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今が新興国債券に注目する好機か

  • 2023年5月22日 (5 分で読めます)

キーポイント

  • 新興国債券は、新興国国内の金融引き締めの終わりと中国の経済再開から恩恵を受けると予想される

  • 新興国においては、インフレが低下し、財政収支は改善を続け、コモディティが引き続き支えとなると見られる

  • 新興国債券の利回りは歴史的に見て魅力的であり、企業のファンダメンタルズは全般的に堅調

  • 新興国債券市場の不均質な特性を考慮すると、アクティブかつトータルリターン運用アプローチが、機会発掘に有効とみられる

先進国市場における景気後退の懸念に多くの投資家の注目が集まっており、新興国に芽生えている成長ストーリーを認識していない可能性があります。一部の新興国では今や国内インフレが低下し、中国の成長が新興国ユニバースの他地域を潤し始めていることから、投資家は、現在のサイクルにおける新興国債券とその状況に対する見方を再検討すべきでしょう。

米国の金利が著しく上昇したことで、新興国債券にとって容易な環境ではありませんでした。ハードカレンシー(主に米ドル)建て新興国債券にとって、主な逆風となりました。しかし米国金利は今やピークに達しつつあるとみられ、利回り上昇の勢いは今後弱まるでしょう。金利がピークを迎えるにつれて米ドル相場が弱まり、これにより新興国通貨への圧力を軽減すると考えられます。

昨年末に中国が経済を再開して以来、消費者活動が改善しており、特に旅行および小売セクターで成長が加速しています。これが続いた場合、結果的に成長トレンドが先進国から中国に向かうローテーションが起きると当社では予想しています。これは、中国との貿易の受益者である他の新興国、特にアジア新興国にとってメリットとなります。中国の再開はまた、世界のコモディティ価格にとっても下支えとなるでしょう。特に金属輸出国の新興国にとってさらなる押し上げ要因となるでしょう。

こういった成長の潜在性は、新興国の財政状況が後押ししています。新興国は、新型コロナウイルス関連での政府債務増大や最近の借り入れコスト上昇を考慮しても、財政状況は依然としてG7諸国よりも全般的に良好です。 

新興国、金融引き締めサイクルで先行

優れた財政状況の恩恵だけでなく、新興国に関してもうひとつ興味深い側面は、インフレに対するアプローチです。多くの新興国中央銀行は、先進国中央銀行よりはるかに早い2021年にすでに、利上げを進めていました。その結果、インフレが多くの国でピークを越えたとみられ、多くの中央銀行が利上げサイクルの終了段階にあるか、その付近にあります。

新興国のインフレ率(%)

(青が世界平均、オレンジが中南米、灰色が中東欧、黄色がアジア新興国)

Image

出所: アクサIM、Bloomberg、2023年2月15日時点

たとえば中南米では、前年比の平均インフレ率が2022年6月末の10.2%から現在では7.7%に下がっており1 、中南米新興国の積極的な利上げによりインフレ率がすでに下がっていることを示しています。これに対して、先進国のインフレ率は今やっとピークに達しつつあります。

もちろん、新興国のような広範なアセットクラスを見るときには常に異常値があり、アルゼンチンのインフレ危機はその一例です。インフレ率の上昇は同国で2018年以降進行していた経済危機を反映したもので、広域のトレンドではなく、したがって中南米全体に広がってはいません。異常値を別にすれば、新興国の中央銀行はインフレ率の低下により、今年後半にも利下げできるよいポジションにあります。それが実現すれば、成長を支えるもうひとつの要因になるでしょう。

新興国の各国の固有状況を最大限に活用

アルゼンチンの状況は、当社が新興国に対してベンチマーク指数のエクスポージャーに制約されず、アクティブかつトータルリターン運用アプローチを考える理由を端的に示しています。アセットクラスの中で選別する能力は、新興国の不均質な特性ゆえに重要です。一部の新興国は確かに脆弱ですが、多くの新興国は非常に堅固なファンダメンタルズと成長展望を備え、投資適格と評価されています。同じ地域内において「一律」のアプローチが通用せず、国によって著しい違いがある場合もあります。当社はたとえば中南米では、議会が分断されていて、急進的な政策の実施が考えにくいコロンビアを選好しています。同じ中南米でも、ブラジルは政治・財政面でのリスクが大きいと考えられ、あまり魅力的ではありません。ルラ政権は大規模な財政拡大の導入を誓約しており、これが財政を圧迫することになるでしょう。新興国の他地域では、脆弱な国の一部が国際通貨基金(IMF)から支援を受けたことで、2022年初め以降困難になっていた市場アクセスの緩和に役立ちました。

新興国社債市場では、企業のファンダメンタルズは全般的に堅固で、投資適格格付け企業で顕著です。発行体の信用格付けが国債の格付けによって抑制されている場合があるため、格付けが必ずしも企業のファンダメンタルズを反映していない場合、チャンスを発掘するために詳細な分析の実行が重要です。これはトルコで証明されています。同国では政府がインフレ高騰と通貨の下落に直面し、大きな問題となっていますが、米ドル建てで収入を得ている輸出大企業は、コストは現地通貨建てであるため、現地通貨が下落すると利益率が上がり、有利になる可能性があります。 このように、新興国社債市場は投資家にとって魅力的な機会を提供すると当社は考えます。

デフォルト予想はポジティブな見通し

ロシア、ウクライナ、そして中国の不動産業界における極度に逼迫した銘柄を除いては、潜在的リターンの評価における重要な要素であるデフォルト予想は、ハイイールド社債市場に関して2.1%に下方修正されました。2 このポジティブな修正は、今年に入って世界的な成長動向がより底堅くなったことがあり、社債市場全体で改善しているファンダメンタルズを下支えしています。

インカムの分散

インカムの強化を求める投資家にとって、新興国債券は現在、魅力的な利回りを提供しています。JPモルガン・ハードカレンシー・ソブリン指数の利回りは現在8.5%となっており、そして社債市場の利回りは7.2%になっています3 。下のチャートが示すように、投資適格債およびハイイールド債の銘柄を含めたクロスオーバー・クレジットにとって、バリュエーションはとりわけ魅力的であると当社は考えます。

投資適格債とハイイールド債の混合指数

(青がハイイールド債、水色が投資適格債。点線はそれぞれの長期平均)

Image

出所:アクサIM、Bloomberg、 2023年3月31日時点

全体的に見た場合、新興国債券は投資家にとって追加リスクに見合うものであり、債券ポートフォリオに分散ももたらすと当社は考えます。

(オリジナル記事は4月24日に公開されました。こちらをご覧ください。)

 

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