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ロシアとウクライナの戦争が再生可能エネルギーへの移行を加速させる3つの方法

  • 2022年5月26日 (5 分で読めます)

ウクライナ危機を契機に、欧州ではエネルギーの生成・供給のあり方が大きく見直されています。欧州の石油の約40%、天然ガスの30%は、これまでロシアから供給されていましたが1 、供給が脅かされるようになり、脆弱な状況になっています。欧州の各国政府は、倫理的な観点から現行制度の維持が困難であること、また現実的な不安も生み出していることを認めています。このことは、3つの重要な点で、再生可能エネルギー分野に著しい長期的な影響を与えています。

再生可能エネルギー導入の加速化

現在の危機的状況は、欧州各国政府が再生可能エネルギー開発へのコミットメントを拡大するよう促しています。例えば英国は、洋上風力発電容量を、現在の10ギガワット強から2030年までに50ギガワットまでの増加目標を発表しました2 。また、2035年までに太陽光発電の容量を最大5倍に増やすという野心も掲げています。

ドイツも再生可能エネルギー源決議の議会通過を加速しています。ドイツは、風力発電と太陽光発電の拡大を急速に加速させ、当初の計画より15年も前倒しとなる2035年までに、国のほぼすべての電力を再生可能エネルギー源で賄う目標を掲げています。

欧州連合(EU)も同様のコミットメントを行っています。現状では、欧州のエネルギーのうち、再生可能エネルギーによるものは20%強です3  。3月に発表されたREPowerEU計画では、再生可能エネルギーに「電光石火のスピードで突入」することで、2030年よりかなり前に欧州をロシアの化石燃料から独立させるという構想が示されています4 。欧州議会も、2030年までに自然エネルギーを40%にするという現在の目標を45%に引き上げるため、EUの再生可能エネルギー指令の改正を推進しています5

これらは重要なコミットメントです。再生可能エネルギー発電への直接投資と並行して、送電網やエネルギー配給インフラ、スマートテクノロジーへの投資も必要です。しかし、これらのコミットメントは、政府にとって比較的痛みを伴わないものです。再生可能エネルギーは補助金なしでも経済的に成り立ちます。多くの場合、企業は必要な改革を行うための資金を持ち、投資家もそれを支持しています。

EUは既に、電力計画や送電網への接続に関する官僚的手続きを緩和することをすでに約束しています。手続きは煩雑で時間がかかります。こういった問題を解決することは、政策立案者にとってコストがかからず、よりクリーンな燃料への移行を大幅に促進するはずです。

一般的に、再生可能エネルギーへのより広範な移行による受益者がいます。例えば、英国のナショナル・グリッドは、送電網(エネルギーをシステム全体に送るためのいわば「高速道路」)を運営しています。より多くの電力をスコットランドの洋上風力発電所から英国中に送電する必要があり、配電網にはより多くの投資が必要です。ヴェスタス・ウィンド・システム、SMAソーラー、イベルドローラなどの再生可能エネルギー事業者も恩恵を受けるはずです。

グリーン水素の拡大

グリーン水素は、他の再生可能エネルギーに比べてあまり注目されていませんでしたが、水素への取り組みが増えてきています。例えば、英国では最近、低炭素水素の生産能力に関する2030年の目標が2倍の10GWになりました6 。主に天然ガスから生産される「グレー水素」は、これまでは比較的低コストでしたが、天然ガス価格の上昇により、グリーン水素の競争力が高まっています。また、グリーン水素は政府にとっても、より安定的な選択肢となります。

水素は、再生可能エネルギーの中で最も季節的なエネルギー貯蔵が可能な技術です。これは、政府がベースロードのエネルギー生産を再生可能エネルギーに頼ろうとする場合、極めて重要です。再生可能エネルギーの供給は、風の強さや太陽の光に依存し、安定しない可能性があります。そのため、確実に貯蔵できる技術を開発することが極めて重要です。

グリーン水素の導入で最も恩恵を受けると思われるのは、大量生産され、広く入手可能な材料から燃料電池を製造しているセレスパワーなどの機器供給企業です。

エネルギー移行は譲れない、という政策立案者の認識

政策立案者は、エネルギー移行を後退させることはできないと認識しています。各国政府が、短期的にエネルギー供給を補うために石炭生産に回帰することが懸念されていました。石炭火力発電の稼働率は上昇していますが、従来のエネルギー源を復活させるのではなく、再生可能エネルギーへの移行を加速させるという明確な道筋が残されています。例えば、企業は新しい石炭発電所を建設していません。

EUは、コモディティ価格の上昇に伴い、エネルギーおよび公益事業会社の多額の利益に目を向け、棚ぼた的な課税を課すのではないかと懸念されていました。一般的には、これは発生していません。これらの企業がエネルギー移行に不可欠であり、適切な投資を行うためのゆとりと財務的安定性を必要としていることを明確に認識したものと思われます。

ウクライナ危機は、エネルギー供給の長期的な持続可能性について、政策立案者に正しい判断を促すのに一役買っています。その結果、最終的には欧州全域でより安全で信頼性の高いエネルギーミックスが実現するとみられます。

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