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マクロ経済

欧州議会選挙とフランス総選挙

  • 2024年6月27日 (10 分で読めます)
主なポイント
欧州議会選挙の結果を受けて、フランスのマクロン大統領は解散総選挙を行うことを決定しましたが、市場では、この決定は国家財政の安定性に影響を及ぼす可能性があるとして、懸念が起きました。
短期的な市場見通しは、選挙の見通しや経済データ、各中央銀行の政策により左右されると思われます。
しかし、クレジット市場でスプレッドが広がる場合には、クレジット債券戦略に投資する好機となる可能性があります

欧州議会選挙では、中道右派や極右が大幅に議席を伸ばしました。これを受けて、フランスのマクロン大統領は、解散総選挙を行うと決定しました。本書では当社グループの専門家が、今後の政治の短期見通しと中長期的シナリオを考察し、債券や株式市場への影響を分析します。


ジル・モエックGilles Moëc、アクサ・グループ チーフ・エコノミスト

解散総選挙の決定は、フランスの将来のマクロ経済政策に関して、特に財政政策に関して、不確実性を引き起こしました。この不確実性は金融市場に影響を及ぼし、フランスとドイツの10年国債の利回り格差(スプレッド)が拡大しました。このスプレッドは現在(執筆時)約75~80ベーシスポイント(bp)で、欧州議会選挙前と比較して約30bp拡大しています。その結果、フランス国債は現在、通常の取引状況とは異なりスペイン国債に近い利回りで取引されています。

幸いなことに、米国のインフレに関する好材料のおかげで、世界の長期金利は同時に低下しています。フランス国債とドイツ国債のスプレッドは拡大しているものの、フランス10年国債の利回りはそれほどには上昇しておらず、3.1~3.2%の水準を維持しているため、マクロ経済の波及効果の観点からはフランスや欧州経済に大きな影響を与えていないと見ています。

しかし、銀行セクターの株式は比較的混乱が大きく、フランスの大手銀行の株価は総選挙発表後の週に10~15%下落しました。一面では株式のパフォーマンスがそれまで好調だったことの反動とも考えられますが、この下落によって、民間部門への融資に影響を及ぼす可能性について懸念が高まりました。フランス銀行の推計によると、株価の下落によって、企業部門と家計部門への融資が約200億ユーロ削減される可能性があり、当社グループは、こうした削減によってマクロ経済は大きな影響を受ける可能性があると見ています。

今後のフランスの選挙について、各種世論調査データによると、極右、中道、左派連合など、競合する政治ブロックのいずれにも明確な多数派がいないことが示されています。このことは、単独過半数を得る政党がない議会になる可能性を示しています。これは、強力な多数決主義である大統領制を考えると、統治にとって課題となるシナリオです。その他、結果として考えられる可能性は、暫定政府の樹立、極右の過半数、左派連合の勝利がありますが、そのいずれでも財政政策と市場の安定性にそれぞれ何らかの影響を及ぼすと思われます。

選挙結果とその後の統治構造をめぐる不確実性は、財政の安定性とフランスのマクロ経済の先行きに影響する可能性について懸念を引き起こしていますが、選挙結果にかかわらず、フランスは大幅な財政是正措置を講じる必要があると見ています。しかし、状況の複雑さ、特にいずれの政治ブロックも明確な過半数が得られない状況では、欧州のルールを遵守するという点で課題が生じると思われます。これは、欧州通貨同盟の安定性に影響を及ぼし、債券市場のスプレッド拡大に対処する欧州中央銀行(ECB)の役割に疑問を投げかけるものです。つまり、ECBによる国債購入に頼る場合には、フランスは国家財政に関する欧州の枠組みを遵守しなければいけません。しかし、極右と左派連合のどちらもこれを明確に拒否しています。

不確実性が広がり、結果として市場や財政の安定に影響が及ぶ場合、実際的なアプローチと創造的な解決策が必要になると思われます。不確実性があるにもかかわらず、制度や財政のプロセスは継続すると思われますが、全体的な状況は長期間にわたって不確実なままになる可能性があります。


クリス・アイゴー Chris Iggo、CIO、コア・インベストメント

フランスとドイツの国債のスプレッドは解散総選挙の発表後、75~80bpで安定しています。フランスの社債のスプレッドは約20~25bp拡大していますが、投資家は欧州中央銀行(ECB)によるさらなる利下げ期待に大きく影響され、債券市場に対して概ね強気の見方を維持していると見ています。

選挙結果から生じる不確実性により、スプレッドが直ちに選挙前の水準に戻るとは限らず、スペインの国債水準と比較すると、フランス国債の方が投資するには適切な位置にあると思われます。短期的な市場見通しは、選挙シナリオ、経済データ、中央銀行の政策によって形作られると考えます。市場の動きにもかかわらず、クレジット市場には大きな警戒感はなく、特に金融、公益事業、通信セクターでは発行体は強固なファンダメンタルズによって支えられています。クレジット市場でスプレッドが拡大する場合、拡大の原因がファンダメンタルズの悪化ではなく市場での投資家のセンチメントによるものであれば、債券投資戦略としては買いの機会となる可能性があると見ています。一方、フランスの株式市場は、解散総選挙が発表されて以降、他の欧米主要株式指数と比較してパフォーマンスは低迷しています。


アレサンドロ・テントーリAlessandro Tentori、欧州CIO、コア・インベストメント

現在の環境を見ると、2018年のイタリアの政治情勢がすぐに思い起こされます。当時、イタリアは左派の五つ星運動が最大党派、中道右派連合が最大グループという分裂議会に直面していました。このため、五つ星運動と右派のマッテオ・サルヴィーニ同盟を統合したハイブリッド政府、第一次コンテ政権が誕生しました。政府は、移民政策をめぐるサルヴィーニと欧州連合(EU)の機関との対立、五つ星運動によるベーシックインカム(国が全国民に一定の額を定期的に支給するお金)の導入に伴う財政安定性への懸念など、大きなコストを伴う課題に直面していました。

このコンテ政権と現在のジョルジャ・メローニ政権との対比は注目に値すると思われます。イタリアは現在、次世代EU基金から2,300億ユーロを利用できます。この基金は、メローニ率いるイタリアの同胞党をはじめ、すべての政党が熱心に管理し投資しようとしています。2018年とは異なり、各政党は欧州の議題に沿ってこれらの基金に手を伸ばし、活用する強い動機があります。この違いは、不確実性が政治・経済環境に及ぼす影響の重大さを浮き彫りにしていると思います。

メローニ政権が政策課題を追求する上でより柔軟になるかどうか、また現在のスタンスから変わっていくかどうかは、欧州委員会の構成と、イタリアが主要ポストに副委員を配置できるかどうかにある程度左右されると見ていますが、そうなれば現政権の勝利と見ることができると思います。イタリアの国内政治に関しては、すべてがここ数年で築いてきた方向に進むと考えています。このことは、EUの機関には直接関係しない特定の問題、特に外交政策と移民政策で後退を余儀なくされながらも、国民が現政権に満足していることを示していると見ています。


ジル・ジボー Gilles Guibout、欧州株式ヘッド

フランスの解散総選挙の発表に対する市場の反応は、投資家が当初は望ましくない結果になる可能性を予想してリスク回避を行ったことから、当然の反応だったと思います。このため、市場ではフランスに大きく依存する企業、特に内需依存型産業の株式の売却が進みました。例えば、銀行やエネルギー部門の ヴァンシや エンジーのような規制関連銘柄などで見られました。しかし、選挙結果が異なれば、特に異なる政治指導者の下での税金や労働コストに関して、さまざまな影響が出る可能性があるため、この当初の反応の激しさは過剰だったかもしれません。

規制関連銘柄の中には、例えば両党とも高速道路の国有化を望んでいるため、過度に影響を受けた銘柄もあるかもしれませんが、ヴァンシやラファージュなどの一部の企業は、高額な補償金の支払いが予想されるため国有化される可能性は低く、資本をフランス国外に展開する可能性もあると予想されています。最も理解できる市場の懸念は、経済状況や金利に非常に敏感に反応する銀行セクターに表れると思います。政府の財政赤字抑制に対する姿勢がもっと明確になるまで、市場のボラティリティは続くと予想しています。これに対応して、当社グループは株式投資戦略において、銀行セクターの組入れを若干減らし、一方で、市場の無差別な下落の影響を受けて株価が下がった銘柄を厳選して買い入れを検討しています。

最近の市場の反応により、欧州市場へ流入し始めていた資金の動きが止まり、一部には売却する動きもあります。しかし、欧州企業は、売上の約 60% を世界の経済市場から、約 25% を米国の経済市場から得ており、このように世界的な関わりが強い為に依然として魅力ある投資対象と思われます。この世界的な存在感により、欧州企業は世界規模で競争力があると見ています。企業によって違いはありますが、欧州企業は同等の質を持つ他地域の企業と比較して概して割安で取引されているため、株式投資戦略にとって魅力的な投資機会になる可能性があると見ています。

企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

データの出所: レフィニティブ・データストリーム、ブルームバーグ

(オリジナル記事は6月24日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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