アクサIMを名乗る者からの投資勧誘等にご注意ください。詳細はこちら

Investment Institute
視点:CIO

米国例外主義:世界一の経済大国は投資家の期待に応え続けられるか

  • 2024年4月30日 (5 分で読めます)
主なポイント
米国は、経済だけでなく株式および債券市場が、ここ数年にわたり他国と比べて高いパフォーマンスを上げてきました
支えとなる人口動態および継続するデジタル化などの構造変化の動きが経済成長を促進していると見ています
エネルギー転換への投資を促す政策措置もまた、潜在的な投資機会を支援するものと見ています

ここ数年間の米国経済は、様々な面で他国と比べて例外ともいえる好パフォーマンスを遂げてきました。大統領選挙の周期は、経済パフォーマンスを評価する上で好都合な区切りを提供してくれますが、バイデン大統領の就任以来、パフォーマンスは非常に好調に推移しています。

最新の公式データによると、米国経済は2020年末~2023年末にかけて、実質9%以上拡大しました。1  重要なことは、連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融引締め政策にもかかわらず、リセッション(景気後退)が起こっていないことです。米国の有権者が11月に投票に行く頃には、コロナ禍以降の現在の景気拡大は17四半期も続いたことになり、唯一わずかな低迷が見られたのは2022年の初旬のみです。

米国の名目国内総生産(GDP)は2020年末から2023年にかけて27%成長しました。言い換えれば、経済は3年間で3分の1近く拡大したことになります。米国の株式市場がこれまで好調に推移したのも不思議ではありません。ブルームバーグによると、2022年の金融引き締めの初期段階で大規模な調整が見られたにもかかわらず、同期間のS&P500指数のトータルリターンは31%でした。2

S&P500は2023年だけで、26%のトータルリターンを達成しています。しかし投資家は、米国が経済パフォーマンスや市場リターンの面で他の経済を上回り続けると期待できるでしょうか?

バイデン大統領の任期は、米国経済がコロナ禍から抜け出しつつある時期に始まりました。経済再開による初期の拡大がありましたが、これは他の先進国で見られた回復と同様です。しかし米国を他国よりも際立たせたのは、ロックダウンに対する強い経済循環的反応と、米国の成長率を押し上げたと思われる複数の重要かつ力強い構造的変化と政策措置が、同時に訪れたことです。財政政策が重要な役割を果たしてきたことは明白ですが、それはコロナ禍およびその後の総需要を押し上げたという側面だけでなく、インフラ支出の重点化にとっても同様と思われます。その結果、米国政府の借入が増加しましたが、財政刺激策がなければ、全体的にこれほどの経済成長はなかったと見ています。

Image
  • U291cmNlIGZvciBhbGwgZWNvbm9taWMgZGF0YTogPGEgaHJlZj0iaHR0cHM6Ly93d3cuYmVhLmdvdi8iPlUuUy4gQnVyZWF1IG9mIEVjb25vbWljIEFuYWx5c2lzIChCRUEpPC9hPiAvIDxhIGhyZWY9Imh0dHBzOi8vd3d3LmJlYS5nb3YvZGF0YS9nZHAvZ3Jvc3MtZG9tZXN0aWMtcHJvZHVjdCI+R3Jvc3MgRG9tZXN0aWMgUHJvZHVjdCB8IFUuUy4gQnVyZWF1IG9mIEVjb25vbWljIEFuYWx5c2lzIChCRUEpPC9hPg==
  • Qmxvb21iZXJnIGFzIG9mIEFwcmlsIDIwMjQ=

コロナ禍後の人口動態

過小評価されていると思われる構造的要因に人口動態があります。米議会予算局(CBO)によると、米国の人口は近年急増しました。3  総人口の増加率は2023年におよそ0.9%を超えたと推算されており、今年は1.2%、2025年は0.9%になると見られています。2024年~2054年にかけて、人口は3億4,200万人から3億8,300万人に増加すると予想されています。

今後の10年間で、人口の年間平均増加率は0.6%になると予想されています。出生率の伸びはコロナ禍の間に低下し最近回復しましたが、人口増加の最大の要因は移民の純流入です。このことが重要である理由は、人口の増加の主な原因が移民の純流入である場合、労働年齢人口の健全な成長を意味する傾向があるからです。それは、CBOの予測で期待されている点でもあります。この傾向は、他国に見られるような総人口の緩やかな増加、または、労働年齢人口以外の割合の増加(中国で見られるような高齢化)とは対照的な動きになっています。米国では、移民は労働力に参加することで総供給を増やし、住宅や家族を築くことで総需要を増やしています。

米国の移民は、他国と同様、政治的にデリケートなテーマと思われます。11月の選挙後に移民を規制する新たな試みが導入されるかも知れませんが、今の状況から後戻りはできないと見ています。米国は労働参加率がコロナ禍以前の水準を依然として下回っていながら、移民による労働人口の拡大という恵みを享受してきました。

このため2020年末以降、非農業部門で1,560万人を超える雇用が創出され、雇用創出の年間増加率は3.2%となっています。労働力の拡大により、失業率がコロナ禍前の最低水準を下回ることなく、この雇用の増加が可能になりました。2022年のインフレショックへの反応として賃金の上昇が加速しましたが、最近のデータによれば、約5.5%という総賃金の年間増加率は長期平均をそれほど大きく上回っているわけではないことが明らかになっています。

米国の人口動態は経済成長を促進すると思われます。米国の労働力が他の主要経済国よりも拡大したことで、強靭な成長が可能となり、強い競争力を維持することができたと見ています。労働市場が好調な状態にあることは消費者の支出を下支えし、この支出は2020年以降、年平均3.7%の実質成長率を実現しています。そして、この消費支出は企業の収益の糧となるものと見ています。

  • Q29uZ3Jlc3Npb25hbCBCdWRnZXQgT2ZmaWNlOiBUaGUgRGVtb2dyYXBoaWMgT3V0bG9vazogMjAyNCB0byAyMDU0

デジタル化の促進

経済の総合的なパフォーマンスを確認する上で、人口増加は重要です。同様に生産性の上昇も重要であると思われます。この点については、科学技術が主要な役割を果たしていると考えています。米国は主要な技術に関する有力企業の本拠地であり、多くの技術革新において先行者の優位性を享受しています。サービスの継続的なデジタル化および人工知能(AI)先導型テクノロジーの到来は重要であり、米国の企業はその道筋を導いてきました。新技術が総計でどの程度導入されたかについては、企業が投資資金を何に費やしているかによって判別することができます。

米経済分析局(BEA)によると、知的財産製品(ソフトウェアを含む)への投資支出は2020~2023年末にかけて24.7%増加しました。BEAによる産業成長率の推定では、IT部門は2021年に14.7%、2022年に7.5%、昨年は6.2%成長し、GDP全体の成長率2.5%の内0.33%を貢献しました。4

2022年に、金融引き締めに反応してGDPの成長が減速したことから、生産性はマイナス成長となりましたが、昨年は伸びが加速しました。BEAは今年7~9月期および10~12月期にかけて、労働生産性の成長率が前年同期比で2.3%および2.6%となると予想しています。労働者の増加に加え、労働生産性も上昇しているのです。

Image
  • PGEgaHJlZj0iaHR0cHM6Ly93d3cuYmVhLmdvdi9kYXRhL3NwZWNpYWwtdG9waWNzL2ludGVsbGVjdHVhbC1wcm9wZXJ0eSI+SW50ZWxsZWN0dWFsIFByb3BlcnR5IHwgVS5TLiBCdXJlYXUgb2YgRWNvbm9taWMgQW5hbHlzaXMgKEJFQSk8L2E+

政治的支援

成長促進要因は他にもあります。それはバイデン政権が導入した様々な政策であり、特に 超党派によるインフラ法やインフレ抑制法、半導体法があります。再生可能エネルギーを拡大し、道路や鉄道、デジタル・ネットワークに投資するよう設計されたプロジェクトのライフサイクルを考えると、これらの政策は成長の長期的な原動力になると見ています。昨年9月時点で450を超えるクリーン・エネルギーの新規または拡張プロジェクトへの投資が発表され、その総額は1,600億ドル以上になります。5  再生可能エネルギーは現在、米国の総発電量の25%を占めます。6

労働力の増加および科学技術、政策により可能になった生産性の伸びによって、供給側に柔軟性がもたらされましたが、この柔軟性は米国の投資家に好条件を与えています。つまり、株式投資家は、好調な企業収益性から恩恵を受けています。企業収益の伸びは減速したものの、GDPに占める企業収益の割合はコロナ禍の収束以降も12%以上を維持してきました。7  情報技術(IT)や医療などの部門では、他国の市場では得られない長期的な収益成長の機会を投資家に提供しています。持続可能性およびインパクトに焦点を置いた投資家にとって、米国の株式市場は、気候変動や生物多様性喪失の軽減に役立つ技術やサービスを開発している企業に投資するための多くの機会を提供していると、当社グループは考えています。

  • U291cmNlOiBVUyBEZXBhcnRtZW50IG9mIEVuZXJneQ==
  • VVMgRW5lcmd5IEluZm9ybWF0aW9uIEFkbWluaXN0cmF0aW9u
  • VS5TLiBCdXJlYXUgb2YgRWNvbm9taWMgQW5hbHlzaXM=

多様化した収益

債券投資家にとって、米国の社債市場は他のどの地域よりも多くの流動性、奥行き、多様性を提供していると見ています。米国企業財務の健全性は、投資適格市場およびハイイールド市場の双方で、信用品質の支えとなってきました。社債の信用スプレッドは2022年以降縮小しており、ハイイールド市場のスプレッドは、通常の長期的平均を超えるようなデフォルト率の上昇を考慮した水準ではありません。しかしこれは、借り手企業の質や良好な信用ファンダメンタルズ、健全なマクロ経済という背景を反映していると見ています。

この米国例外主義が今後も続くと期待することはできるでしょうか?米国連邦政府の借入れが不安定になる可能性と、債務コストの上昇から、この例外主義というシナリオには明らかな脅威があると思われます。地政学的状況は不確実であり、中国との貿易紛争は容易に悪化する可能性があります。米国内では、2020年の大統領選挙直後に見られた無秩序な権力移管のような社会不安が起こると、経済成長に有害となる可能性があります。つまり、簡単に言えば、インフレによりFRBは投資家が期待していたほどには早く利下げできない可能性があります。

それでも人口動態の論説は長期的なものであり、科学技術の論説も同様です。そして、責任投資に対する一部の反発にもかかわらず、米国は明らかに、脱炭素に向けて後戻りできない道を歩んでいると思われます。これらはすべて、投資家にとってプラス要因であると見ています。グロース株、社債、公共・民間のレバレッジド・ファイナンス市場が提供する好収益といったすべてが、企業「アメリカ」の強さのおかげで引き続き活況を呈するであろうと見ています。

米国は力強いパフォーマンスを示してきており、それが今後継続しないと予想することは困難であろうと思います。それはドルの対外価値を見ただけも推察できます。他の主要通貨に対して、ドルは20年来の高値に近い水準にあります。本稿執筆時点では、米国経済は他国よりも強く、米ドルは他通貨をしのぐ力があると見ています。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は4月29日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

本資料で使用している指数について

S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

※本資料中の指数等の著作権、知的財産権、その他一切の権利はその発行者に帰属します。

 

    ご留意事項

    本ページは情報提供のみを目的としており、特定の有価証券やアクサ・インベストメント・マネージャーズまたはその関連会社による投資、商品またはサービスを購入または売却するオファーを構成するものではなく、またこれらは勧誘、投資、法的または税務アドバイスとして考慮すべきではありません。本資料で説明された戦略は、管轄区域または特定のタイプの投資家によってはご利用できない可能性があります。本資料で提示された意見、推計および予測は掲載時の主観的なものであり、予告なしに変更される可能性があります。予測が現実になるという保証はありません。本資料に記載されている情報に依拠するか否かについては、読者の独自の判断に委ねられています。本資料には投資判断に必要な十分な情報は含まれていません。

    投資リスクおよび費用について
    当社が提供する戦略は、主に有価証券への投資を行いますが、当該有価証券の価格の下落により、投資元本を割り込むおそれがあります。また、外貨建資産に投資する場合には、為替の変動によっては投資元本を割り込むおそれがあります。したがって、お客様の投資元本は保証されているものではなく、運用の結果生じた利益および損失はすべてお客様に帰属します。
    また、当社の投資運用業務に係る報酬額およびその他費用は、お客様の運用資産の額や運用戦略(方針)等によって異なりますので、その合計額を表示することはできません。また、運用資産において行う有価証券等の取引に伴う売買手数料等はお客様の負担となります。

    アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社
    金融商品取引業者 登録番号: 関東財務局長(金商) 第16号
    加入協会: 一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人投資信託協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、日本証券業協会

    お問い合わせ先:TOKYOMARKETING@axa-im.com

    ページトップへ