグリーン化に関連する金融サプライチェーン全体に投資機会が生まれます。サステナブル投資戦略が主流となり、一般的に投資判断には財務基準と持続可能性基準の両方が組み込まれるようになると思います。これはすでに投資可能な資産の質にプラスの影響を与えていると言えるでしょう。社債への投資の判断は、従来は発行体の財務力と返済能力を評価する信用格付けに大きく依存してきました。現在では、ESGリスクと持続可能性リスクについても見ていきます。また、投資判断におけるガバナンスの強化は、社債ポートフォリオの質の向上と堅実さにつながると考えます。さらに、私たちがサイクルのどの段階にあり、より環境に優しい未来への道のどこを歩んでいるかを考えると、社債が重要な資産クラスであることが認識できると思います。社債投資家がグリーンボンドに投資しないとしても、現在の社債ポートフォリオは、5年前や10年前よりも優れた持続可能性属性を持っていると考えられます。

パフォーマンスはサステナブル投資に報いるべき

多くの投資家は、ESG関連資産のパフォーマンスに懸念を抱いていると聞きます。例えば、エネルギーセクターをアンダーウエイトにした株式ポートフォリオが2022年に他の戦略と比較してアンダーパフォームしていたことを考えると、これは妥当なことと思われます。このエネルギーショックは、ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う天然ガス供給の混乱によって引き起こされた一過性のものでした。しかし、その対応として起こったことは、再生可能エネルギーの導入を加速させることでした。今週(執筆時)筆者は、スペインはエネルギー生成に占める再生可能エネルギーの割合をほぼ100%に達成したというメディアの記事を読みました。また、ドイツはロシアから供給されるガスからの脱却を余儀なくされたことにより、エネルギー効率を改善しています。重要なことは、市場はショックや価格動向を考慮して進化し、これらが再生可能エネルギー生産の根拠(ひいてはサプライチェーンの構成要素に対する需要)を補強しているということです。

投資哲学的な論拠は明確に規定できると思います。つまり、ビジネスモデルをより持続可能なものにシフトする企業は、長期的に利益を得ることができると考えられます。エネルギーコストを削減し、より効率的なプロセスを確立し、懲罰的な規制の適用を受けにくくなります。需要側では、顧客は持続可能な出所を持つ商品やサービスを好むでしょう。投資家は既に、持続可能な資産に対してより良い条件で資本を提供することを選好しています。持続可能性をめぐる活動の多くは初期段階にあり、開発して市場に投入すべき技術はまだまだたくさんあるため、投資家は長期的な視点を持つ必要があります。

市場データの出所: Refinitiv DataStream、Bloomberg、2024年2月29日現在

過去の実績は将来の結果を示すものではありません。

(オリジナル記事は2月28日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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