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Investment Institute
視点:CIO

重力がかかっている (現実に引き戻されそうに、重力がかかっているという、文章の一部)

  • 2023年12月25日 (7 分で読めます)

米連邦準備制度理事会(FRB)の2023年最後の政策決定会合の結果を受けて、市場では利下げ期待が高まりました。 債券と株式は価格が上昇し、2023年最後の四半期の投資パフォーマンスは良好なものとなりました。 しかし、著者は、ここ数週間で、2024年に期待される市場リターンの一部が奪われているのではないかとの懸念も感じています。最近のキャッシュの状況はそれほど優れた投資先ではないように見え、もしキャッシュ金利が低下していくのであれば、世界の債券市場や株式市場への投資がさらに増えるかもしれないと思われます。利回り、ボラティリティ、リスクプレミアム(リスク性資産の期待収益率から無リスク資産の収益率を引いた値)はすべて低下してきました。つまり、 市場は今のところ強気相場にあると思われます。一方、未知の要素は、市場が現実に戻る必要があるかどうかという点にあると見ています。


債券の賑わい 

債券利回りは12月に入っても低下を続けています。 FRBが12月13日の会合で金融緩和政策に舵を切り始めたように見えたため、市場はそれを好材料として受け止めました。 FRBはこの会合で金利を据え置きましたが、会合で示された予測によると、政策金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)は現在の5.5%から2024年には4.6%に低下するとの当局者の予想中央値が示されています。 これは、9月20日の前回FRB会合後に公表された予想中央値と比較して50ベーシスポイント(bp)引き下げられました。 記者会見でのパウエルFRB議長のコメントも同様に重要と思われます。会見では、パウエル議長は2024年利下げという市場の期待を押し戻す努力をしたようには見えませんでした。議長は、FRBは景気サイクルのピークにあり、これまでに累積された金融引き締めが経済に与える影響を引き続き注視すると示唆しました。そして、その発言の裏には、過度に抑制的な政策をあまりにも長期間維持することは避けたいとの認識があったのではないかと思われます。このことは、市場ではハト派的であると受け止められ、市場の価格が上昇しました。

FRBからの反発は見られない

金利の方向は「高く、長く」から「高い状態はそれほど長くは続かない」へと変わったと思われます。 市場は、最初の利下げが2024年3月に実施されることを織り込んでおり、FF金利は年末までに3.75%近くまで低下、175bpの緩和となると見ています。 市場の予想が正しいとすれば、FRBはFF金利を8~9カ月にわたり今回の利上げサイクルの最高値を維持することになります。 この期間は歴史的な基準からすれば妥当な長さと思われますが、今年初めに「テーブルマウンテン」の例え話(頂上が平らに広いテーブルマウンテンのように、金利が高い水準で長期に続くこと)のきっかけとなった2006年から2007年のピーク時の15か月には及ばないことになります。 これはまた、インフレ率が目標にまで低下し、経済がリセッション(景気後退)を回避することで、米国経済がソフトランディング(軟着陸)する可能性がはるかに高まっていることを意味すると見られます。 金融状況は緩和しつつあると思われます。 これがインフレの再燃を引き起こすのではないかという懸念もあるようですが、成長を刺激し、2024年の見通しに含まれる米国の実質国内総生産(GDP)成長率に関する当社グループ予想1.1%を上回る可能性も同様にあると見ています。


多くのことを達成 

FRBは、インフレが引き続き軟化すると考えており、また、経済成長の鈍化や労働市場の緊張のある程度の緩和に言及しました。 今後は、経済データが軟調を示す場合には、市場がそれを取り上げて、利下げ期待をさらに強めていく可能性があります。 利下げの時期に関しては、FRB当局者等から市場の期待に対し何らかの押し返しがあるものと思われますが、FRBとしても利上げが終了し、次の段階は金融緩和であると考えていると見ています。しかし、市場の勢いを変えるのは難しいと思われます。 そのため、投資の観点からすると 2024 年は少し困難な状態になる可能性があります。 債券市場は、著者が2024年に予想していた状況をすでにある程度実現してきていると思われます。

10年国債利回りが10月23日にピークに達して以来、執筆時点でブルムバーグ米国債指数のトータルリターンは約6%近くとなっています。 英国国債の場合は約7%強、欧州国債の場合も約6%となっています。 世界の投資適格社債のリターンは約 7% です。 これらは、当社グループが予測していた2024 年のリターンの水準に近づいています。市場が債券に投資していることは心強いことと感じています。ピーク時の5%という利回り水準は「割安」と思われる水準でした。しかし、現在の4%割れの利回り水準では、今後の期待リターンを縮小する必要があると考えられます。

緩和、どれくらい? 

市場は金融緩和への期待という点では行き過ぎているのではないかと見ています。または、市場は、少なくとも米国経済がソフトランディングする場合の金融緩和の大部分は織り込んでいると考えられます。 パウエルFRB議長は、実質金利を注視しており、高すぎる状態は避けたいと述べました。 現在の実質短期金利を簡便に計算すると、2.0%から2.5%程度になると考えられます。 これは、2024年の予想経済成長率を上回り、過去40年間の平均も上回っています。 ただし、平均値と比べることは間違った答えを招く可能性があります。 世界金融危機以前は、実質短期金利は平均2%から3%でした。 経済が不況になると、それらはゼロになる傾向がありました。 2009 年以来、ほとんどの期間でゼロを下回っていましたが、ゼロが標準ではなくなる可能性があります。 もし、FRBがインフレ調整後のFF金利、つまり、実質FF金利を1%から1.5%の間に低下させたいと考えていると仮定する場合、2024年のインフレ率が平均2.5%程度になると予想されているとすれば、これは名目FF金利が3.5%から4.0%になると計算できます。 市場の状態はすでに2024年末の織り込みに近づいていると思われます。リセッションによって金利が2.0%にまで低下する可能性もあるものの、現時点ではそれが当社グループの基本シナリオではありません。


今はさらに厳しく

金融政策が緩和されるにつれて、イールドカーブ(利回り曲線)はスティープ(急勾配)になる傾向があります。FF金利が3.5%~4.0%になり、イールドカーブがプラスの傾きの場合には、長期利回りが現状からさらに低下する余地はあまりないと思われます。 合理的な予想では、10年債利回りは3.5から4.0%の範囲に落ち着くと考えられます。 他の債券市場も各地域の中央銀行の影響を受けるものと思われますが、これも米国と同様の状況になると見ています。 市場は、欧州中央銀行(ECB)が預金金利を2.5%に引き下げ、2024年中に150bpの緩和となると予想しています。また、英国について、市場の予想は他市場に関する予想よりも遅れながら、現在では、イングランド銀行(BoE)の基準金利は80~100bpの幅で低下すると予想しています。市場は、政策金利が中立で均衡した長期水準(中立金利)と考えられる水準まで低下することを織り込んでいるものと思われます。

2024 年に向けた焦点の変更  

現在の債券リターンに関する期待という点では、キャリー (インカム、金利収入) に焦点を当てる必要があります。 利回りがバリュエーションの観点から中立的な領域に近づいている場合、債券ポートフォリオからキャピタルゲインを得るのは難しくなります。 私は以前、社債ポートフォリオのインカムリターンがどのように回復したかについて書きましたが、[1] インカムは2024年にはさらに重要になります。一方で、誰もが債券取引に参加しているわけではありません。利回りが2023年10月の水準よりもさらに高くなるのではないかと警戒している投資家はいました。このことは、短期的には追加購入を促す可能性があることになるでしょう。 しかし、2024年の課題は、国債市場が過去2年間で取引された長期債利回りの中間点付近で安定するという予測に基づいて資金を配分することであると思われます。なお、この中間点付近とは、米国債では3.5%~4.0%、ドイツ国債1.5%~ 2.0%、英国債は 3.25% ~ 3.75% です。 さらに追加の課題は、状況が変化したときにどのように適応するかということです。つまり、インフレと再び戦わなければならない場合は債券に対して弱気になり、また、我々が知らない何か(悪い)ことをFRBが知っていることが判明した場合は、債券に強気になるということと考えます。
 


リスクオン?

株式市場については、FRBの政策転換は良いニュースになると思われます。債券利回りの低下は債券と比較した株式のバリュエーションを向上することになると考えられる一方、ソフトランディングへの確信が高まることは、企業業績が市場の収益期待に合致する可能性が高まることを意味すると思わます。 当社グループの2024年のマクロ見通しでは、ソフトランディングが予想されており、企業は依然として経済の名目成長率の鈍化が収益に影響を与える逆風に直面すると考えています。 しかしFRBが金融を緩和すれば見通しは改善すると見ています。 一方、債務借り換えの状況は改善していると思われます。 米国のブルムバーグ5~7年投資適格社債指数の利回りは10月のピークから120bp低下し、現在は2022年末と同じ水準に戻っています。確かに、資金調達コストは過去よりも依然として高いものの、最悪の水準から脱しており、さらに低下する可能性があります。 私は社債、さらに言えばハイイールド債については前向きな見方をしています。 また、株式に関しては、金利環境の影響で悲観的な見方は弱くなっていると思われます。 2023 年の著者の分析の 1 つは、債券と株式の60:40 のポートフォリオが戻ってきており、2024 年には債券と株式のバランスの取れたアプローチが投資家にとって魅力的になるはずだというものです。

良い休暇と 2024 年の良い投資を 

これが、著者の2023年最後の考察です。英国にある資産運用会社は持続可能な開示要件(SDR)に準拠した投資商品を整備する必要があり、これにより、業界に持続可能な資金の流れを促す新たな機会が与えられるものと思われます。経済がさらに好転し、利回りがより安定すれば、グリーンテクノロジーへの投資を更に促進し、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)で提案されたように、世界が化石燃料への依存を減らすのに役立つ可能性があります。 この点に関しては、政治からも多くのことが発言されると思われます。 現在、炭素移行推進派の波が世界中の選挙で勝利することが少なくなっているようです。 しかし、資本の流れには着実な変化があり、グリーンテクノロジーは安価になり、普及力が強くなってきたと思われます。 当社グループは、世界は引き続き炭素移行の道を進むべきであると考えており、2024 年には再び炭素移行が主要な政治および投資テーマとなると考えています。

(オリジナル記事は12月15日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

Refinitiv Datastream、Bloomberg、2023 年 12 月 14 日現在。 過去の実績は将来の結果を示すものではありません。

※ブルームバーグ各国国債指数:ブルームバーグが算出する各国通貨建ての各国債の値動きを示す指数です。

※ブルムバーグ・グローバル投資適格社債指数:ブルームバーグが算出する米ドル建ての投資適格社債の値動きを示す指数です。

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