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Investment Institute
マーケットビュー

人民元の国際化:多通貨グローバルシステムに向けて

主なポイント

中国の人民元は最近(執筆時)、特に資本市場やコモディティ市場など、米ドルの世界的覇権の要となる市場で世界的に存在感を増しています。このため、市場では、人民元がいつか世界の主要基軸通貨としての座をドルから奪うかどうかという議論が再燃しています。これが近い将来起こると考える投資家は少ないものの、一部ではドルの保有状況を見直し、代替策を探す動きもあります。

中国政府の通貨政策は、市場で考えられているほどにはドル打倒が目的ではないかも知れません。その目的はむしろ、ドル制度が中国元に不利にならないようにすることではないかと考えています。

重要なことは、人民元がドルに取って代われるかどうかではなく、世界の通貨システムが一通貨に集中している状況が緩和するかどうかにあると考えています。

市場で議論のきっかけとなった出来事とは?

  • 中国は昨年9月下旬、ブラジルが大豆の輸入を急増し始めた後、アルゼンチンからの大豆輸入を急激に増やし始め、その取引の大半を人民元で決済しました
  • その後10月には、世界最大の鉄鉱石採掘会社のひとつであるオーストラリアの BHP グループは、中国の仕入れ業者が鉄鉱石スポット取引の30%(世界の鉄鉱石年間取引量の6%に相当)をドルではなく人民元で決済することに合意しました
  • インドネシアは初のオフショア人民元建て債券(点心債)を60億人民元分発行しました。この債券の応募倍率は3.7倍となりました
  • ロシア産原油をインドに販売する貿易企業が、インドの国営石油精製会社に中国元での決済を求め始めました
  • 中国人民銀行(PBoC)は、アラブ首長国連邦(UAE)の人民元決済銀行(域内でこの機能を取得した初の地場銀行)としてファースト・アブダビ銀行(FAB)を認可し、UAEの銀行を中国の決済システムに事実上接続しました
  • また、11月には、中国は香港で40億ドルのソブリン債を発行しましたが、その応募倍率は30倍に上りました。発行価格は利回りが米国債に対して0~3ベーシスポイント(bp)上回る水準に設定されました。これは2024年11月に中国がサウジアラビアで発行したドル建て国債のスプレッド(利回り差)1~3bpよりも低い水準でした
  • 中国と韓国は、4,000億人民元規模の5年満期の通貨スワップ協定を締結しました。これは昨年6月にトルコ、8月にタイ、9月にEU、スイス、ハンガリーと締結した同様の協定に続く最新のものです

その他の段階的な措置としては、エチオピアスリランカケニアがドル建て債務を人民元建て債務に転換し、アルゼンチンが国際通貨基金(IMF)への債務を人民元建てで支払うことなどがあります

サラミスライス戦術

人民元を国際化し、ドルの優位性を削ごうとする忍び寄るような動きは今に始まったことではなく、中国政府のサラミスライス戦術(または、サラミ戦術:小さな行動を積み重ねて、最終的に大きな目標を達成する戦術)の進展を浮き彫りにしているとみています。

人民元の使用をさらにコモディティ分野へと拡大することで、中国政府はドルの覇権の要を揺るがしています。

中国が米国債に対して極めて小さいスプレッドでドル国債を発行できたことは、ドルの流動性管理者となるための「1ドルには1ドル」戦略の進展を強調するものです。この戦略は、経常赤字と財政赤字のために多額の資金を持続的に必要とする米国から流動性を引き離すものです。

この動きはまた、新興国市場の各国がドル建て債務を人民元建て債務に転換することを促すことで、人民元の国際化も深化させます。

確かにサラミの一切れ一切れは小さいものですが、これらを合わせると、人民元がますます国際化しつつあるというシグナルが発信され、ドルと並行して人民元中心のシステムを構築することで、ドルの覇権を徐々に崩していきます。

こうした取り組みに参画する国が増えれば、中国は大規模で流動性の高いオフショア人民元市場を構築し、運転資金や貿易金融を多通貨体制へと徐々に移行させることができるでしょう。

中国政府は、壮大な宣言やドルとの衝突によってではなく、何千という個々の調達や決済の決定を通じて、世界の通貨システムを変えるプロセスを設計しています。


TINA がドルを守る

脱ドルが叫ばれているにもかかわらず、今日ドルに代わる通貨が単にない(TINAと呼ばれる、ドル以外に選択肢がない現象)ため、劇的な通貨シフトがすぐに起こる様子はありません。

国際決済銀行(BIS)による 2025年の3ヵ年中央銀行サーベイによると、ドルは依然として世界の外国為替市場で支配的な地位を確保しており、全取引の89.2%を占め、この比率は2022年の88.4%からも上昇しています。対照的に、人民元は取引量で世界第5位の通貨に上昇しましたが、そのシェアはわずか8.5%です(図表1参照)。 


国際的なSWIFT決済システムのデータも、類似の状況を示しています。9月の世界の決済額に占める人民元の割合は、ドルの47.8%に対し、わずか3.2%でした。このことは、近年の人民元国際化の勢いが増しているにもかかわらず、それが大規模なものではなく、漸進的なものであったことを示唆しています。

経済のファンダメンタルズから、中期的にはドルに代わるものはないことが伺えます。米国の(貯蓄赤字を反映した)経常赤字は、経常黒字国からの資金による資本収支の黒字によって相殺されなければなりません。その結果、世界の貯蓄余剰の大部分は、この余剰を吸収できる厚みと流動性をそなえた米国債に投資されてきました。

外国(および投資家)が米国の赤字補填(あるいは米国資産の購入)をやめたいのであれば、各国内の支出と投資を増強することでその国の経常黒字計上をやめなければなりません。これはすぐには起きそうにないため、米ドル資産には引き続き需要があるでしょう。

実際、2025年初頭の数か月を除けば、外国の投資家は米国資産の買い越しとなっています(図表2参照)。TINA現象を強化しているのは、中国の兌換不能の資本勘定と金融自由化の不完全性です。こうした特徴により、人民元市場は小規模で流動性が低く、リスクヘッジ能力もない状態です。


目標はドルを打倒することではない

中国政府は開かれた市場よりも政策統制、特に通貨主権(金利のコントロール)を優先してきました。そのため同国の通貨政策は、価値の保存や準備資産といった根本的な役割ではなく、人民元の機能的役割(交換手段、要求払い、資金調達)に重点を置いてきました。

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政策目標はドルを覆すことではなく、単にドル支配体制が中国の不利になるようには利用できないようにすることであり、これは防衛的な動きです。ウクライナ紛争が始まった2022年にロシアの外貨準備が凍結されたからには、これはもはや理論上のリスクではありません。金地金を金庫に保管し、ドルと非ドル建て通貨を幅広く組み合わせることが賢明な対策でしょう。

忍び寄る人民元の国際化は、システムの「配管」を再構成し、長期的には世界の通貨秩序に重大な影響を与える可能性があります。

中国の配管2は今のところ小さな規模です。しかしそれは成長しており、ドル以外の金融インフラという選択肢を世界に提供しています。

世界市場は依然として主としてドル建てで貨物やコモディティの価格を決定し、各国は外貨準備の大半をドル建てで保有していますが、同時に人民元建てで資金フローの一部を決済し、点心債でプロジェクトに資金を供給し、貯蓄や外貨準備に人民元を追加することも増えていくでしょう。

  • これはまさに「不可能の三位一体」と言えるでしょう。中国は資本勘定を開放するにあたり、金利か為替レートのどちらか一方をコントロールする義務を負い、両方をコントロールすることはできません。資本勘定の限定的な開放を選択することで、北京は通貨の兌換性を犠牲にして、為替レートに対するある程度のコントロールを維持しようとしています。
  • 以下のシステムや市場を示しています。人民元が支配するクロスボーダー銀行間決済システム(CIPS)、クロスボーダースワップライン(二国の中央銀行間であらかじめ決められた為替レートで自国通貨を交換する協定)、オフショア人民元決済銀行、オフショア人民元債券市場

ドルの行方

ドルは決済、貯蓄、融資、スワップライン予防措置において依然としてトップの座を占めています。上記図表1、2で見たSWIFTやBISの通貨取引状況を見れば、その地位がいかに強固なものであるかがわかります。

脱ドル化の議論の多くは、貨幣の「使用」(または機能的役割)と「中心性」(または根本的役割)を混同しています。人民元取引や融資取引など、ドル以外の通貨が使用されるようになっても、それ自体がドルの中心性を脅かすわけではありません。ドルの中心性は、米国の資本市場、法の支配、深い担保の繋がり、米国連邦準備制度理事会(FRB)の信頼性に支えられているからです。人民元は今のところ、これに太刀打ちできません。

しかし、人民元がドルに取って代われるかどうか、またはいつ取って代われるかを問うのは的外れです。

より良い問いは、代替的な金融インフラを提供できる多通貨の枠組みを介して、グローバルシステムがより安定的になっているかどうかということです。

投資家の戦略的な通貨構成は、ドルと人民元のどちらか一方を選ぶのではなく、両者の相対的な組入れ具合を考慮する必要があると考えます。

企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は1月6日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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