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センチメント(市場心理)を理解することで投資成果を向上させる方法

主なポイント

投資家のセンチメントは、株式リターンの将来期待を形成する重要な役割を果たすと見ている
定量的手法の運用者として、アクサ・インベストメント・マネージャーズ・グループ株式QIチーム(QIチーム)は、センチメント指標を株式選定モデルの重要な要素として活用している
人工知能(AI)や機械学習の最新の革新技術を活用してセンチメントモデルを改善することによって、顧客により良い成果を提供できる可能性があると考えている

投資家のセンチメントは、株式のファンダメンタルバリュー(基礎的価値)を評価する際の重要な要素と見ています。企業の決算発表時に経営陣のセンチメントを分析することで、企業戦略の自信や方向性に関する貴重な洞察が得られると考えます。

ファンダメンタルの観点から見ると、一般的に今後の製品発表や重要なイベントに関する企業の経営陣からのポジティブなメッセージは、その株価を上昇させる可能性があり、ネガティブなメッセージは逆の効果をもたらすことがあるといえます。

QIチームのセンチメントモデルは、企業の決算発表のトランスクリプト(話した内容を文字起こししたもの)を分析し、自然言語処理(NLP)を使用してこれらの文書内のテキストを解析します。特に会話の重要な部分に焦点を当て、企業の経営陣がどれほどポジティブまたはネガティブであるか、また前回の発表からのどれほどの言語の変化があるかを点数化します。

センチメントを積極的にモニタリングしながら、株式の質やバリュエーションに関する中核のファンダメンタル見通しと組み合わせることで、株式とその将来の基礎的価値の可能性についてより良い見解を形成できると考えています。この包括的な手法は、潜在的な投資機会やリスクを特定するのに役立つだけでなく、常に変化する金融環境においてより戦略的な意思決定を支援すると見ています。

最終的には、センチメントを理解することが、投資家が市場の動向に合わせて戦略を調整し、有益な結果を達成する機会を高めることにつながると考えています。


「センチメント」モデルとは何か?

センチメントは、さまざまな次元を含む要因です。これには、株価の動きを反映する価格センチメントや、利益修正に関連する利益センチメントが含まれます。

QIチームは、決算発表やニュース記事、ソーシャルメディアから得られるセンチメントなど、NLP(自然言語処理)に基づくセンチメント指標を見ています。NLPは人工知能(AI)の一種で、人間の言語を解読することを目的としています。これらのモデルは、テキストをポジティブ、中立、ネガティブのようなカテゴリーに分類することができます。モデルによっては、非常にネガティブ、ネガティブ、中立、ポジティブ、非常にポジティブなど、より細かい分類を提供するものもあります。

初期のNLPモデルは、テキストを分類するためにポジティブ、ネガティブ、中立の単語の頻度をカウントすることに依存していました。NLPに基づくセンチメント分類の主な目的は、センチメントの強さを評価することです。NLPの最近の進展により、文脈を考慮に入れたさらに洗練されたモデルが開発され、センチメントのニュアンスをより深く理解できるようになっています。


センチメントモデルの進化

1990年代に作成されたセンチメント分析の初期のツールの一つであるハーバード(Harvard)IV-4辞書は、単語を「ポジティブ」や「ネガティブ」といった一般的なセンチメントや心理的カテゴリーに分類します。その広範な設計は汎用性がありますが、金融のような特定の分野に焦点を当てる点では精度に制約がありました。

一方、ロフラン-マクドナルド(Loughran-McDonald)モデルは2011年に導入され、単語をそのセンチメントに基づいて分類するセンチメント辞書に依存しており、金融セクター向けに調整されています。例えば、「アンダーパフォーム」、「不利」、「予期しない」といった用語はネガティブとしてラベル付けされ、「利益が出る」、「アウトパフォーム」、「強気」といった言葉はポジティブとしてラベル付けされます。一般的な辞書とは異なり、金融の微妙な意味を捉え、例えば「負債」や「リスク」といった用語をネガティブとして定義しています。

このモデルは、これらの単語がどれだけ頻繁に出現するかを数え、ポジティブな単語が最も高い割合を占める場合、その文をポジティブとして分類します。

QIチームの最初のモデルはロフラン-マクドナルド辞書を使用しました。この辞書の金融専門性は、金融テキストにおけるセンチメント分析や市場行動、企業のパフォーマンスとの関連付けにおいて重要なツールとなっています。

最近では、BERTモデル(FinBERT)のようなトランスフォーマー・モデル(深層機械学習モデルの一つ)が深層学習とコンテキスト(文脈)埋め込みを用いてセンチメント分析に革命的な影響をもたらしました。トランスフォーマー・アーキテクチャ(トランスフォーマーの論理構成)は、AIの発展において重要な転換点となり、ChatGPTの成功の基本的な要素でした。

トランスフォーマーの重要な概念はその自己注意メカニズムであり、これによりモデルは予測を行う際に入力文の異なる要素の重要性を評価することができます。この注意メカニズムは、モデルが長期的な依存関係を捉え、各単語の文全体に対する文脈を理解することを可能にします。トランスフォーマーは、言語における複雑なパターンや深い関係を捉えることができ、NLPのランドスケープ(システム構成の様相)を再構築しています。

FinBERTは特に金融データを用いて学習されており、金融用語の微妙なニュアンス、例えば「ボラティリティ」がリスクを意味することをよりよく理解できるようになっています。このモデルはセンチメントを認識するだけでなく、単語が使用される文脈も理解し、金融用語に関連する深い意味を捉えます。その結果、FinBERTは従来の辞書ベースのモデルと比較して、金融領域において大幅に正解性を増したセンチメント分析を提供しています。

QIチームは、企業の四半期の決算発表からトランスクリプトのテキストを分析するためにFinBERTセンチメントモデルを採用し、NLP技術を使用して経営陣がポジティブまたはネガティブなセンチメントで話しているかどうかを判断します。QIチームの見解では、FinBERTは複雑な金融テキストを分析するための強力なツールとなり、市場予測や意思決定を支援していると見ています。


センチメントモデルの精度の比較

以下のチャートでは、ロフラン-マクドナルド辞書、ハーバードIV-4辞書、そしてFinBERTを使用したセンチメント分類を比較しています。

QIチームはフィナンシャル・タイムズから300件のニュース記事を分析し、それらを「ポジティブ」、「ネガティブ」、または「ニュートラル」として定性的に分類しました。その後、これらの3つのアプローチがこれらの文書をどれだけ正確に点数化したかを測定しました。結果は、3つのモデルのパフォーマンスについて非常に明確な違いを示しています。FinBERTは最も高い精度を達成し、81.7%のタイトルを正しく分類し、18.3%が誤りでした。ロフラン-マクドナルド辞書は54.0%の分類が正しく、46.0%が誤りでした。ハーバードIV-4辞書は最も低い精度で、正しい分類が45.0%、誤った分類が55.0%でした。QIチームの見解では、これらの結果は、FinBERTが伝統的な辞書ベースの方法と比較して、金融テキストにおけるセンチメントを正確に捉える優れた能力を持っていることを際立たせていると見ています。

定性的チェック:正しい分類と誤った分類の割合
出所: アクサIMグループ、2025年3月現在。

投資成果を改善する可能性のあるセンチメント分析の利用

定量的手法の運用者として、QIチームはNLPに基づくセンチメント指標を、モメンタムファクターを構築する重要な要素として活用しています。現在、当チームは決算発表のトランスクリプトから得られるNLPベースのセンチメントを自社独自のモメンタムファクターに組み込んでいます。センチメント指標は、他の要素と組み合わせることで、より包括的な株式選定アプローチを作成することができると考えています。

当チームは、銘柄選定の優位性を維持するために、モデルを継続的に強化する必要があると考えています。この分野での当チームの経験は、AIや機械学習の最新の進展を活かし、顧客にとって可能な限り最良の成果を提供できる良いポジションに立たせていると信じています。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は4月28日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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