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テクノロジー

気候変動および生物多様性の喪失との闘いで鍵となるテクノロジー - 投資家へのガイド

  • 2023年10月4日 (10 分で読めます)

キーポイント:

  • スマートエネルギー、再生可能エネルギー、バッテリー・エネルギー貯蔵システムおよび「アグリテック」におけるイノベーションが、世界的な気候目標に向けた進展を牽引することに貢献しています
  • 消費者の方向性と政府の政策という前向きな背景が、クリーンエネルギーの成長にとって大きな支援となります
  • この環境が革新的なツールを提供する企業を支援することになり、多数の投資機会を創出します

地球温暖化対策における進展にもかかわらず、特に昨今のニュースを考慮すると、取り組みのペースと規模を劇的に増加させる必要があることは明らかです。

世界気象機関の厳密な報告は、世界の気温が現在から2027年までの間の少なくとも1年間、パリ気候協定で定められた地球温暖化の閾値である+1.5度を超える確率が66%あることを指摘しています。報告書はまた、今後5年間で世界が記録的な年間気温に見舞われる確率が98%であるとも結論付けています。1

同様に、地球の生物多様性は驚異的なスピードで劣化しており、自然界のみならず、人間や企業が直接利用する資源として生物多様性に依存している広域の社会や世界経済にも損害を与えています。

2022年には約410万ヘクタールに上る熱帯原生林が失われましたが、これは2021年の10%増になります。この結果、2.7ギガトンの二酸化炭素が排出されましたが、これはインドの化石燃料による年間排出量に相当します。2

気候変動はもちろん、生物多様性喪失の主因のひとつです。生態系の破壊は、温室効果ガスの排出を調節し異常気象に対して保護する自然の能力を衰弱させます。

気候変動と生物多様性の喪失は非常に密接に結び付きがあるため、両者は一緒に対処しなければなりません。消費、エネルギー生成、土地利用はこれまでのような持続不可能な方法では続けられません。

イノベーションと立法

幸いなことに、エンジニアリングおよびデジタル技術におけるイノベーションが、世界の気候目標に向かう進展を促進することに役立っています。さらに消費者の方向性と政府の政策が、インパクトを与えることのできる技術の開発に拍車をかける力となっています。たとえば2022年8月に導入された米国のインフレ抑制法(IRA)は成長とイノベーションの新たな波を先導し、民間部門 ― そして投資家 ― は、エネルギー、輸送、農業、その他排出量の多いセクターが脱炭素化を図る上で様々な後押しとなるはずです。

同法はクリーンエネルギーへの投資の増強、医療費の削減、税収増を目的に、数十億ドル単位の新規支出と減税措置を割り当てています。全体でインフレ抑制法による税額控除のおよそ430億ドルが、電気自動車(EV)、エネルギー効率の高い家電製品、屋上のソーラーパネル、より安価な家庭用蓄電池の生産による排出量の削減を目的とします。3 欧州は独自の「グリーンディール産業計画」で対応し、ネットゼロの技術や製品に対する欧州連合の製造能力の規模拡大に向けて、より支援的な環境を作ろうとしています。

当社は、この背景により、広範な採用を確実にできる革新的な手段を提供する企業の利益が上がることになると、考えます。このインパクトが最も大きくなる可能性のあるいくつかの主要分野を投資家が密接に追跡できるなら、ポートフォリオにとって好機が生まれるでしょう。

地球そのものの保護だけでなく、持続可能性の増大は将来の経済成長がより持続可能になることを意味し、この成長は技術に依存すると当社は考えます。ネットゼロの将来の確保を目指す、最も心躍る技術的進歩のいくつかを以下にご紹介しましょう。

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低炭素輸送

主要市場における強力な政策支援、新製品の発売の波、継続的な技術革新の組み合わせが、世界的にEVの急速な普及を後押ししています。乗用車は輸送部門の炭素排出量の39%を占め最大の原因となっていることから、内燃機関の放棄は不可欠です。4 幸いにも、多くの主要自動車メーカーがその道を歩んでおり、たとえばフォードやジャガー・ランドローバーは今後10年間で全車両のEV化を誓約しています。5

EVに対する消費者の意欲が加速しています。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のEVの売上は2022年に1,000万台を上回り、今年の売上はその35%増となると予想され、これは世界の自動車市場の18%に上ります。IEAは2030年までにEVが中国、欧州、米国全体での新車売上の60%を占めると見ており、毎日最大5百万バレルの石油の節約に貢献することになります。6  別の調査では、EVの売上による世界的収入は2023年~2028年にかけて年間10.07%の率で成長すると予想されています。7

さらには長時間持続するバッテリー、民間・公共の充電ステーション、電力の損失を最小限にして性能をサポートできる半導体など、EVのサプライチェーン全体が今後何年にもわたり普及率の上昇から恩恵を受けると考えられます。

バッテリーの性能と寿命がしばしばEVのハードルであり、モデルによってことなるものの、EVは充電が必要になる前に通常およそ100~300マイル(約160~480キロ)走行できますが、中国のグループ CATL や韓国のグループ 、サムスンSDI などのスペシャリストがこの技術の先駆者となっています。8 後者はEVが1回の充電で遥かに長距離を走行できるようにする大容量全固体電池を現在開発中であり、この画期的な技術をまもなく商品化する予定ですが、これが業界の流れを変える可能性があります。9  まだ2~3年前には、これは非現実的と思われていました。

スマートエネルギーおよび再生可能エネルギー

今後30年以内にネットゼロ目標を達成するための政府による多数の公約を考えると、世界は再生可能エネルギー能力を3~4倍ほど増強する必要があるでしょう。幸いながら、再生可能エネルギーのコストは一般に化石燃料よりも安価になりつつあり、クリーンエネルギー(風力、太陽光、電池)の成長の背景は非常に有望なものだと、当社は考えます。

双方のテクノロジーにおいて、効率性と技術の継続的改良を含み、すでに他をしのぐ経済的効果および今後も見込まれる政府からの政策支援により、その成長が推進されるものと、当社は考えます。

ブルームバーグNEFの予想では、風力発電設備が2022~2030年にかけておよそ50%増加するのに対し、太陽光発電設備はさらに多く、およそ85%の増加としています。10

太陽光発電を見ると、ある分析では2021年に1,972億ドルであった世界市場規模が2030年までに3,686億ドルに成長すると予想しており、これは7.2%の年複利成長率に当たります。11

この分野のリーダー企業のひとつに、西半球最大の公共事業規模の太陽光パネルメーカーであるファースト・ソーラーがあり、同社はそのソーラーパネルのエネルギー収量を高める技術を開発してきました。12  さらにエンフェーズなど住宅用太陽光発電部門におけるスペシャリストがあり、同社は家庭規模で太陽光をより効率的に電力に換えるための最新鋭のマイクロインバーターを使用しています。13

長期的な目標は、最終的に住宅や企業が従来の送電網に依存しなくなる日が来ることです。現在の市場浸透度は低くても、太陽光発電は最も安価な形の再生可能エネルギーであり、したがって成長の潜在力は膨大です。

貯蔵ソリューション

石炭やガス火力発電から離れ、再生可能エネルギー源を採用することで、私たちは本質的に送電網を移行させています。しかし風力や太陽光は間欠的なエネルギーの形であり、いつオンになり、いつオフになるかの制御ができません。このため、それを平準化する大規模な貯蔵設備が必要です。ここでバッテリー・エネルギー貯蔵システム(BESS)が強力なソリューションを提供しており、ネクステラ・エナジーやサングロウなど、この技術に関与する企業が、ハード面の価格が低下するにつれて成長しています。

コンサルティング会社マッキンゼーによると、BESSへの投資は2022年に50億ドルを超え、2021年の3倍近くに上昇しています。同社の予想では、BESS市場は2030年までに現在の規模の2倍を超える1,200~1,500億ドルに達し、新規の年間生産能力のすでに大部分を占めている発電所規模のBESSは、2030年まで年間およそ29%拡大するとしています。14

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農業および廃棄物管理

企業は生物多様性の保全、および、より広範な環境にプラスのインパクトを与えることを目指す製品を開発しており、このことは特に農業、廃棄物、持続可能な素材のセクターに当てはまります。

農業技術 ―または「アグリテック」 ― は園芸から水産養殖まで、農業部門全体に渡る技術の使用を指し、気候や生物多様性にやさしい方法で農作物の収穫や農業・畜産の性能を向上し、採算性の促進を目的としています。

市場は急速に拡大しています。世界のアグリテック市場は2022年に220億ドル以上と評価されており、2022年~2032年にかけて13.1%の年複利成長率で拡大すると予想されています。このセクターは世界的に、2032年までに758億ドルに達すると見られています。15

この技術は遺伝学、ビッグデータ、機械学習、そして人工知能(AI)にまで及びます。たとえば英国の動物遺伝学企業ジーナスは選択育種を通して豚や牛を飼育しており、これにより高品質の肉や牛乳がより効率的で持続可能な方法で生産できます。同グループはまた、遺伝子編集を利用することで、豚の生殖器症候群や呼吸器症候群など、家畜の費用の掛かる疾病に対する抵抗力の増強に役立てています。

他では米国のグループ、ヴァルモンが、土壌の干ばつや熱ストレスの兆候をセンサーが検出する精密灌漑を扱い、米国の大手企業ジョン・ディアはコンピュータービジョンと機械学習を介してトウモロコシ、大豆、綿花畑の雑草を特定して農薬を散布する See & Spray システムを開発しました。

AIもまた、リサイクル可能な素材の特定および処理を合理化するために重要なツールになる可能性があるものとして認識されています。投資家はこれによる生産性の大幅な向上から利益を得る可能性があります。たとえばノルウェーのグループ 、トムラは、AIのサブセットであるディープラーニングを使用したセンサーを活用した分類および選別技術を利用し、高度な収集・選別システムと食品加工を提供しています。

米国のグループ 、ライ・サイクルはEVやバッテリー・エネルギー貯蔵システムに使用されているリチウムイオン電池をリサイクルしており、米国へのオンショアリング(国内回帰)のトレンドから恩恵を受けるはずです。電池の循環性やリサイクルの可能性については大きな疑問がありましたが、この企業はあらゆる種類のリチウムイオン電池からコバルトやニッケルを含む重要な材料を回収し、サプライチェーンに再導入することで、ソリューションを提供しています。

次の大きな一歩

時間が経つにつれて、テクノロジーが進展します。気候変動技術の真の革新がこれから訪れるという可能性が大いにあります。持続可能な航空燃料(調理済油、都市ごみ、木質バイオマスが原料)や、二酸化炭素が大気中に放出される前に捕捉する炭素の回収と貯留(CCS)など、複数の分野で意欲をかき立てる進歩がなされています。大半のCCS企業がまだ小規模ですが、中にはノルウェーの企業、アーカー のように証券取引所に上場した企業や、大企業グループの傘下にすでに入っている企業、または有効性が証明できれば買収される可能性の高い企業もあります。

また、どのような場所でも大気中から二酸化炭素を分離して回収する、DAC技術があります。また、別の興味深い分野がグリーンスチールです。これは従来の製鋼に比べて温室効果ガスの排出が少ない工程で製造された鉄鋼で、化石燃料の代わりにグリーン水素がよく使用されます。これが大規模に実施されるまでには依然として長い道のりがありますが、2050年までに必要な、製鋼からの炭素排出量の50%削減を実現する手がかりとなる可能性があります。このような技術はすべて、ネットゼロに到達する為に非常に重要な役割を担います。

同様に、分析技術およびビッグデータ技術は、生物多様性が損なわれていく複雑で多面的な経路に関する私たちの理解を格段に高め、私たちの対応を最も良く構造化する方法について導くための支援となります。

究極的には、技術面で単一の特効薬はなく、気候変動および生物多様性喪失との闘いに真に取り組む多数のソリューションが存在することになるでしょう。様々な業界を通してプロセス、効率、設計、構築を改良できるあらゆる取り組みが二酸化炭素削減の努力に貢献し、今度はそれが新たな投資の好機を生むことになると当社は信じています。  

企業への参照は例証のみを目的としており、投資の推奨と見なされるものではありません。

(オリジナル記事は10月2日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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