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サステナビリティ

生物多様性への投資は、問題ではなくソリューションを見据えることになる理由

  • 2023年4月19日 (5 分で読めます)

キーポイント

  • 生物多様性の保全にプラスの影響を与えることを目指す投資家は、危機へのソリューションを提供する企業への投資を検討すべき

  • 環境、特に生物多様性への影響を軽減するのに役立つ、多くの革新的テクノロジー、プロセス、アプローチが、あらゆるセクターの企業において開発段階にある

  • 農業、水の処理、持続可能な素材など、複数のセクターに潜在的な機会を見ている

世界経済フォーラムによれば、世界経済の価値の半分以上であるおよそ44兆ドル(約5,720兆円)が、自然の損失によりある程度脅かされています。 1 しかしながら、地球の生物多様性の保護を目標とした現在の投資額は、著しく不足しています。

国連によれば、180億ドルの民間資金を含む、年間約1,330億ドルが、自然を基盤とした解決策(nature-based solutions)に投資されていますが、世界が気候目標を達成するためには、これは2030年までに少なくとも3倍に増やす必要があります。2

したがって、投資家が環境危機に対処するために投資能力の活用をいっそう考えているため、地球の生態系および自然界の保護が、さらに投資家の目標の一部となってきています。

環境、社会、ガバナンス(ESG)の観点(特に生物多様性を念頭に置いて)で投資するのと同様に、投資家が生物多様性の保全にプラスの影響を与えることができる方法が複数あると当社は見ています。これを達成できる方法のひとつは、この危機へのソリューションを提供する企業に資本を振り向けることです。

生物多様性フットプリントは限定的であるものの、自社の事業活動以外に貢献の少ない企業を純粋に選好するよりも、より大きな規模で生物多様性の保全にプラスの影響を与える製品やサービスを生産している企業を特定することに価値があると当社は考えます。

ここでは、生物多様性の保全において役割を担い、投資家に潜在的な投資機会を提供している企業があると当社が考える3つの分野(農業と水産養殖業、水の処理、持続可能な素材)に焦点を当てます。

テクノロジー主導の農業

気候変動、新型コロナウイルス・パンデミック、ウクライナ戦争が食糧危機を悪化させてきました。2022~23年には世界の食糧供給が3年ぶりの低水準になると予測され、79カ国で3億4,900万人が「厳しい食糧不足」に分類されています。3 世界は汚染や有害な影響をもたらしかねない農薬の使用を増やすことなく農作物の収穫を拡大し、作物を病気から守る方法を見つける必要があります。

食品生産者が生物多様性への影響を削減しつつ生産性を改善するよう支援している新たなテクノロジーがあります。ディア(Deere)の精密農業システムがその例で、従来型のプランターや噴霧器に比べてより効率的に農作物の植え付け、施肥、処置ができます。4 これは必要な肥料の量および流出のリスク、そして富栄養化(水中に増えた栄養素が酸素を枯渇させ生物多様性に損害を与えること)を削減し、コストも低減させます。

この分野で操業する企業は、2030年までに化学農薬の使用を50%削減するとした欧州連合の目標など、新たな規制に対応する必要があります。5 そしてこれが、投資家にとってさらなる潜在的機会を生み出しています。

農業と並行して水産養殖があります。基本的に食用魚を繁殖させる事業ですが、世界の食糧供給および栄養の主要な一部としての認識が高まっています。しかし、世界の魚介類の3分の1超(35.4%)が乱獲に遭っており、食料安全保障および生物多様性の両面に影響を与えています。6

魚類は人間にとって重要な栄養素であるオメガ3の主要源であり、鮭などの大型魚にとっての餌として養殖にも利用されています。魚類利用を減少させるためのソリューションのひとつは植物ベース(藻類由来)のオメガ3の生産であり、コービオン(Corbion)のような企業が、海洋資源への圧力を低減する持続的な代替ソリューションとしてそういったオメガ3の生産を行っています。7

水のスマートな利用および処理

水に関して言えば、この生命維持のコモディティに対する代替物はありません。水は無限の資源と見なされることがよくありますが、地球表面の大半を覆っているのは実際には塩水です。地球の水のうち淡水はわずか3%であり、そのうちの3分の2は人間にとって利用不能です。たとえば、そのうちの一部は凍結した氷河などにあります。約27億人が少なくとも毎年一時期に水不足に直面し、24億人が適切な衛生が欠如した状況にあります。8

ろ過と浄化を含めた水の処理は、この中で極めて重要な局面です。この業界の最前線にいると当社が考える企業は、人工知能やデジタル化を活用して顧客にソリューションを提供し、生物多様性への影響低減に貢献しています。たとえばエヴォクア・ウォーター・テクノロジーズ( Evoqua Water Technologies)のスマート水システムでは、遠隔監視および分析が可能であり、また同社の一部の廃水処理プロセス中に生産されたバイオガスは、およそ5,000世帯の電力を1日まかなう再生可能エネルギーを生成します。9

水使用の最適化および削減に役立てられる水道メーターシステムについてもまた、機会が広がっています。水部門でデジタルトランスフォーメーションが進行する中、投資家は新たなテクノロジーに機会を見出せるでしょう。ザイレム(Xylem)のソフトウェアやアナリティクスのようなソリューションは、上下水道企業が持続可能な方法で課題に対処することを支援します。10

持続可能なパッケージングにおけるイノベーション

企業が製品やソリューションを通して生物多様性の保全に貢献している3つ目の分野が持続可能な素材であり、その例にアルミ缶のような食品・飲料パッケージがあります。

もちろん、アルミの採掘プロセスは生物多様性に影響を与えますが、アルミは無限にリサイクル可能であり、世界で生産される全アルミ缶のほぼ70%がリサイクルされています。アルミ缶の市場リーダーである ボール(Ball)は、顧客が缶入り飲料を買ってからその缶のアルミが小売店の商品棚に戻るまでの期間がわずか60日でありえると語っています。11

製紙および包装企業もまた、持続可能性の低い素材に替わるパッケージング・ソリューションを生み出すために、よりリサイクル度の高い素材の利用を模索しています。もちろん製紙用の材料となる木を伐採しなければなりませんが、毎年収穫されるよりも多くの木が成長する、持続可能な方法で管理された森林の利用が可能です。企業はまた、以前の牧草地など生物多様性価値の低い土地の利用もできます。フィンランドのパッケージング会社 ストラ・エンソ(Stora Enso)が採るアプローチがそれで、同社の森林は正味の炭素シンク(吸収源)です。同社の製品は、プラスチックの代わりに木材を使用した、電子レンジに使えるトレイを含み、二酸化炭素の排出量を最大3分の2削減します。12

持続可能な素材はもちろん、パッケージングに限られたものではありません。ファッション産業は世界の二酸化炭素排出量の10%を占めており、持続可能性を高める一連のイノベーションが出現しています。13 レンチング(Lenzing)のような企業は、たとえば繊維の材料にオレンジの皮などの非従来型の原材料を使用することで、環境への負荷を低減し、生物多様性の保護に役立つ、より効率的な繊維生産法を開発しています。別の例としては、繊維の製造過程で着色顔料を埋め込む新しい手法の開発があります。これは、通常なら水質汚染に大きく影響する染色工程を必要としません。14

より持続可能な未来への投資

社会が世界の生態系に大きな負担をかけていることには疑いがなく、人口が増え続け生活水準が上昇するにつれて、これが継続しそうです。しかし、生物多様性を保護しその劣化を減速させるには、より効率的かつ持続可能な方法で生物多様性フットプリントを削減するために活用できるソリューションを特定し、それに投資する必要があると当社は考えます。

企業が環境への影響を軽減し、生物多様性の損失を防ぐようにする多数の革新的テクノロジー、プロセス、アプローチが、あらゆるセクターで開発段階にあります。本記事で取り上げたのはこのうちのわずかな一部ですが、生物多様性に焦点を置いたポートフォリオ構築を目指す投資家にとって、株式の領域全体に潜在的機会があると当社は考えています。

企業への参照は例示のみを目的としており、投資推奨と見なされるものではありません。

(オリジナル記事は4月17日に掲載されました。こちらをご覧ください)

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