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ハードランディングは先送り、リスクオンへ

  • 2023年7月31日 (5 分で読めます)

米国経済がハードランディングを回避すれば、株式は引き続き債券をアウトパフォームすると思われます。歴史を振り返ると、通常、株式のアンダーパフォームが大きくかつ長期的に続くのは景気後退期だけです。これは、売上高の伸びが鈍化して企業収益が低下し、マルチプル(株価評価倍率)が低下するためです。こうした時期は通常、中央銀行が金利を積極的に引き下げる時期と重なります。私たちは景気後退に陥っていません。米国経済は4~6月期に予想を上回るペースで拡大しました。2024年には収益成長が予想されています。株式市場は4~6月期に7%~9%のトータルリターンを記録した後、7月は2%~3%程度の上昇となりました。クレジットスプレッドは安定しています。債券利回りは一定のレンジ内での動きを維持しています。市場はソフトランディング・シナリオを織り込み済みで、少なくとも米国については、最も軟らかいソフトランディングになる可能性をデータが示唆しています。景気後退が起こるとしても、その到来は遅れるでしょう。金利はピークに達したかもしれませんが、その先には長い据え置き期間が待っているかもしれません。

ピーク(再び)

市場は米国の利上げ打ち止めを予想しています。フェデラルファンド金利を5.25%~5.50%のレンジに引き上げる決定に伴うFRB(米連邦準備制度理事会)の声明は、引き締めサイクルが終わったとは明言しておらず、今後の政策決定はデータに依存するという主張は、私たちが政策金利サイクルのピークにあることを示唆しています。FRBに追加利上げが必要だと判断させるには、経済活動やインフレのデータの最近の軟化が覆る必要があります。重要なのは、FRBがいつ緩和を開始するかのシグナルを発する必要に関しては、示唆するものは何もなかったことです。FRBは2023年の景気後退を予想しておらず、米国経済はソフトランディングするという考えに傾斜しています。先週議論したように、これはインフレ率のさらなる低下を可能にするのに十分な余力が出現するトレンドを下回る成長期間を意味します。発表された4~6月期のGDP成長率は前年同期比2.4%で、経済が依然としてトレンドに近い成長を続けていることを示唆しています。設備投資は驚くほど力強く、これは米国経済の中期的見通しにとって朗報です。個人消費はやや弱まりましたが、依然としてプラス領域にあります。

市場はソフトランディングを織り込む

市場の織り込みも、ソフトランディングと整合しています。まず金利市場ですが、本稿執筆時点では、フェデラルファンド金利の今年年末時点のインプライド水準は5.38%で、目標金利と一致しています。2024年末のインプライド金利は4.16%で、目標レンジの4.00%-4.25%と一致し、来年に125bpsの緩和を示唆しています。その大半は翻って反映され、GDP成長率とインフレ率の緩和と一致すると予想されます。景気後退の可能性が高ければ、市場はさらなる利下げを織り込むでしょう。投資家が景気後退の可能性の方が高いと考えるなら、4.9%の2年物利回りはフェアバリューに見えます。

長期金利は比較的安定

長期金利もソフトランディング・シナリオと整合しています。市場では、3~5年のオーバーナイト金利は3.5%から4.0%と予想されています。これは、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の「ドットプロット」によるフェデラルファンド金利の長期予想値(2.5%)を上回っています。市場の織り込みは、FRBが自らの「均衡」金利予測から推測されるほど金利を下げられないことを示唆しています。繰り返しますが、これは失業率の上昇が限定的となるソフトランディングと整合的です。10年物国債金利は引き続き3.50~4.00%のレンジで取引されており、デュレーションを積極的にオーバーウェイトすることに興奮する必要はほとんどありません。逆イールドの解消が起こるとすれば、長期金利の大きな動きよりも、短期金利の低下による可能性が高いでしょう。

日銀の利回り押し上げ

短期的には、利回りは一定の範囲内で変動し続ける可能性があります。米国の4~6月期GDPが予想を上回ったことと、日本銀行がイールドカーブ・コントロール(YCC)政策に柔軟性を持たせることを決定したことで、利回りは週末にかけて世界的に上昇しました。日本の政策変更は小幅なものでしたが、日銀が0.5%の利回りで10年物国債を無制限に購入し(指し値オペ)、事実上市場水準に上限を設ける態勢がどれほど長かったかを考えれば、象徴的なことです。この買い入れ水準の変動幅が1.0%に引き上げられたことで、日本のイールドカーブはスティープ化し、海外債券との比較で日本国債の魅力は(日本の投資家にとって)わずかに高まりました。日銀がさらなる政策調整を行うかどうかは定かではありません。日銀は、日銀当座預金金利をマイナス0.1%に据え置きましたが、市場は近い将来に変化があるとは予想していません。

安定的なクレジット

クレジットでも状況は同じです。クレジットスプレッドは安定しています。実際、少なくとも3月の小規模な銀行セクター危機以降、2023年のクレジットスプレッドはタイト化傾向にあります。これは、米国とユーロ圏の投資適格債市場とハイイールド債市場の双方に当てはまります。常に個別銘柄で固有の事情があり、純金利負担の増加に対する懸念も出始めていますが、全体的な信用指標は依然として良好です。市場が企業セクターへの貸出に高いリスクプレミアムを要求していないことも、主要経済国が大幅な景気後退を回避していることと整合的です。

株式へのポジティブな期待

債券市場の状況、そして現在の金利とクレジットのプライシングから示唆されるマクロ・シナリオを考えれば、株式市場もソフトランディングと整合的に取引されていても不思議ではありません。米国では、S&P500種株価指数の2024年の1株当たり利益成長率(IBESのコンセンサス予想に基づく)は、2023年の実績から12%増と予想されています。Euro Stoxxユニバースでは、2024年の成長率予想は7.7%です。これは通常、景気後退時に起こることではありません。景気後退期には歴史が示すように、収益は低下し、株式倍率は低下し、債券に対する株式のパフォーマンスは低下します。

現在の市場プライシングと経済データが示唆するように、投資家はソフトランディングのシナリオに直面しています。このような状況が続けば、米国株は債券をアウトパフォームし続けるとみられ、債券のリターンは現在の利回り水準が示唆する水準に近いものにとどまるでしょう。しかし、債券利回りが大幅に低下する余地が限られていることから、債券のパフォーマンスが大幅に上昇する可能性は低いとみられます。スプレッドの拡大により、クレジットは国債をアウトパフォームするでしょう。

ハイベータ・クレジット

クレジットの見通しが引き続き良好であれば、投資家がハイイールド債、レバレッジド・ローン、新興国債券のような資産から引き続き優れたパフォーマンスを得られると考えるでしょう。新興国債券については、ベンチマークのスプレッ ドが400bp超を維持しており、利回りも8%を上回っているため、バリュエーションは 魅力的です。これは、欧米のハイイールド債券市場の想定リターン とほぼ同じであり、世界的なインフレ上昇と金利上昇の影響から各国が脱しつつあるなか、新興国市場において分散されたパフォーマンスを実現する機会という魅力もあります。為替市場では、ブラジルやメキシコのような国々が有利であり、メキシコは、米国企業のサプライチェーン調整の継続が期待され、直接投資が増えることから恩恵を受けると指摘されています。

幾分ネガティブなリスク再び

ハードランディングという選択肢もあります。それを排除することは出来ず、また欧州の最近のデータは、より強靭な米国経済と比較した場合、ハードランディングの方向を支持する傾向にあります。欧州株式のマルチプルが今年に入って上昇せず、欧州の投資適格債のパフォーマンスがスプレッドの変化によって米国を下回っているのは、そのことを物語っています。欧州の中期インフレ期待は米国に比べて上昇しており、欧州は2021年から2022年にかけてのようなエネルギー・ショックに再び直面した場合には、より脆弱です。欧州中央銀行(ECB)は今週再び利上げを実施し、預金金利を3.75%に引き上げました。欧州では、銀行が家計と企業の双方に対する貸出基準を引き締め続けており、利上げは信用収縮のさらなる証拠が示された後のことでした。ECBは、インフレ率を目標に戻すために総需要を引き下げる決意を固めているようです。進展はありました。ユーロ圏のインフレ率は昨年10月の10%超から6月には5.5%まで低下しました。しかし、目標は2%以下です。つまり、平均インフレ率をさらに3%以上下げるためには、ユーロ圏経済の大部分が景気後退に陥らなければならない可能性があります。総合インフレ率はドイツで6%、フランスで5%を超えています。

非同期化?

欧州がハードランディングし、米国がソフトランディングするというシナリオがあり得るとすれば、米国株と欧州債券がアウトパフォームするとみられます。また、米ドル高が再燃するシナリオも考えられます。これは異例のシナリオですが、米国がインフレショックに迅速に対処してきたことと、米国経済の底堅さを反映しています。欧州は、利上げペースが遅いだけでなく、マイナス金利という金融緩和的なポジションからスタートしています。さらに、エネルギー価格ショック、防衛関連の財政負担の増加、また、高級品、自動車、旅行などのセクターにとって重要だった中国需要の回復の失速などにも対処しなければなりません。

MAGA? 

あまり議論されていないシナリオは、米国経済が力強い成長を続けるというもので、人工知能やネットゼロ目標への投資の必要性にけん引され、健全な個人消費および企業支出を伴います。このシナリオも、特に供給サイドの問題がデジタル化、エネルギー効率化、さらなる自動化といった生産能力への投資によって対処されれば、インフレになる必要はありません。このような場合、利下げ余地も長期債利回りの低下余地も限られ、そして株式の強気相場は継続するでしょう。これは、2024年に12%の利益成長を実現するシナリオと一致します。そしてこれは、来年の大統領選挙に向けた興味深い背景となるでしょう。つまり、民主党がかえって「MAGA(「アメリカを再び偉大に」の意味で、トランプ前大統領のスローガン)」を達成するということです!夏の間に、そのことを考えてみたいと思います。

(パフォーマンスデータ/データの出所:Refinitiv Datastream、Bloomberg)。過去のパフォーマンスは、将来のリターンを示すものではありません。

(オリジナル記事は7月28日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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