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視点:CIO

ドル/円は二重天井か?

  • 2023年10月31日 (5 分で読めます)

米ドルは、前回の連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ以降、その強さを維持しています。米国経済の回復力の強さを考えると、ドル安に向かうと考えるのは困難です。一方で、欧州の成長率は弱く、欧州中央銀行(ECB)はハト派的になっていく可能性があります。ドルに対して強くなる通貨は日本円かもしれません。円安は、ドルが円に対して長年ぶりの高値にあることを意味しますが、他方で、日本銀行の金融政策の変更が近づいており、また、日本株に対する楽観的な見方が強まっていると思われます。この先、円高に向かうでしょうか?

アメリカ、万歳!

「アメリカ例外主義」という言葉は、今年頻繁に使われています。これは、世界の他の地域と比較して米国株式がアウトパフォームしているという文脈、特に4~6月期のテクノロジー株の急上昇に関連して語られています。 これは、生成AI(人工知能)をめぐる興奮と、生成AIを米国のテクノロジー企業が幅広く採用することによる影響によって促進されました。現在は決算シーズンの真っ只中ですが、S&P 500指数採用の米国企業の成長率はこれまでのところ+13%と推定されていますが、発表済みのユーロストックス上場企業の成長率は-7%です。米国企業は、より高いインフレ、より高い金利、および米国内の政治に関する不確実性を非常にうまく乗り越えてきたと思われます。

米国はまた、翌日物金利が500ベーシスポイント(bp)以上上昇し、経済全体の借入コストが上昇しているにもかかわらず、経済の回復力が強いという点で例外的であると見られています。7~9月期の国内総生産(GDP)が年率4.9%増加したことは、景気後退を予測する声も多かった中で、経済の回復力を示す良い例だといえます。対照的に、欧州経済は金利上昇の影響をより強く受けていると思われます。全ての経済統計の中で政治的に非常に敏感なデータである失業率は、米国で記録的な低水準付近で推移しています。総じて、米国では失業率が低く、賃金の伸びが高く、自宅や株式など資産価値も増加しています。また貯蓄も高い水準にあります。これは、これまでにあまり見られたことがないような状況です。

サムおじさん(米国を擬人化した表現)の米ドル紙幣

国の通貨は国の姿を反映するものです。ドルは強く推移しています。ドル指数は、他の先進国通貨のバスケットに対するその価値を表すものですが、これは、年初から3.2%上昇し、また前回のFRB利上げ直前の7月中旬に付けた安値から7.1%上昇しています。2022年、FRBが利上げを推し進めたため、ドルは大幅に上昇しました。 その後、他の中央銀行の利上げの動きが追いついたため、ドルの動きは逆転しましたが、今年の7月末以降、再び上昇しました。FRBによる「より長く」というメッセージとそれに呼応した米ドル建債券利回りの上昇は、ドル高を後押ししました。スポット価格では、ドルに対してはスイスフランだけが2023年に強いパフォーマンスを示しました。トータルリターンを比べると、ドルが主要通貨に対してもっとも強くなっています。

ドルの見通しに重要な政策

引締め的な金融政策と緩和的な財政政策の組み合わせは、通貨にとっては古典的な強気政策条件です。 市場が通貨の先行きを見据えようとするとき、重要になるのは政策の動きに対する期待です。今のところ、FRBは金利に関するメッセージについて変更がありません。この姿勢は、インフレ率が目標に向かって鈍化し、インフレ期待が再び安定するように、金利を制限的な水準に維持する必要があるからです。したがって、進行中の金融引締め政策はドル高の支援要因です。 市場は、少なくとも2024年半ばまでは政策金利が利下げに向かうことは見込んでいません。したがって、一般的にドル安に向かうと考えるのは、金利見通しの認識と米国経済の強さに変化があるまで、必ずしも確信度の高い戦略とは思われません。

財政面では、債券市場は巨額の赤字と国債供給を懸念しているかもしれませんが、これは利回りを高く維持しており、ひいてはドルのサポートになる可能性があります。 米国の財政政策に意味のある逆転の兆しは近いうちにはないと見られます。実際、来年11月の大統領選挙を前に、政府が大規模な歳出削減を約束するとは考え難いでしょう。一方、26日に行われた7年満期の米国債入札は、4.9%のクーポンで、投資家から非常に好評でした。高利回りはドルにとってプラス材料です。

ECBはハト派的になっていくか?

最近のドルの強さは、他の主要通貨とのスポット金利の差、金利を長期間高く維持するというFRBの強いメッセージ、そして欧州と比較して米国経済のしっかりした回復力を反映するものです。 したがって、ドルは1ユーロに対して1.05ドルをわずかに上回って取引されていますが、年末までに1ユーロに対して1ドルに再び向かう可能性があります。ECBは10月26日に金利を4.0%に据え置きましたが、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁の記者会見ではハト派的な動きが見られました。金利市場では、ECBがFRBよりも早い時期に利下げする可能性を織り込み始めています。

弱い円

興味深い通貨の組み合わせは、円とドルです。今週は1ドル150円という閾値を超え、市場が日本銀行にとって超えてはならない一線のようなものであると警戒していた水準を突破しました。ドルは昨年10月に150円台に達したため、現在の動きは為替レートの二重天井の様相を示しています。この水準は1998年以来であり、そしてそれ以前では日米貿易摩擦の真っ只中だった1991年です。もちろん、実質的には円はその当時ほどには弱くありません。というのも、日本が長年にわたって主要な貿易相手国よりも低いインフレを繰返し経験してきたためです。しかし、ドル、ユーロ、ポンドに対する円の下落のスピードはかなり速いです。ドイツ銀行は貿易加重による通貨の評価価値を試算していますが、この試算を始めた2000年以来の円安水準です。

東の国の謎

日本の経済や市場は謎が多いです。1990年代初頭に不動産バブルが崩壊して以来、経済はデフレ、政府債務の増加、生産年齢人口の減少、そしてしばしば一貫性のない政策決定に苦しんできました。 投資家は、日本株をロングにして日本国債をショートにするポジションを取りながら、何度も転換点が来たと言おうとしました。多くの場合、これらの取引は「危険なもの」として分類されざるを得ませんでした。過去30年間、日本の株式市場からのトータルリターンは年率換算で、米国市場の9.9%に対してわずか2.9%でした。もちろん、市場が好調な時期もありましたが、1991年以降では年ごとに見ると、日本株式市場のリターンが米国株式市場のリターン(円換算値)を上回ったのは4年に一度の割合にすぎません。

ライジング・サン (エン?)

しかし、変化は進行中かもしれません。日本銀行(日銀)は長年にわたって反デフレ金融政策を実施してきましたが、この政策の特徴はマイナスの翌日物金利と、国債利回りを抑える目的で債券を購入するためにバランスシートを大幅に拡大することです。ブルームバーグのデータによると、日銀のバランスシートはGDPの130%に相当します(米国とユーロ圏ではそれぞれ30%と50%と試算されます)。この政策にはいくつか変更が起こりつつあります。日銀は、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策をある時点で修正することを示唆しています。これは、日本国債利回りの上昇を可能にすることを意味します。 基準となる10年債の利回りは2016年から昨年末までにわずか0.1~0.2%に上昇したにとどまりましたが、最近では、2023年上半期の0.5%から現在の0.88%に上昇しています。翌日物金利はまだ上昇しないかもしれませんが、イールドカーブの利回りは今後数ヶ月で全般的に上昇するでしょう。米国と欧州の債券と日本の債券の利回り差は少し狭まると思われます。

ナッジ政策

金融政策変更の原動力は、日本が過去2年間、世界的なインフレ率の上昇から完全には切り離されていないことです。消費者物価のインフレ率は何年にもわたってゼロに近かった後、昨年2.2%に上昇し、2023年には平均で3%近くになると予想されています。 これは明らかに米国やヨーロッパよりもはるかに低く、2024年と2025年の予測もこれらの経済よりも低くなっています。しかし、この物価動向は日本にとって大きな変化です。大規模な金融引き締めが必要というわけではありませんが、市場に金利を設定させる方向に変更することや日銀のバランスシートの膨張を終了することが適切であるように思われます。

株式を強気に

金融政策の変更は控えめではあるものの、円を支援する可能性があります。また、日本株への関心も再び高まっているようです。この関心は、必ずしも過去に投資家が日本株式に投資した理由と同じではありません。政府や日銀は、企業の政策保有株式を削減することを奨励し、上場を投資家にとってより魅力的なものにすることにより、日本市場の運営をより効率的にするための措置を講じています。さらに、グローバルのサプライチェーンが変化していく中で、テクノロジーのサプライチェーンにおいて日本が潜在的に重要な役割を負っているを考えると、グローバル株式の投資家にとって日本は分散投資先と見なすことができます。 台湾積体電路製造(TSMC)は、すでに日本に半導体製造工場を建設することに合意しています。トヨタは、電気自動車(EV)用の全固体電池の開発をリードしています。これにより、EVの航続距離が劇的に広がり、リチウムベースのバッテリー技術の代替手段が提供されます。 市場の予想では、日本の1株当たり利益の成長率は2024年に7%、2025年には9%を超えます。12か月の収益予測では、現時点で日本市場の株価収益率は約14倍で取引されています。これは欧州市場よりも高い水準ですが、日本の金利水準と比較すると、株式リスクプレミアムがはるかに魅力的であることを示唆しています。

私は突然日本に対して強気になったわけではありません。しかし、為替レートの観点からみると、今後数ヶ月で円高に向かう可能性があります。金融政策の転換、日本株に対する前向きな構造的見方、そして日本が米欧の西側地政学的同盟の一部であることは、グローバルのサプライチェーンの今後展開において重要です。それに加えて、日銀が国内の金融スタンスの変更について口を濁してはっきりしないことを考えると、日銀は円安が更に進むことを望んでいるとは思えません。現在は円安ですが、確率的には、今後円安がさらに大きく進むとは見ていません。

 

企業への参照は例証のみを目的としており、投資の推奨と見なされるものではありません。

パフォーマンスデータとその出所: Refinitiv Datastream, Bloomberg、2023年10月27日現在。過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。

(オリジナル記事は10月27日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

 

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