
FRBの利下げが米国ハイイールド債戦略に及ぼす影響
- 2024年10月7日 (3 分で読めます)
主なポイント
米国ハイイールド債(HY)市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に実施した50ベーシスポイント(bp)の利下げを好感して反応しました。 HYの国債利回りに対するスプレッド(利回り格差)は9月17日(FRBの発表前)と比べて6bp縮小し、FRB利下げ発表後の9月25日現在、米国HY債券市場の月初来のパフォーマンスは1.4%、年初来のパフォーマンスは7.8%となっています1 。 FRBの決定後、8月初めの米雇用統計の結果を受けて市場が示した相場変動と比較すると、社債などのクレジット市場全体の反応は比較的穏やかでした。現在(執筆当時)、市場の注目は、FRBにとってのリスク(雇用とインフレ)のバランス、特に労働市場をめぐる動きに集まっていますが、HY資産クラスにとっては、国内総生産(GDP)成長率が比較的低水準ながらもプラスを続ける現在の成長軌道は、歴史的には最適と思われる状況と見ています。この状況では、HY企業が本格的なリセッション(景気後退)の逆風を受けたり、逆に、経済成長がかなり強くなった環境で過剰とも見られるほどの業績拡大速度を経験したりすることなく、EBITDA(税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)と売上を成長させる十分な余地があると考えます。
米国の多くのHY企業とその企業の利息支払い能力にとって、FRBが緩和を開始したという事実が重要であり、必ずしもその例下げ幅が重要なわけではないと見ています。とはいえ、すでに財務的に重い債務負担と過大な借入比率に苦しんでいたHY企業の一部、特に通信、メディア、ヘルスケアなど、セクター特有の資本構造を持つ企業にとっては、50bpの利下げは大きな意味を持つと見ています。
これらの比較的大きな資本構造を持つ企業の中には、現在発表または市場で噂されているM&A案件や最近の好業績の勢いなどで、プラスの追い風を受けている企業もあります。このような追い風は、市場でより苦境に陥っている発行体の一部にも安堵感を与え、その結果、これらの銘柄は最近の米国HY市場のリターンに大きく貢献することになりました。
バリュートラップの発生
HYの国債に対するスプレッドは短期的には320~350bp前後でほぼ横ばいで推移しており、歴史的な水準からすると小さく縮んでいる水準です。景気減速と資金調達コスト上昇の影響が業種や発行体によってそれぞれ異なる時期に現れているため、引き続きばらつきがあると思いますが、4月以降の国債金利の低下の動きにより、「業績好調」企業と「業績不振」企業の差異はある程度薄れていると見ています。
これは、米国HY市場の内比較的利回りが高い部分が経験したスプレッドの縮小に反映されており、利回りが8%以上の銘柄がHY市場に占める割合は、4月の24%から現在は15%に減少しています。一方、利回り5~6%の銘柄の割合は、4月の0.3%から現在は27%に増加しています2 。 米国HY市場全体では、最低利回り(YTW)の現在の平均値である約7%前後で取引されている銘柄の割合が非常に低いという事実は、こうした動きが生み出したバリュートラップ(割安と思われた金融商品が値上がりしないこと)の可能性を浮き上がらせているのではないかと考えています。
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その他の業界動向
エネルギーや原材料など基礎産業や化学等、昨年すでに景気減速の影響を受けていたHY市場の一部では、引き続き回復がみられます。一方、一部の消費者向け業界、特に低所得者層への依存度が比較的高い業界は、現在、弱含みの兆しが見られます。ウォルマートなど、価格プロモーション(価格優位性を利用した販売促進の方法)を強化できる大手小売業者が業績を伸ばし始めているため、多くの小売や消費財企業が2024年下半期の収益見通しを下方修正しています。
しかし、消費者にとって状況は必ずしも悪いわけではなく、比較的高い所得者層は好調のようです。ラスベガス大通りの業績は、引き続き回復力を維持しています。厳しい競争と客室価格の大幅な上昇に直面しながらも、カジノなどゲーミング事業とホテル事業はともに比較的堅調な成長を維持しています。また、レジャー業界の一部、特にクルーズ観光はよく持ちこたえており、新型コロナ後の時代でも商品に対する需要が堅調さを維持していることを示していると見ています。
見通し
今年に入ってからの米国HY市場の動向は、大きく2つの局面に分けられると考えています。まず、年初から4月までは、金利が上昇するにつれてキャリートレード(金利の低い通貨で資金調達して、金利の高い通貨で運用する手法)が中心となり、市場は経済データの強さとコアインフレの粘着性に再び注目しました。この期間は、米国経済の不均一性と、業界と発行体の動向に様々に差異があったことが原因となり、HY市場に多くのばらつきが生じました。次に、4月の「金利のピーク」から9月のFRBの利下げまでの期間は、10年国債利回りが約100bp下落したことが大きく影響し、これがHYを含むすべての債券にプラスの追い風となっています。市場では現在、年末までに75bpの追加利下げが実施される可能性が、会合前の30%から70%に高まりました。米国HY債券の資本構成全体がどうなるかを判断するに際し、FRBの緩和速度はターミナル金利(中央銀行が金融政策の一環として設定する政策サイクルの最終的な政策金利の水準)よりも重要であると、当社グループは考えています。
全体として、需給面が引き続きHY債の好パフォーマンスの主要な原動力となっていると見ています。これと並行して、HY債は、広範な米国HY債市場全体の堅調なファンダメンタルズから恩恵を受け続けていると見ています。このことは、8月末時点のHY債のデフォルト率がディストレスト・エクスチェンジ(経営難に伴う債務交換)を含めて1.7%、ディストレスト・エクスチェンジを除くと1.0%と、20カ月ぶりの低水準に低下し続けていることからも観測されます。3 これに加えて、2024年においてもライジングスター(非投資適格から投資適格に格上げされた銘柄)の数がフォーリンエンジェル(投資適格から非投資適格に格下げされた銘柄)の数を上回り続け、4 8月に格上げされたハイイールド債の発行体数は5カ月連続で格下げ数を上回ったという事実は、クレジットの勢いが依然として堅調であることを示唆していると考えます。
企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
(オリジナル記事は9月26日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
本資料で使用している指数について
ICE BoA米ハイイールド債指数:ICEデータ・インデックス社が公表している米国のハイイールド社債の値動きを示す指数です。
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