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視点:CIO

債券の年 (遅れてもやって来る)

  • 2023年10月17日 (5 分で読めます)

この3年間は債券市場にとって扱いにくい3年間でした。今年は、2020年以来最大の利回り上昇の後、債券の年になるはずでした。代わりに、市場は懐疑的な人々に債券の価値を疑問視する数々の理由を次々と与えました。しかし、大胆な言い方をさせていただくと、来年は債券の年になると見ています。利回りは数年来の高水準です。リターンはこれまで非常に悪く、その為、今日の債券市場に資金を投入するためのリスクとリターンのバランスは、一世代の間では最高の状態にあると思われます。もちろん、キャッシュ金利の上昇は依然として課題ですが、一旦中央銀行がハト派的な道筋に移ると、リターンは回復するでしょう。This Time Next Year Rodney(来年の今頃はロドニー…:英国コメディー番組の有名な一節で、来年は大金持ちだという言葉が続く)

まだ1973年ではない

中東での出来事に対する市場はこれまでのところ敏感に反応してはいません。反応が強まるか否かは政治的進展にかかっており、それに関する憶測はこのレポートの範囲を超えています。紛争が拡大する兆候や、他の関係者が関与する兆候がある場合、金融市場で最も可能性の高い反応は、ドル高、金価格の上昇、債券利回りの低下です。リスク資産は圧力にさらされるでしょう。どのような形であれ停戦や、戦闘を止めるための取引を仲介しようとする第三者による試みよっては、投資家の注意はインフレ、金利、成長を取り巻く中核の問題に完全に戻ることができます。人類の悲劇の規模を軽視するわけではありませんが、経済的観点からは、1970年代の中東の緊張をめぐって見られたのと同じような石油価格ショックが発生する可能性は低く、世界経済はこうした価格ショックに対応できるほどに堅牢になっています。最近でもエネルギー価格ショックの例がありますが、1970年代を特徴づけた何年にもわたるスタグフレーションと劣悪な実質投資リターンに直面する可能性は非常に低いでしょう。

上がって、下がって

債券市場は引き続き不安定です。グローバル国債指数は、9月末まで5カ月連続でマイナスのトータルリターンとなりました。今月もわずかにマイナスになっているため、2023年のプラスのトータルリターンを得るのは難しく(執筆当時、-1.4%)、債券市場では前例のない3年連続のマイナスリターンが起こりそうです。債券ベンチマーク指数の3年間の累積損失は、これらの指数のほとんどが公表されて以来(数十年)最大の幅になっています。今週、市場は好調に推移しているように見えましたが、その後、9月の米国消費者物価指数(CPI)の前月比が予想をわずかに上回ったことによって、一時的とはいえ再び売りにつながりました。利回りは近年に比べて依然として高く、私はこれらの水準が良好な価値を表しているとの見方を続けています。ICE BofAグローバル国債インデックスの平均価格は88.3セントで、「これまで」の最低レベルに近づいています(インデックス価格は2020年初頭に117.4のピークに達しました)。

難問

私は 最近、米国の500ベーシスポイントの金融引き締めが世界経済にこれ以上の悪影響をもたらさない理由について、顧客の方々と幾度も対話をしました。金融政策は長い期間で変動しながら時間差で機能するという主張に依拠することは、実際にはポートフォリオを実行する場合に役に立ちません。このプロセスには、期待リターンとリスクの最適なバランスを確立するための期間の要素が必要です。私の見解では、中央銀行がピーク時に金利を据え置く時間が長ければ長いほど、家計や企業はキャッシュフローの多くが債務返済に転用され始める可能性が高いと考えています。結局のところ、債務水準は高くなっています。さらに、政府は、新規借入に対してはるかに高いクーポンを支払わなければならず、一部の人にとっては、量的緩和によって生み出された銀行準備金に利息を支払うことに起因する中央銀行の損失を補償しなければならないことで、危機を感じ始めています。多くの先進国で財政収支が悪化しているとみられており、今後は財政政策を引き締める必要があります。パンデミック関連の財政拡大による成長の押し上げは終わりに近づいています。

住宅は重要

住宅市場は金利の見通しにとって極めて重要です。Bankrate.com によると、米国では、全国平均の30年住宅ローン金利は7.8%であり、過去25年間で最高に近くなっています。今日の借入コストは、2006年から2007年(金利の最後の「テーブルマウンテン」時代)よりも高くなっています。英国では、2年固定金利の平均は2021年末の1.5%から6%近くに上昇しています。住宅ローンの承認に関するイングランド銀行のデータは、今年の需要の軟化を示しており、最新の月間住宅ローン承認件数は約45,000件となり、長期平均を大幅に下回っています。全国建築協会のデータによると、平均住宅ローン支払い額は手取り賃金に対する割合でみると2009年以来の最高水準に達しています。米国は異なる住宅ローン構造を持っていますが、新しい借り手が8%の住宅ローン金利を積極的に借りようとしているとは考えにくいでしょう。米国の新築住宅販売件数は減少し始めていますが、住宅価格の低下を示す証拠はそれほど多くは見られません。

やがて傷つける

借入コストの上昇が家計に食い込み、個人消費の削減が必要になるのは時間の問題だと考えています。私がクレジットアナリストや投資家と緊密にやり取りしている中で、企業について、金利の上昇によって問題がまだ一般化していないことは驚くべきことではありません。低利回りの期間中、企業はうまく対応していました。彼らはかなりの低金利に固定し、借入を終了し、多額の現金の山を積み上げることができました(その残りでマネーマーケットファンドによって5.5%の金利を獲得しています)。しかし、新しい借入れにはより高いコストがかかります。ICE BofA US 1-3年社債インデックスの過去のクーポンは3.4%ですが、現在の償還利回りは6.1%です。利回りが下がらなければ、債務が満期を迎えたときに、借り手は過去3年間に借りた債務のほぼ2倍の金利で借り換えることになります。

知っていること、期待していること

問題は、こうした事態の動きが遅いことです。米国の問題は2007年とは異なります、当時の問題は、多くの変動金利住宅ローンについて、もっと高い金利環境で金利が再設定されました。リボ払いでの銀行借入れでより高い金利に直面している企業の数、または新しい住宅ローンの需要で正確に何が起こっているかについての詳細なデータを取得することは容易ではありません。しかし、銀行の貸出条件が厳しくなっていることはわかっていますし、今日再設定している英国の住宅ローン保有者は、毎月の支払いが急増することを知っています。また、我々は新しい借入れで投資プロジェクトの資金を賄うコストは3年前よりもはるかに高いことを知っています。これらすべてが支出に影響を与え、景気後退ではないにしても減速を早めるに違いありません。そうすれば、その後、金利が低下することになるでしょう。

住宅価格は最終的には、インフレ抑制策に貢献すると思われる

住宅もインフレ見通しに影響を及ぼします。9月の米国総合消費者物価指数は、やや粘着性を示していますが(前年同月比3.7%で横ばい)、家賃を除いたサービス価格は前年比2.8%(季節調整済み)と穏やかな水準です。この指標は、昨年9月に8%超でピークに達しました。統計を見ると、CPIの住宅要素が前年と比較して依然として5.6%上昇しています。住宅価格は動きが遅く、インフレデータの住居費要素も動きが遅いことを意味します。全体として、食料、住居、エネルギーを除いたCPI指標は2.0%でした。このCPIでは目標に戻っています。   

長いほどリスクが高い

住宅市場は金利に敏感です。住宅価格の動向も、基調となるインフレ傾向の状況を歪める可能性があります。インフレが金利を押し上げ、それが最終的に住宅市場の弱さにつながり、それが時間差でインフレの低下とそれに続く金利の低下に寄与しますが、それには時間がかかります。データについて債券に強気に解釈する理由の1つは、住宅を除くと、インフレはすでに目標に近づいており、連邦準備制度理事会は再び利上げを行う必要はないということです。次の動きは緩和であるべきですが、その際には、全体的なインフレ率が低くなり、成長が鈍化する兆候がいくつか見られるでしょう。その間、現在まだ表れていないような金融引き締めに対する悪い反応が起こる可能性があります。その点について、今後数週間に出される米国の銀行の収益報告を注意深く見守っていきます。債券チームの私の同僚は、ここ数週間で米国の銀行名のクレジット・デフォルト・スワップ・スプレッドが拡大していることをすでに指摘しています。夏場に債券利回りが上昇したことは、銀行のバランスシートと収益にとって問題となる可能性があります。様子を見よう。

パフォーマンスデータとその出所: LSEG Datastream、Bloomberg。過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。

(オリジナル記事は10月13日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

 

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