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視点:CIO

「社会」がESG投資で最も重要な要素か

  • 2022年10月27日 (5 分で読めます)

キーポイント

  • 社会的要因を統合することで、より持続可能な長期投資ポートフォリオを構築できるだろう。

  • 従業員を大切に扱い、事業の社会的コストを最小限に抑える企業は、その恩恵を享受するとともに、一般的な社会福祉の向上にも貢献すると考えられる。

  • アクティブ運用の責任投資は、社会的要因が優れた長期的持続可能なリターンにいかに貢献するかを理解するための鍵である。

経済学とは社会科学です。経済学は、人々がどのように希少な資源を一元的に管理し、基本的ニーズやその他のニーズを満たす物品やサービスを生み出すかを研究する学問であり、企業は経済的・社会的エコシステムの重要な構成要素です。

企業そのものが社会的な構成要素なのです。企業は独自の組織を持ち、売買を通じて他者と交流し、社会の一般的な機能と福祉に貢献しています。投資家にとって、環境と人間の経済行動との相互作用を考えることが重要であるように、生産と消費がどのように社会的利益にインパクトをもたらすかを考えることも同様に重要です。投資分析に「社会的」なプリズムを持つことが、良い投資となります。人々の実質所得が高いインフレ率に直面している今、投資先企業のソーシャルフットプリント(ソーシャルインパクトの指標)を理解することは、これまで以上に重要です。

株式市場における長期投資リターンは、企業の売上高成長率と収益性に左右されます。クレジット市場では、長期投資リターンはキャッシュフローの大きさと発行体のバランスシートの健全性によって決定されます。そして、これらすべての背景には、費用と売上高のダイナミクスがあります。企業の費用曲線と売上高曲線、そしてより広範な事業と戦略を理解する上で社会的要因の検討事項を統合することは、投資家にさらなる洞察を与え、その結果、それがより持続可能な長期投資ポートフォリオを構築するのに役立つのです。

これには3つの側面があります。費用曲線上で特定できるリスクと効率性の理解、商品やサービスの社会的魅力による売上高成長率押し上げの可能性の評価、およびより大きな社会的利益への非財務的貢献の検討です。すべての経済活動は人間行動の結果であり、それが人々の福祉に影響を与えるため、ESG(環境、社会、ガバナンス)の「社会(Social)」は、最も重要な側面です。結局のところ、私たちが気候変動に関心を持つのは、それが私たちに与える短期的および長期的な影響と、結束力があり健全で経済的に存続可能な社会を維持するためです。

重大リスクの理解

どのような事業でも、有望な投資対象かどうかを判断するには、その事業の費用構造および直面している重大リスクを理解する必要があります。ESGフレームワークを使用することで、投資家は企業の運営に関連する重要な非財務コストおよびリスクを特定できます。問題は、それらの費用が内部化されていて、最終的な利益に大きな影響を与えるかどうかです。当社はすでに、二酸化炭素排出の費用が内部化されるのを目にしています。測定方法はより強固になってきており、政策の枠組みは、これらのリスクにドルコストをかけるための強固な構造を提供します。一方で、社会的領域では測定は困難であり、責任ある投資家の課題は、社会的リスクとその潜在的な財務コストを特定するための、より堅牢なアプローチを開発することです。

従業員はいかなる事業においても重要な資産であり、企業の人事管理がおそらく出発点です。報酬政策、福利厚生、条件、人材開発などの分野は、経営の質だけでなく、どこにリスクがあるかも教えてくれます。最低賃金のみを支払い、「ゼロ時間」契約(英国で問題になっていて、雇用主から呼び出された時に雇用主の希望する時間だけ働く契約で、最低労働時間が設定されない)を採用し、必須疾病手当のような最低限の福利厚生しか提供しない企業は、人的資本を重視する競合他社に比べて、生産性が低い労働力を抱える可能性が高いです。コストとしては、高レベルの離職率、労働争議、または従業員関係分野における訴訟の可能性があります。

現在、インフレ率が高いため、賃上げしたとしても実質賃金は低下しています。企業は生産コストの上昇に直面し、販売価格の引き上げが必要となります。これをどのように管理するのか、賃金妥結による従業員への影響、また価格設定による顧客への影響をどう考えるかが重要です。このような環境下で行われる意思決定の社会的影響を理解している経営者は、最終的に顧客や投資家の選好によって報われる可能性があります。

安全衛生も重視すべきです。これは、労働者に物理リスクが及ぶ可能性のある製造業では明らかです。しかし、すべての企業において、従業員の心身の健康をサポートすることは、生産性を高めるだけでなく、訴訟のリスクも軽減できます。

直接雇用している労働力だけでなく、サプライチェーンにおける人的資本リスクの把握も重要です。例えば、衣料品業界は歴史的に、発展途上国の繊維サプライヤーにおける児童労働に関する懸念に悩まされてきました。

従業員や管理職レベルにおいて、企業により大きな価値をもたらす手段として、ダイバーシティがますます関心を集めています。異なるバックグラウンドを持ち、対照的な経験を持つ人々から引き出されるアイデアは、成長を促進し、イノベーションを支援します。投資家は、企業がいかにダイバーシティに富んでいるか、イノベーションとアイデアの開発をいかに促進しているか、また、人材戦略でインクルージョンと開放性をいかに重視しているかを考察する必要があります。

人的資本管理の質の判断に使える指標はありますが、企業文化に関わることも重要です。定期的に従業員と関わり、あらゆるレベルでダイバーシティを推進し、成長を促進する経営陣は、こうした側面を軽視する企業よりもリスクが低く、人材の採用と確保の面でもメリットがあると考えられます。

ソーシャルフットプリントの評価

社会的観点から重要なのは、企業の人材管理だけでなく、その製品や事業が社会にどのような影響を与えるかも重要です。投資家は、製造物責任、潜在的な健康リスク、データプライバシー、および財務責任などのテーマにも注意を払う必要があります。これらは広い範囲に及ぶ問題であり、責任投資のアクティブ運用アプローチに沿うものです。投資家は、事業がもたらす社会的インパクトから生じるリスクの重大な影響を評価できるのです。

私たちは、タバコ会社が製品が人々の健康に与える恐るべき影響から、いかに一般的に責任投資ユニバースから除外されてきたかを既に見ています。これは極端な例ではありますが、投資パフォーマンスの限界的な改善は、製品に関連するリスクと潜在的な負の外部性をあらゆるレベルで理解することにかかっています。食品の安全性、(ソーシャル)メディアの内容、建築基準、一般的な価格政策、およびカスタマサービスの質は、製品、サービス、および企業経営がより広範な社会福祉に影響を与えられる多くの方法の一部です。政府や規制当局は果たす役割を担っていますが、投資家は投資先企業の事業のソーシャルフットプリントを理解する必要があります。

最終的に当社の投資対象は、長期的に成長し投資家に報いる企業です。従業員の能力を最大限に引き出すことに重点を置き、よく管理された組織を持つ企業は、このカテゴリーに入ります。リスクを理解することは重要ですが、持続的な成長を促進する企業文化を理解することも重要です。新型コロナウィルス終結後の時代には、従業員は平等な待遇を重視しつつも、労働時間、勤務地、および福利厚生について、より柔軟なアプローチを大切にするようになると思われます。

顧客もまた、特に生活費危機を乗り切ると共に、より高い見識を持つようになる可能性が高いです。家計は当面の重要な関心事ですが、時間の経過とともに、消費者の嗜好も社会問題についての認識をさらに反映して変化しています。特に食料、エネルギー、住宅といった基本的なニーズを供給する産業において、企業が価格政策をどのように管理するかは、投資家が考慮すべき点です。長期的な市場シェアは、経済的ストレスのある時期に企業がどのように顧客に対応するかにある程度依存する可能性があり、これと事業の実行可能性とのバランスをとる必要があります。

プラスの変化と長期リターンの可能性

当社は、社会に利益をもたらす商品やサービスを生み出す企業に投資したいと考えています。バイオテクノロジーは、病気と闘い、有意義な生活を長く続かせるという点で非常に優れた可能性を持っているため、社会的視点を通して見るべきセクターの一例です。医療領域は、テクノロジーやイノベーションが最終的にプラスの社会的結果をもたらす分野であることは明らかです。テクノロジー分野では、データセキュリティサービスの提供は、個人情報へのアクセス能力を悪用しようとする者への対抗手段として、社会的利益をもたらすものです。

持続可能な方法で提供される場合、社会福祉にプラスの変化をもたらす可能性のあるテクノロジーやサービスをすべて挙げるには、ここでは十分なスペースがありません。投資家にとっての課題は、企業の社会的リスクを理解するフレームワークを開発し、社会を事業展開における重要な資産とするリーダーを特定し、社会的利益を生み出す製品の長期的な事業の実行可能性を理解することです。

インパクト投資もその一つです。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を使用することで、資産運用会社は、明確な社会的目標を持ち、その目標達成への貢献が期待される活動を行う企業を投資ユニバースとして、投資戦略を提供することが可能です。1 例えば、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」や「住み続けられるまちづくりを」に焦点を当てると、関連する製品を持つさまざまな企業が浮き彫りとなります。このような明確な社会的目標を支援し、インパクト投資の要である、製品やサービスがそれらを最も必要とするコミュニティにとってどのように手に入りやすく手頃なものになるかを評価するためのデータが現れています。

責任ある投資家として、当社は、地球と人間にダメージを与えることなく、長期的に持続可能なリターンを生み出したいと考えています。最高のビジネスとは、最も重要な資産である「人」の価値を最適化したビジネスだということができるでしょう。単純なことのように聞こえますが、従業員を大切に扱い、事業の社会的コストを最小限に抑える企業は、社会的情勢の改善に貢献する商品やサービスを提供することで、より広く投資家に利益をもたらす成長を遂げると、当社は考えています。

社会的課題は、食料、エネルギー、および住居の提供といった基本的活動に関わるものであり、教育、金融サービス、雇用、テクノロジー、および娯楽へのアクセスと一体性に焦点を当てることから、投資の中核となります。全領域から見ると、持続可能性を重視するアクティブ運用投資家は、これらの経済的側面すべてにおいて、社会的観点から高いスコアを獲得する企業を支援できます。アクティブ運用の責任投資は、社会的要因が、優れた長期的な持続可能なリターンにいかに貢献するかを理解するための鍵なのです。

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