アクサIMを名乗る者からの投資勧誘等にご注意ください。詳細はこちら

Investment Institute
視点:CIO

いかなる結末となるか

  • 2023年3月28日 (5 分で読めます)

現状は2008年ではありません。しかし、市場は銀行に対する信頼を揺るがし、投資家は株式市場とクレジット市場の双方で大きな損失を甘受しなければなりませんでした。投資家が一部の銀行関連資産から撤退し、預金に対する懸念が残る中、今後さらに問題が発生する可能性があります。また、信用力の低下、不動産など他のセクターでの損失、銀行が相次いで貸倒引当金を計上するなどのリスクもあります。金利市場は、この物語がどのように終結するかを知っているようです。それは、利下げです。利下げが実現すれば、債券のリターンはキャッシュのリターンを上回ることになるでしょう。

破綻

銀行が破綻するのは、損失を吸収できるだけの資本を保有していない、預金流出に対応できない、あるいは、顧客、投資家、カウンターパーティーの一般的な信頼欠如に直面し、通常の事業が継続できないことによります。銀行を株式や信用力の観点から評価するためには、これらすべての事柄について透明性を確保することが必要です。しかし、今回のイベントで明らかになったように、事態は急速に進展します。デジタルバンキングの世界では、預金流出が急激に進み、そのスピードは、流出に対応するために銀行が資産を現金化する能力を上回ることがあります。今、投資家に問われているのは、システミックな金利ショックが信用ショックに発展するかどうかです。もしそうなれば、銀行の評価は、融資や証券ポートフォリオにおける追加的な実現損失や時価評価損、預金維持のための資金調達コストの増加、信用状況の悪化に伴う貸倒引当金繰入などを考慮しなければなりません。その結果、銀行の株式や信用資産のパフォーマンスがさらに低下する可能性があります。

信頼

銀行危機に直面した場合、政策が役割を果たします。規制当局や政府は、預金損失に対する保険や資産評価の裏付けを提供したり、銀行が流動性ニーズを満たすためにバランスシート上の担保を使用できるようにする制度を設けることができます。問題は、システム内のすべての預金に保険をかけると、現存する資金拠出型保険制度、例えば米連邦預金保険公社(FDIC)の枠よりも多くなることです。米連邦準備制度理事会(FRB)によると、米国の商業銀行の預金総額は2月末時点で17.5兆ドル(2,275兆円)です。また、信用資産が毀損した場合、資産評価に対して金融支援を行うことは多くの問題があります。銀行の資産が米国債や同様のハイクオリティな証券で、額面で償還可能な場合、中央銀行は一時的または恒久的に流動性と交換するためのファシリティを提供でき、すなわち資産をバランスシートに取り込むことができます。銀行システム全体に信用不安が生じ、支払能力が脅かされる場合、これは財政問題に発展する傾向があります。不良資産救済プログラム(TARP、2008年)は、2008年に米財務省が銀行から流動性の低い資産を買い取り、銀行がさらなる損失を被るのを防ぎ、市場と銀行システムの安定を可能にする仕組みでした。しかし、これは納税者のお金であり、銀行がすでに被った損失を補填するものではありませんでした。

今回は財政支援ではなく流動性支援

現状は2008年の状況とは異なります。しかし、どのような危機も同じではありません。米国の大手銀行は、世界金融危機以降、厳しい規制を受け、中核的自己資本を倍増させてきました。また、景気後退、失業率の上昇、住宅価格の下落など、厳しい経済シナリオに対して必要な銀行資本を評価するストレステストを毎年実施しています。今問題になっているのは、中小銀行はストレステストの対象ではなく、金利上昇シナリオの対象でもなかったということです。興味深いことに、前回のFDIC 四半期銀行レビューでは、売却可能ポートフォリオと満期保有ポートフォリオの両方における未実現損失(2022年10-12月期に6,200億ドル)の問題が指摘されています。もちろん、こうした損失が地方銀行の資本基盤にさらに影響を与える可能性もあり、預金逃避がこの問題を悪化させる可能性もあります。

FRBは行動可能

米国では、財政当局に銀行支援に乗り出すよう要請する政治的意志はないでしょう。ですから、焦点はFRBとFDIC、そして現時点で流動性を供給している他の機関になります。財政問題に発展する前に、FRBは利下げや量的引き締め(QT)プログラムの停止など、できることはすべて行うと思われます。2023年3月に流動性問題に直面した銀行がFRBのバランスシートを活用したことを考えると、これはすでに部分的には反転しています。

銀行のファンダメンタルズ悪化

事態はそれほど悪化しないかもしれないですし、最近の債券市場の利回り低下は、銀行債券ポートフォリオの時価評価損を減らすのに役立っているでしょう。しかし、預金の伸びはマイナスで、信用収縮が進むにつれてこの傾向は続き、より多くの地方銀行が問題に直面するリスクが生じます。その結果、地域経済や中小企業に影響を与え、米国の景気後退リスクが高まります。景気後退局面では、常に信用毀損の増加が見られ、それ自体が銀行にとってマイナスとなるため、負のフィードバックが発生します。FRBの金利政策スタンスを反映して、マネーマーケット・ファンドや財務省証券の金利は高止まりしており、このことも預金残高の緊張要因となっています。商業用不動産の資金調達が米国の地方銀行に依存していることも一つの問題です。なお、不動産セクターはここ数週間、欧米ともに株式とクレジットの両方でアンダーパフォームしています

スイス・ショック

欧州の銀行システムの信頼に対するショックは、ファンダメンタルな理由によってではなく、スイスの規制当局からもたらされました。クレディ・スイスが最終的に他の銀行と合併したり、売却されたり、あるいは清算されたりすることは、驚くようなことではありませんでした。しかし、特定の債券保有者の扱いが、欧州のクレジット市場に衝撃を与えました。UBSへの売却合意に際して、規制当局は、クレディ・スイスの資本構成において、AT1債(その他Tier1債)が株式よりも先に損失を吸収することを決定しました。これにより、クレジット・ヒエラルキーは根底から覆される可能性があり、欧州連合(EU)の規制当局は、他の銀行のAT1債の投資家に対し、いかなる破綻処理枠組みにおいても株式よりAT1債が優先されることに変わりはないと安心させるために迅速に動きました。しかし、この資産クラスはリプライシングが進んでおり、クレディ・スイスの評価損による投資家の損失は相当なものになると思われます。短期的には、AT1債の新規発行需要はあまりないと思われ、潜在的な発行体にとっては、リプライシングによってAT1債は非常に高価な資本商品となりました。しかし、規制当局を信用することができ、欧州の銀行の自己資本比率に納得できれば、投資家は、欧州の優良銀行のAT1債から高い利回りを永続的に得ることができるでしょう。

欧州

クレディ・スイスからの直接的な伝染はほとんどないかもしれません。UBSがより強く、より大きな組織となり、スイス国内の預金取扱機関として、またグローバルなウェルス・マネジメントの分野で強化されるでしょう。つまり、 投資銀行業務よりもリスクの少ないビジネスとなるはずです。欧州の銀行システムでは、金利上昇に対するエクスポージャーがあり、債務ポートフォリオの未実現損失が発生する可能性がありました。銀行の金利エクスポージャーはヘッジされているかもしれませんが、システム全体が金利上昇から免れることはできません(固定金利スワップ契約の反対側には常に誰かがいます)。自己資本比率は高いですが、今後数四半期で自己資本への負担が生じる可能性があります。しかし、全体としては、欧州の銀行は米国の地方銀行よりも良好な状態にあると思われます。特に、ユーロストックス600インデックスの銀行セクターのパフォーマンスは、今年に入ってからプラスに転じています。

最後の利上げ?

欧州中央銀行(ECB)、米FRB、イングランド銀行(BOE)が今月も利上げに踏み切ったことは、中央銀行が、銀行市場のシステミックな弱さに対して平静さを維持していると受け止められるかもしれません。しかし、市場はこの状況が続くとは考えていません。現在の政策金利のプライシングは、FRBは今週の25bpsの利上げを年央までに撤回すると示唆しています。ECBとBOEがさらに25bpの利上げを実施する可能性はほとんどない(100%未満)であると織り込んでいます。現在の市場価格で興味深いことは、2年物米国債利回りがフェデラルファンド政策金利を137bps下回っていることです。1990年以降、このスプレッドが100bpsを超えたのは4回で、いずれもFRBの緩和サイクルの始まりを意味するものでした。

債券は堅調とみられ、質の高いエクスポージャーを得ることが可能

債券市場は金利のピークを好みます。債券のリターンは、金利サイクルのピーク時やそれ以降もプラスになる傾向があります。読者の方々は、銀行の悪いニュースを受け、クレジットについて心配しているかもしれません。しかし、長期的に見た場合、十分に分散されたポートフォリオは、現在のエントリーレベル(利回りまたはスプレッドベース)においてはプラスのリターンをもたらします。投資家は、債券市場において、強固なバランスシートを持ち、銀行からの資金調達の必要性が低く、十分なインタレスト・カバレッジ比率を有する企業のハイクオリティなクレジットに対するエクスポージャーを得られます。

投資家は現在、債券ファンドから資金を引き出し、マネーマーケットや財務省証券に資金を投じるなど、逆の行動をとっている例が散見されます。これはパニック的な行動であると言えるでしょう。センチメントを好転させるようなニュースや政策があれば、投資家はクレジットの大きな上昇を見逃すかもしれません。そして、これはすぐに起きる可能性があります。

それでも、リスクはある

しかし、金融機関に対する懸念を考えれば、ディフェンシブになるのは理解できます。短期的には事態が悪化する可能性があります。このような環境では、株式市場が良好なパフォーマンスを上げるのは困難です。テクノロジー、エネルギー、そして今回の銀行セクターの問題から、米国市場の収益にはまだ下振れがあるとの懸念は以前からありました。それでも、債券利回りが低下すると、株式のバリュエーションは改善し始めます。現在、株式益利回りと米10年債利回りの差は2.2%です。1年進めて、2024年の1株当たり利益コンセンサス予想に基づく益利回りと10年債利回りでは、このギャップは2.82%に拡大し、2年進めて、10年債利回りに対する2025年の利益予想の益利回りのギャップは3.37%に上昇します。金融の安定性に対する市場の懸念があるこの時期の債券利回り低下と株価下落は、今後の株式リターンの見通しを向上させます。特に、2008年(世界金融危機)のような、また新型コロナ感染拡大のようなシステミックショックではないため、現在の信頼性の危機を超えれば、市場はより良いパフォーマンスをあげ、リスクテイクは報われるでしょう。

(パフォーマンスデータの出所:Refinitiv DataStream)

(オリジナル記事は3月24日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

関連記事

視点:CIO

好景気か否か

  • by Chris Iggo
  • 2024年4月15日 (7 分で読めます)
視点:CIO

比較的良好な環境と相場

  • by Chris Iggo
  • 2024年3月27日 (5 分で読めます)
視点:CIO

辛抱強く!

  • by Chris Iggo
  • 2024年3月21日 (7 分で読めます)

    ご留意事項

    本ページは情報提供のみを目的としており、特定の有価証券やアクサ・インベストメント・マネージャーズまたはその関連会社による投資、商品またはサービスを購入または売却するオファーを構成するものではなく、またこれらは勧誘、投資、法的または税務アドバイスとして考慮すべきではありません。本資料で説明された戦略は、管轄区域または特定のタイプの投資家によってはご利用できない可能性があります。本資料で提示された意見、推計および予測は掲載時の主観的なものであり、予告なしに変更される可能性があります。予測が現実になるという保証はありません。本資料に記載されている情報に依拠するか否かについては、読者の独自の判断に委ねられています。本資料には投資判断に必要な十分な情報は含まれていません。

    投資リスクおよび費用について
    当社が提供する戦略は、主に有価証券への投資を行いますが、当該有価証券の価格の下落により、投資元本を割り込むおそれがあります。また、外貨建資産に投資する場合には、為替の変動によっては投資元本を割り込むおそれがあります。したがって、お客様の投資元本は保証されているものではなく、運用の結果生じた利益および損失はすべてお客様に帰属します。
    また、当社の投資運用業務に係る報酬額およびその他費用は、お客様の運用資産の額や運用戦略(方針)等によって異なりますので、その合計額を表示することはできません。また、運用資産において行う有価証券等の取引に伴う売買手数料等はお客様の負担となります。

    アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社
    金融商品取引業者 登録番号: 関東財務局長(金商) 第16号
    加入協会: 一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人投資信託協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、日本証券業協会

    お問い合わせ先:TOKYOMARKETING@axa-im.com

    ページトップへ