
ロボテック戦略: 人型ロボットがもたらすロボット技術の進化と未来
KEY POINTS
フィジカルAIは、もはや研究室やSFだけの概念ではありません。フィジカルAIは、機械が物理的な世界を感知し、学習し、行動する新興の産業の主軸であり、その転換の頂点にはヒューマノイドロボットが位置しています。人間のようなやり取り、柔軟な作業遂行、日常生活の場での存在感がヒューマノイドロボットの将来性を示しており、想像力を駆り立てています。
しかしヒューマノイドロボットの商業的実現性は、メディアの報道が示唆するほどに速くは進まず、むしろ時間をかけて、系統的に進展する可能性が高いとみています。したがって、現在(執筆時)の投資可能なユニバースは、個々の“ロボット勝者”から構成されるものではなく、産業全体でロボットの普及を可能にする技術の積み上げとサプライチェーン(供給網)が中心となります。そしてロボテック戦略にも実際の投資機会を創出しています。
モメンタム(勢い)と市場規模
エヌビディアのような大手テクノロジー企業や半導体メーカーは、フィジカルAIを数千億ドル規模のビジネス機会と見込んでおり、ヒューマノイド関連ロボットへの投資家の関心を新たにかきたてています。.1 ヒューマノイドロボットの開発は、知覚モデル、モーション・コントロール(動作制御)、そして統合型AIプラットフォームの進歩により、つい数年前まで存在していた技術的障壁が低減しています。大手企業の中には、物流、工場の作業支援、限定的なサービス環境といった自社内用途のために、ヒューマノイド・システムの開発・試験を開始している企業があり、そうした企業は需要をとらえて、何が機能し何を改善すべきかを見極め、結果として製品提供へと進化させていこうとしています。

出所:ゴールドマン・サックス、2024年1月8日2、2024年2月24日3
- {https://www.nasdaq.com/articles/robotics-physical-ai-here-and-its-coming-50-trillion-market;Robotics-Physical AI Is Here and It’s Coming for a $50 Trillion Market}
- https://www.goldmansachs.com/pdfs/insights/pages/gs-research/global-automation-humanoid-robot-the-ai-accelerant/report.pdf
- https://www.goldmansachs.com/insights/articles/the-global-market-for-robots-could-reach-38-billion-by-2035
実演効果と普及時期の現実性チェック
ヒューマノイドロボットの実演風景を公開していくことによって市場が活性化されている一方、現実の厳しさも露わになってきました。初期の時代では遠隔操作に頼ったり、極めて限定的な環境で行われていたり、完全自動化には依然として技術的・規制的な課題があることが明らかになりました。また、年間数千台を生産する好調なメーカーですら、潜在需要のごく一部にしか製品を供給できません。商業規模で普及させるには、信頼性の向上、コスト削減、部品の標準化、ソフトウェア・安全・サービスを支えるエコシステムの整備が必要になるとみています。
価値が最初に現れる場所
ヒューマノイドロボットは、人間に近い形状が重要となる場面ではっきりとした価値を作り出す可能性があるとみています。これは主に、人間の能力を想定して設計された環境で作業するロボット、すなわちその場では人間の形状が最適に機能するということです。例えば、倉庫ではヒューマノイドロボットが人間と並んで作業するという実証実験を行っており、そこでは単純で繰り返しの多い作業の一部で人間の作業を補完しています。
並行して、大量のロボットを採用する場合は今後も専門的なプラットフォームを用いることが多いでしょう。無人搬送車(AGV)、ロボットアーム、協働ロボット(コボット)などの形態のロボットは、限定的な作業をこなすには依然として安価で効率的です。したがって、ヒューマノイドロボットが幅広く普及していく現実的な道のりは、段階的で不均一なものとなるでしょう。つまり、まずは専門的な活用から始め、後により幅広い機能へと展開するとみています。
現在の投資可能な経路
最も直接的かつ長期的な投資機会は、ロボットメーカーそのものではなく、ヒューマノイドロボットを活用可能にする技術にあると考えています。
しっかりとした知覚とナビゲーションを提供するビジョンシステム(視覚システム)、アクチュエータ(エネルギーを機械的な動きに変えて作動させる装置)やセンサーを駆動するアナログ・パワー半導体、滑らかな人間の動作を模倣する精密運動制御とアクチュエータ、知覚・計画・安全を調整するAIソフトウェアなど、これらの構成要素は、ロボットの種類や最終市場を超えて拡大できる重要な要素とみています。これらの部品のサプライヤー(供給企業)に投資することにより、産業用オートメーション、ロジスティクス、医療用ロボット、消費者向けサービスロボットなど、より広範な成長を捉えるとともに、単一製品への投資で負う二者択一的なリスクを軽減できると考えます。
ロボテック戦略が市場上昇をとらえる方法
アクサIMが構築したロボテック戦略において焦点を当てている領域は、ロボットの普及に伴い継続的な収益を生むと考えている分野です。具体的には、マシンビジョンの主要企業、アナログ・パワー半導体メーカー、モーション・コントロールの専門企業、プラットフォームやコネクティビティ(機器とネットワークの接続)の提供企業に戦略的に投資しています。これらの企業は様々な最終用途の市場で恩恵を得る位置にあり、単一製品に依存するリスクを低減しつつ、フィジカルAIの長期的成長に対して影響力を保つことができます。社内業務向けにヒューマノイドロボットを開発する大手テクノロジー企業も、社内での展開によって実世界での検証を加速させ、商業化への道筋を短縮できるため、有力な成長可能性を持っているとみています。
ヒューマノイドロボットはしばらくの間、フィジカルAIを代表していくと考えられますが、今日の投資機会の多くは、ロボットを信頼でき安全で拡張性のあるものにする重要技術(半導体チップ、ビジョンシステム、プラットフォームソフトウェア)を構築している企業にあると考えています。
アクサIMのロボテック戦略は、ヘルスケア、産業用オートメーション、ロジスティクス、サービス・ロボット工学の分野で、その重要技術の成長を捉えることを目的としています。すでに研究開発を再現可能な収益に変換している革新企業や主導的企業への投資を組み合わせることで、この目的を実現することを目指します。試作タイプから普及型ロボットツールへの移行に関わりたい投資家にとっては、ロボテック戦略は想像力と持続可能な商業的機会が交わる戦略的な道と考えています。
企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
(オリジナル記事は10月01日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
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