ロボテック戦略月次レター:半導体関連銘柄がけん引
ロボテック戦略月次レター(2022年11月の振り返り)
半導体関連銘柄がけん引
先端プロダクトや産業向けアナログ半導体関連が堅調、「新たな石油」としての長期的な構造的需要も追い風に
11月のグローバル株式市場(MSCI ACWI、米ドルベース)は上昇しました。当戦略は、半導体関連銘柄の堅調なパフォーマンスに加え、ヘルスケア関連の組入銘柄アビオメッドがジョンソン・エンド・ジョンソンに買収されると発表されたことなどを受けて市場全体を上回るパフォーマンスとなりました。7-9月期の企業決算では、市場全体では約50%の企業がアナリストの業績予想を上回ったのに対し、当戦略の組入銘柄については75%超の企業がアナリスト予想を上回り、業績好調であることが確認できました。
世界各国のインフレ率は引き続き高水準となっており、特にエネルギー価格がインフレ率を押し上げている欧州で顕著となっています。しかしながら、インフレ鎮静化の兆しが見えつつあり、一部の指標で低下し始めているものもあります。この傾向が定着するかを判断するのは時期尚早であり、インフレ正常化の道筋はなお不透明であるものの、最悪事態は過ぎ去ったと思われ、利上げペースも減速を始めると見られます。
なお、運用チームは11月にシカゴで開催されたインダストリアル・カンファレンスに参加しましたが、出展企業からは比較的前向きなトーンの発言が聞かれました。インフレとマクロ経済環境の悪化という困難な状況が投資家マインドを支配しているものの、多くの企業は不確実性の中にも良いニュースがあることを強調していました。サプライチェーンの混乱時に輸送コストの上昇は製造業の企業の利益を圧迫していましたが、過去数四半期にわたって輸送コストは大幅に低下しました。加えて、一部において部品の供給が過去に比べて改善していることを指摘する企業もありました。これは部品不足問題が完全に解消されたことを意味するわけではありませんが、改善の兆しが見え始めたことにより、企業は工場における生産管理をより効率的に行えるようになると見られます。
不安定な地政学的状況下、半導体への注目高まる
当戦略のポートフォリオマネージャーであるトム・ライリーとアクサIM資産運用研究所議長のクリス・アイゴーによる記事「半導体が地政学的問題となっている理由、そしてそれが投資家に意味すること」がウェブサイトに掲載されていますので、ぜひご覧ください。半導体セクターは、その世界的重要性および政治ツールとしての利用を反映して「新たな石油」と呼ばれており、構造的需要の下支えにより売上高は2030年までに1兆ドル(約136兆円)に達する可能性があります。地政学的状況は依然として不安定ですが、テクノロジーシフト、政策措置、消費者需要があいまって、半導体セクターには追い風になると当社は見ています。
半導体受託製造大手TSMCは12月上旬、米アリゾナ州に最先端半導体の工場を新設すると正式に発表しました。総投資額400億ドル(約5兆5,000億円)にのぼる拠点建設の発表式典には、バイデン米大統領、アップルのティム・クックCEO、AMDのリサ・スーCEO、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOも出席しました。米政府はTSMCに補助金を出し、米国内の半導体生産を後押しします。半導体製造への直接投資に加え、米国における自動化関連投資も加速すると考えます。
ポートフォリオの動向
当月はヘルステック企業アビオメッドがジョンソン・エンド・ジョンソンにより約50%のプレミアム(発表前の株価対比)で買収されると発表されたのを受けて全額売却しました。アビオメッドは心臓発作など心疾患後の回復を助ける埋め込み型デバイスを製造しており、当戦略では2019年夏以降、組み入れていました。2022年の同社の株価はヘルステック分野の他社と比べて弱含みで推移していましたが、戦略的買収を行う企業にとって現在の株価は魅力的な水準にあると映っていることは心強い限りです。
なお、当月はドイツの産業コングロマリット、シーメンスが良好な業績とコンセンサス予想を大きく上回る2023年業績ガイダンスを発表し堅調なパフォーマンスとなりました。この成長見通しは好調なデジタル・インダストリーズ事業と健全な受注高が支えとなっています。
半導体関連銘柄も堅調なパフォーマンスとなりました。中でもIoT関連半導体のシリコン・ラボラトリーズ、高性能計算(HPC)半導体のアドバンスト・マイクロ・デバイセス(AMD)およびエヌビディアが好調でした。TSMCは、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社が同社株に投資していることが明らかになり株価が上昇しました。また、未確認情報ながらTSMCが電気自動車大手テスラから完全自動運転車向けに次世代半導体の大型受注を受けたとの記事も株価を支えました。さらには、オン・セミコンダクター、インフィニオン・テクノロジーズ、マイクロチップ・テクノロジーなど自動車や産業セクター向けのエクスポージャーの大きいアナログ半導体企業も堅調なパフォーマンスとなりました。
一方、ネットワークテスト機器のビアビ・ソリューションズ、3Dセンサーなどの技術を提供するルメンタム・ホールディングスは軟調なパフォーマンスとなりました。
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