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革新的なアルツハイマー治療薬がバイオテック全体に投資の波を引き起こす可能性

  • 2023年9月28日 (7 分で読めます)

キーポイント:

  • アルツハイマー病の治療における近年の進展は患者に新たな希望をもたらす
  • これらの治療をできるだけ多くの人に届けるにはまだ克服すべき課題がある
  • 商業上の大きな可能性と投資家にとっての新たな機会

アルツハイマー治療薬の相次ぐ開発は、この病気に苦しむ人々やバイオテック業界の状況を一変させる可能性があり、患者に新たな希望を提供すると同時に、新たな投資機会への扉を開いています。

アルツハイマー病は、記憶力や言語能力に徐々に問題が生じる認知症の一種で、単純な仕事をこなす能力を含め、脳機能全般に影響を及ぼします。アルツハイマー病は世界第7位の死因であり、この病気の治療に成功した例はほとんどありません。1

2022年11月に大きな進展があり、バイオテック企業のエーザイとバイオジェンがアルツハイマー治療薬レカネマブの臨床試験で良好な結果を得たと発表しました。レカネマブは、この病気の進行を遅らせるという点で一貫して成功を収めた初めての薬です。2

その後、アルツハイマー病の治療に関して期待を抱かせる進展がさらに起きていることは患者にとって、またバイオ医薬品・ヘルスケア企業の投資家にとって非常に良いニュースです。

治療の新たな画期的一歩

米国食品医薬品局(FDA)が2023年7月、同年1月に迅速承認していたレカネマブ(商品名レケンビ)を完全承認したことは重要な画期的一歩となりました。FDAはレカネマブを「アルツハイマー病患者にとって安全で有効な治療薬」3 とし、販売先として最大の市場になると見込まれる米国での販売を許可しました。

米国の高齢者に医療保険を提供する米メディケア・メディケイドサービスセンターは、適格な患者にこの薬を投与する場合に保険を適用する旨を確認しました。4 登録用データ収集要件など物流上の課題がいくつかあるものの、これは多くの患者にとって朗報であるとともに、大きな販売機会を提供し、この治療薬の有効性を巡る当初の報道に関して投資家が感じた不確実性の多くを取り除きました。ある分析によれば、この治療薬は2023年~2028年に合計129億ドルもの売上を期待できます。5

他の地域についてみると、日本はレカネマブの正式承認に向けた第一段階を通過しました。6 また、バイオジェンとエーザイは欧州、中国、カナダ、英国で承認申請を提出しました。7 日本と中国では、この申請は優先審査の対象として指定されています。8 この手続きは重要な臨床的価値を有するとみなされる新薬の迅速な承認を目的としています。

同様に、英国では、レカネマブは「革新的なライセンシングとアクセスパスウェイ(ILAP)」の対象として指定されています。この手続きも革新的な治療薬が市場に出るまでの期間を短縮することを目的としています。9

しかし、新たなアルツハイマー病治療薬として話題になっているのはレカネマブだけではありません。イーライリリーは、同社の治療薬ドナネマブが第3相臨床試験で良好な結果を得たと発表しました。この治療薬は、アルツハイマー病の原因である脳内のアミロイド・プロテインを除去することにより、認識力の低下速度を35%遅らせることができました。この薬は大きな効果を発揮し、臨床試験の患者の半分は1年後に治療を中止することができました。10

現在、187の臨床試験で141のアルツハイマー病治療薬の評価が行われており、11 その中にはプロシーナやアキュメンなどの小規模なバイオテック企業による初期の治験も含まれています。レカネマブ自体は、スウェーデンの小さなバイオテック企業であるバイオアークティックと、規模ではそれをはるかに上回るエーザイとの研究提携から生れました。12

重要な影響

これらの新たな進展はアルツハイマー病との闘いの重要な最初の一歩です。こうした治療薬は、短期的に患者を助けるとともに、有効な治療が存在し得ることを示し、この病気の進行プロセスに関する知見を提供します。これを受けて、規制当局の間でより幅広い議論が行われるようになり、その結果、規制環境がより支援的になり、小規模な会社が初期段階の革新的研究開発を継続するための新たな道筋が整えられる可能性があります。

こうして、第2、第3世代の治療薬が創出される可能性があります。こういった治療薬は、単独で、または複数の治療薬を組み合わせて使うことで、患者により良い結果をもたらすことができ、患者の家族や医療制度の負担を減らすことができます。ひいては、投資家にとって新たな投資機会が生まれます。

アルツハイマー病を含む認知症の世界的コストは現在、約1.3兆ドルと推定され、この約半分は無報酬の私的介護の経済的価値によるものです。13 このコストは、世界人口の高齢化に伴い増える可能性が高いとみられます。現在、世界で認知症患者数は約5,500万人ですが、2050年には1億3,900万人に達する見込みです。14

大半のアルツハイマー患者は65歳以上ですが15 、この病気は高齢者世代に限られてはいません。認知症調査慈善団体の英国アルツハイマー・リサーチは、2015年以降に生れた女性の3人に1人、男性の4人に1人が認知症を発症するという深刻な状況を明らかにしました。16

克服すべき課題

もちろん、開発の最終段階にあり実績を積んできた治療薬であっても克服すべき大きな課題が残っています。

普通の患者が入手できるようにするには、治療薬の費用が英国の国民保健サービス(NHS)のような医療保険制度でカバーされる必要があると思われます。しかし、アルツハイマー病と認知症に係る世界全体の負担の約60%は低中所得国で発生しており17 、これらの国にとって医薬品の入手は容易でない可能性があります。

英国では、適切な診断や処置を確保できる診断施設や不可欠な安全性のモニタリングなどの必要なインフラが欠如しているため、商業的な導入には課題があるとみられています。

もう一つのハードルは、レカネマブとドナネマブは今のところ、医療施設で定期的に(前者は2週間に1回、後者は1か月に1回)点滴を通じて投与される必要があるということです。ただし、レカネマブについては、自宅での皮下注射による投与を可能にする取り組みがすでに始まっています。18

患者、そして投資家にとっての新時代

こういった克服すべき課題はあるものの、これらの薬の開発は、バイオテックや医療の分野で待ち望まれた、非常に喜ばしい大きな進展です。これらの薬は患者やその家族、将来この病気を発症する可能がある人々に治療と希望を提供します。また、上述したとおり、商業上の機会も大きいと見込まれます。

アルツハイマー治療薬の市場はかなりの規模とみられ、世界人口の老齢化などの長期的な基本構造によって下支えされています。この破滅的病気の治療における新展開は患者治療の新時代の到来を示唆しており、投資機会が次々に生じる可能性があります。

 

企業への参照は例証のみを目的としており、投資の推奨と見なされるものではありません。

(オリジナル記事は9月14日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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