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Investment Institute
マーケット見通し

2025年さようなら、ようこそ2026年


ドナルド・トランプ米大統領の政策をめぐって、2025年は市場では多くの考察がされてきました。貿易関税の導入は同大統領の最も重要な政策決定でしたが、その影響がどのようなものなのかを完全に評価することは依然として困難です。それに関して、AXA IM Core Investments のCIOであるChris Iggoは、以下の見解を示しています。

そうした状況ながらも、世界経済は底堅く推移しており、それが高い投資リターンの実現に貢献しています。今後は、経済成長の源泉(例えば、欧州、日本、中国における内需の増加)が変化する可能性があるとみています。一方で、重要な問題は、米国の最近の雇用拡大の減速が、景気低迷が深刻化する兆候となるかどうかということと考えています。大きな問題にならないながらも、ノイズは発生するでしょう。

  • 主なマクロ経済テーマ – 米国雇用市場の停滞により、さらに利下げが行われるのか?
  • 主な市場テーマ – 株式市場は人工知能(AI)以外に相場をけん引する材料があるか?

インフレーション

先進国経済のインフレ率は2から3%の水準に落ち着いてきたように見えます。これは、コロナ禍以前のインフレ基準2%を維持している中央銀行にとって、心地よいものではなさそうですが、インフレ率をさらに低下させようという意志は実際にはなさそうに思われます。市場は楽観的であり、インフレ連動債市場でのブレークイーブン・インフレ率(BEI、市場の期待インフレ率)は、米国では2.0~2.5%、ユーロ圏では約2%、英国では約3.0%(小売物価指数に基づいた数値であり、約2.5%の消費者物価指数上昇率と整合性があります)になっています。このBEIには、来年は利上げを行う必要がないまま、インフレ率がもう少し低下するという期待が含まれています。関税が米国のインフレに与える影響のように、インフレの道筋があまり明確ではない地域でさえ、市場は楽観的な見方を続けています。

現在(執筆時)の米国インフレ見通しは、(政府機関閉鎖の影響で)10月と11月の消費者物価データがそろっていないために、混乱しています。しかし、インフレ率、コアインフレ率ともに、年末までに3.0%を下回ってくる可能性があると思われます(10月のインフレ率は発表されていませんが、米労働省が12月18日に発表した11月のインフレ率は前年比2.7%でした)。ユーロ圏について、年末の水準は2.0%付近と予想されており、英国の11月インフレ率は市場予想よりも低い3.25%でした。米国とユーロ圏のインフレ率は2024年末時点を比べて、穏やかに低下しています。英国については、昨年の政府予算の影響がまだ続いていますが、前年比較でこの影響が払しょくされると、英国のインフレ率はイングランド銀行(BoE)の目標値2%に低下する余地があるとみています。

金利

主要中央銀行の政策金利はおよそ2.0~3.5%付近になると市場で見込まれており、多くの地域で、一般的に中立金利(景気を刺激も冷やしもしない金利水準)と考えられている水準に近づいています。中立金利は、米国では3.25%をわずかに超えた付近にあり、ユーロ圏では2.0%英国では3.25~3.5%付近にあるとみられています。BoEは12月18日に政策金利を3.75%に引き下げましたが、最近のインフレ率の低下と合わせて、英国には利下げの余地があるとみています。このように市場では、各国間の金利が収れんすることがある程度織り込まれています。例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)と日銀の政策金利の差は、2022年の利上げサイクル時の最高値では、560ベーシスポイント(bp)ありました。現在の市場状況では、来年末までに両国の金利差が195bpにまで縮小することが織り込まれています。両中央銀行の公式のコメントでは、インフレリスクを警戒しながら、場合によっては、利上げする可能性もあると述べています。これと同様のコメントを欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事が述べています。しかし、すぐに政策方針を転換するほどのタカ派的な見方ではありません。

株式市場

今後の見通しは、リスク資産が堅調なパフォーマンスを継続していくには、追い風となりそうです。株式市場について、業績予想は好調なままです。S&P500では、12ヶ月予想一株当たり利益の成長率は、今年5月時点では11.1%と見られていましたが、現時点では14.4%と見られています。株式アナリストの予想を集計するInstitutional Brokers' Estimate System(IBES)によれば、利益成長の予想値は2025年を通じて、米欧、日本、新興国では上昇していました。市場が予想するように、金利が安定する場合には、マルチプル(企業の特定の財務指標と株価等との比較倍率)はそれほど大きくは変化せず、その結果、株式市場のリターンは利益成長率と一致すると考えられます。セルサイド(証券会社や投資銀行)のエコノミストやストラテジストとの通常会議を受けてみると、こうした見方は市場の総意と一致しています。

リスクとリターン

こうした好ましい見通しには数々のリスクがあります。その一つとして、インフレには鎮静化よりも上昇する可能性があり、そのため、債券市場の現状のBEIは低すぎるかもしれないという見方です。その他、少し長い期間を見ると、実質金利が上昇するリスクがあるという見方です。この見方の根拠として挙げられているのが、高い政府財政赤字、防衛支出の増加、保護主義的な経済政策による世界経済の再変更の可能性(欧州や日本、中国など経常黒字地域で内需に傾斜)などです。AIやそれに関連するエネルギーシステムの構築への高水準の投資支出は資本需要を増加させています。利用可能な世界の貯蓄に比較して投資が増加していくことは実質金利が上昇することにつながるとみています。実質利回りが上昇し、インフレ率が上昇すると名目利回りが上昇することになります。その場合、起こりうるシナリオとして、現状よりもイールドカーブ(金利曲線)がスティープ化(急勾配化)し、長期債利回りが上昇します。しかし、現状、長期国債利回りに対するセンチメント(市場心理)があまり悪化していないことは注目に値することとみています。長期国債市場のリターンは今年プラスとなっています(10年以上の米国国債市場のリターンは執筆時現在5.2%)。

政策

政策は2026年にあらためて重要となるでしょう。世界的には、ウクライナとロシアの和平交渉が妥結すれば、市場にはプラスの材料となるでしょう。また、米国政府は貿易の緊張を高めようとする意欲は無いように見えます。しかし、このような姿勢は、国際関係に関して出来事が利他的に動いたことから生じているのではなく、また、関税が米国の貿易バランスを改善しているから生じているのでもなく、むしろ中間選挙に向けての動きとみています。費用負担の可能性について多くのレポートが出されていますが、これは、関税の影響が所得の低い家計ほど消費財での負担が重くなるような品目の価格に現れているとするものです(11月の家庭用品のインフレ率は4.6%以上となっています)。一方で、ガソリン価格は軟化しており、住宅関連費用のインフレも峠を越えたように見受けられます。しかし、ホワイトハウスは来年11月の中間選挙に向けて有権者の支持を高めるための政策を打ち出す可能性があることは考えておくべきことでしょう。

赤字

世界の様子には興味深い点があります。世界の不均衡が逆転したという証拠は見当たりません。ブルームバーグのデータや最新の経済協力開発機構(OECD)の経済見通し[1]を見ると、米国の経常赤字はGDP比4%余りとなっています。日本の経常黒字は増加を続けている一方で、ユーロ圏の総合対外黒字はGDP比3%超です。また、関税は米国の貿易収支の状況を複雑にしています。貿易赤字は2024年に比べてわずかに改善したものの、依然として大幅なままです。米国が要求する貿易の誓約や設備投資の流入は、いずれにせよ国際収支に影響が現れるまでに時間がかかります。今のところ、米国は依然として主要な赤字国であり、巨額の資金を吸収して、債務市場や株式市場へと流入させています。外国投資家が米国資産を買わなくなるリスクは依然として低いとみています。しかし2026年には、ドルを下支えしてきた金利が低下してきていることを踏まえると、2026年にドルが弱含む可能性があるとみています。


見通し:好悪まちまち

市場を見ると、見通しにははっきりとした高い確信がみられません。S&P500 指数が8000ドルに達する可能性があるとする予測がある一方で、バリュエーション(投資尺度)や市場集中度に懸念があるという見通しもあります。来年の株式市場は、欧州の年になるといういつもの楽観論がありますが、それにはドイツの支出計画によって勢いを得るとする成長見通しが伴っています。ストックス欧州600指数の年初来トータルリターン(ユーロ建て)は執筆時現在23%を超え、米国のS&P 500(ドル建て16%)とナスダック総合(ドル建て20%)を上回るパフォーマンスを示しており、これは過去20年間で4年に一度しか起きない状況です。この状況が再び起こるためには、米国企業の業績成長が減速する、または、欧州企業の業績成長がマクロ経済環境からみるとありえないほどの水準で加速する、または、欧州株式市場と米国株式市場でバリュエーションの差が縮小することが必要となるでしょう。最も可能性があると思われる道筋は、米国のマクロ経済に対する見方が悪化する場合でしょう。従って、雇用市場を注意深く見る必要があるとみています。遅れて出された今年10月と11月の雇用統計は、年間を通じて雇用の拡大が停滞していることが示されています。米国経済の雇用は、昨年200万人超増加したのに対して、今年は約49万人の増加にとどまっています。雇用の拡大は年間でほぼゼロになりそうであり、これは通常、リセッション(景気後退)の瀬戸際にのみ見られる状態です。

雇用市場は下落リスクの兆しとなっているのか?

いつものように、投資家は長期的な見方をする必要があると考えています。株式市場は近年、平年を上回るリターンを上げています。特に米国の株式市場はAIにけん引されて好調なパフォーマンスとなっています。債券市場は正常な動きとなり、引き続き実質でプラスのリターンとなっています。主要経済を見ると、コロナ禍を除き、業績見通しにとってリスクとなるリセッションに陥っていません。最も可能性があるとみているのは、米国の雇用統計が軟調を示したことを受けて、インフレ率が目標を超えていても、FRBが追加利下げに向かうという状況です。こうした場合でも、分散投資がいつものように重要とみています。もしリセッションになった場合、株式市場はある程度下落するとみていますが、債券市場の利回りは低下しすぎて再び投資機会が薄れてしまうかもしれません。来年は市場予想とは異なる動きが多々あるかもしれません。

素晴らしい年末年始の休暇シーズンをお過ごしください。また、充実して平和な2026年をお迎えくださいませ。

パフォーマンス等のデータの出所:LSEGワークスペース・データストリーム、ICEデータサービス、ブルームバーグ、アクサIMグループ。特に記載がない限り、2025年12月18日現在。

企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。また、記載内容は、2025年12月18日現在の資本市場を説明したものであり、特定の金融商品への勧誘や推奨を意図したものではありません。

(オリジナル記事は12月19日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

※本ページで使用している指数について

S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

ナスダック総合指数:米国NASDAQに上場している全銘柄の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

ストックス欧州600指数:STOXX社が算出・公表している欧州先進国における株式市場の600社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

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