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社会

ソーシャル投資が長期的なサステナビリティを促進する4つの理由

  • 2022年10月27日 (5 分で読めます)

キーポイント  

  • ESGの「社会(S)」的要素は、気候変動、政治的分裂、貧富の差の拡大などの結果、これまで以上に注視の対象となっている。

  • 政府、企業、消費者そして投資家は、社会の不平等を是正するために行動を起こしている。

  • 多くの問題やテーマが、ソーシャルインパクト投資戦略を通じて取り上げられている。これには、教育、住居とインフラ、ヘルスケアそして金融サービスが含まれる。

環境・社会・ガバナンス(ESG)投資といえば、歴史的に「環境(E)」に最もスポットライトが当たってきました。特に近年は、緊急に取り組まなければならない気候変動問題への関心が高まっているためです。

しかし、「社会(S)」は今まで以上に注視されており、そして成長機会や投資機会を引き付けています。気候変動、政治的分裂、貧富の差の拡大などが引き金となり、世界規模での変革が加速しています。人類は進歩しているにもかかわらず、社会的不平等は増加傾向にあり、経済や企業、そして投資ポートフォリオに影響を与える可能性が生じています。平均寿命、教育、一人当たりの国民所得などを追跡する国連(UN)の人間開発指数によると、過去2年間において10ヵ国中9カ国で低下していることがわかりました。1

その主な原因は、新型コロナパンデミック、ウクライナ危機、気候変動であり、現在、世界は手に負えないインフレに耐え、不平等格差はさらに拡大していると国連は結論付けています。

国連はまた、次のように述べています。「このような事態は、世界中で起きている生活コスト危機を助長し、不確実な時代と不安定な生活という構図を描き出しています。」1 当社は、このような困難な状況は、投資家にとって重大なリスクとなる可能性がある一方、対応が成功すれば機会をもたらす可能性もあると考えています。

社会的側面の台頭

オックスファム・インターナショナルによると、経済的不平等により、世界人口の99%の所得が削られ、さらに1億6千万人以上の人々が貧困に追いやられています。2

そのため、政府、企業、消費者、投資グループが、社会的不平等を是正するために行動を起こしたことは、驚くべきことではありません。

各国政府の施策は、医療費の増加から労働者支援の強化まで多岐にわたっています。一方、企業は従業員への福利厚生の改善やより柔軟な勤務制度の導入に取り組んでいます。消費者は、ブランドの二酸化炭素排出量を考慮するのと同じように、消費者ブランド企業とその社会的信用にますます大きな関心を寄せるようになっています。

ベストインクラスの企業によるソーシャルインパクトをターゲットにした新商品が急増し、さまざまな社会的プロジェクトの資金調達手段としてソーシャルボンドが登場しています。投資家はますます、自分たちの資金がどのようにポジティブな社会的成果に向けられるかを知りたがっており、人類の進歩に貢献する企業への投資や関与を求めるようになってきています。当社にとって「社会的」投資とは、問題を解決することであり、責任ある投資家にリターンをもたらせる方法で満たされていないニーズに取り組むことなのです。

以下では、ソーシャルインパクト投資戦略を通じて取り組まれている4つの主要テーマ、すなわち、教育、住宅・インフラ、ヘルスケア、金融サービスについて取り上げます。新興国における中間層の台頭や、テクノロジーの民主化により、これまで十分なサービスを受けられなかった人々のアクセスが可能になったことなど、複数の要因が需要を後押ししていると考えられます。

教育

教育は生活を向上させ、平均寿命すらも長くします。 さらに、国レベルでは、社会の安定に貢献し、長期的な経済成長を促します。しかし、世界的に、約5,700万人の初等教育年齢の子どもたちが依然として学校に通っておらず、60%の子どもや若者が読み書きの能力において最低限のレベルにさえ達していません。4

グローバルエデュケーション・モニタリングレポートによると、中等教育の普遍的修了という2030年の目標を達成するためには、低・中所得国が毎年支出する金額を1,490億ドル(2012年)から2030年には3,400億ドル、または国内総生産(GDP)の6.3%に引き上げる必要があります。5 また、世界全体では年間4.7兆ドルの教育費において、就学年齢の子どもの数が同程度であるにもかかわらず、低所得国ではそのわずか0.5%しか使われず、高所得国では65%が使われていると指摘しています。6

教育における課題は2つあります。まず、教育へのアクセスを拡大し、老若男女を問わず、すべての人に対して教育を公平かつ継続的に提供することです。2つ目は、学習方法の質と効果を高めることです。そのため、当社は、より効果的で個人に合わせた学習を低コストで実現するソリューションを学生に提供する新しい企業が出現していると考えています。それは特に教育テクノロジーにおいて顕著です。

このテーマに挑戦している企業があります。オンライン教育支援プラットフォームであるCheggは、手頃な価格のサービス提供を目的としており、530万人の加入者がいます。もう一つの例はIDP Educationで、50カ国以上で事業を展開しており、新興国の学生の英語学習を支援し、世界中の大学に入学させています。7  8

住宅・インフラ

すべての人に適切な住宅とインフラを提供することは、依然として大きな課題となっています。現在、世界人口の半分の約35億人が都市部に住んでおり、2030年には50億人が、2070年には70%の人が都市部に住むと予想されています。9

この急速な都市化を背景に、水道水の供給、下水、生活環境、公衆衛生への圧力はますます高まっています。現在、世界的には約8億2,800万人がスラムで生活しており、その大半は東アジアと東南アジアに集中しています。10

試算によると、世界のインフラ投資に必要な額は年間約3.9兆ドルとされています。11

最大の課題、そして私たちが考える投資機会は、新興国市場にあります。アジア開発銀行(ADB)は、アジアが経済成長を続け、貧困をなくし、気候変動にうまく対処するには、2030年までにアジア全体で年間約1.7兆ドルのインフラ投資が必要となるだろうと試算しています。12

特に2022年には、G7諸国が中低所得国のインフラ融資として6,000億ドルの調達を約束しました。13 「インフラ及び投資のためのパートナーシップ」は、5年間にわたり、公的資金と民間資金を活用し、気候変動への取り組み、世界的な衛生の向上、デジタルインフラの構築、平等の推進を図るものです。しかし、インフラや住宅の問題は、発展途上国市場だけに見られるものではありません。米国では、トレーラーハウスのコストは年間給与の中央値の約2倍に相当し、従来型の住宅のコストは約7倍に相当します。14

例えば、米国南部と中西部で良質で低価格な住宅の提供を目指す米国Sun Communitiesや、低家賃住宅を扱うドイツのTAG Immobilienなど、低価格住宅分野ではすでに数多くの企業が事業を展開し、成長を続けています。

ヘルスケア

持続可能な開発には、健康な人々が不可欠です。新型コロナ感染症は、質の高い医療と疾病予防をすべての人に提供しなければ、世界の人々の健康や将来の経済的繁栄が危うくなることを明確に示しました。OECDによると、先進国の公衆衛生の支出は2030年までにGDPの9%近くに達し、2060年には14%まで増加すると予想されています。15

そのため、各国政府に加えて個人が、質の高い医療保障へのアクセスを向上させ、社会的コストを抑えることを最優先事項の一つとしていることは、特に高齢化が進む地球においては、当然のことです。

嬉しいことに、地球上の医療に関する課題に対して、進化を続けるソリューションを提供する企業が数多く存在していると当社は考えています。例えば、バイオテクノロジー企業のリジェネロンは、失明に至る変性眼疾患やその他の感染症や希少疾患のための医薬品を開発・製造しています。


ライフサイエンスおよび消費者ケアのグローバル企業であるクローダは、39カ国で事業を展開しており、ヘルスケア産業向けに特殊化学品やドラッグデリバリーシステムなどの主要ソリューションを提供しています。16

さらに、ここ数十年の技術的な進歩により、より身近で、より効果的でさらにパーソナライズされた医療が現実的になってきました。

これは、ヘルスケア関連サービスや情報を電子的に配信・管理する、いわゆるテレヘルス(遠隔医療)事業の促進に寄与しています。当社は、このようなバーチャルサービスが、混雑した医療システムの緩和、医療費の削減、アクセス障壁を下げることによる予防医学の強化に役立つと確信しています。マッキンゼーによると、テレヘルスの利用は、新型コロナ感染症発生前の38倍に達しています。17

金融およびデジタルのインクルージョン

情報格差は依然として大きな障害となっています。2022年に発表された国連の報告書では、「ハイパーコネクテッド」と呼ばれる人々(幼いころからインターネットに接続できる環境にあり、デジタルデバイスを駆使している人々)と「デジタル・デスティテュート」と呼ばれる人々(インターネット環境になく、デジタルデバイスを使えない人々)の間の「コネクティビティ・キャニオン(ネット接続環境の大きな落差)」が拡大しており、世界人口の3分の1以上がまだ完全にオフラインであることが判明しています。 18

インターネットにアクセスできないことは、教育、就職、医療、起業などに深刻な影響を及ぼし、経済成長を妨げ、社会的・世界的な不平等を深めることになりかねません。

国連の「Global Connectivity Report 2022」によると、29億人がインターネットにアクセスできず、さらに数億人が高価で低品質のインターネットサービスにしかアクセスできていません。

さらに、約17億人の成人が銀行口座を持たず、安全な貯蓄や緊急時の資金利用が困難な状況にあります。19

金融インクルージョン(包摂)とは、個人や企業が、取引、支払い、貯蓄、信用、保険など、それぞれのニーズに合った有用かつ手に届く金融商品やサービスを、責任ある持続可能な方法で利用できるようになることを意味します。世界経済フォーラムによると、今後5年以内にインターネットを大多数の人が利用できるようにするには、2.1兆ドルの投資が必要となります。20

この問題の核にあるのは、テクノロジーへのアクセスとコネクティビティを生み出すために必要なインフラです。スマートフォンやデジタル機器の実質的なコストは下がっていますが、一部の発展途上国では、インターネットの利用にまだコストがかかります。英国の通信会社Helios Towersは、アフリカ諸国で通信タワーを建設・運営し、固定回線インフラがほとんどない地域の人々や企業に必要な音声・データサービスを提供することで、この問題に取り組もうとしています。

ソーシャルサステナビリティ

当社は、十分なサービスを受けていない人々のニーズに応える企業に投資することが重要であり、社会的にポジティブな影響は、長期的に優れた投資リターンを生み出す可能性のある企業を特定するためのフィルターであると考えています。教育、住宅・インフラ、ヘルスケアおよび金融サービスなど、満たされていない大きな社会的ニーズに対応し、高い成長が期待できる企業には、多くの投資機会があります。

当社は、ソーシャルインパクト投資は、持続可能で収益性の高い成長への投資機会であるだけでなく、私たちの社会と将来の世代のための真の投資機会であると考えています。

 

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