インフレの不均一な影響と各国政府の対応
キーポイント
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食料品やエネルギー価格の上昇によるインフレは、大半の国々で数十年来の最高値に達している。国が異なれば直面するインフレ率も異なる。それは異なる所得層や個人についても同様である。
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低所得層の家計は元来、光熱費と食費の占める割合が高いため、インフレの影響が不釣り合いに大きく、まかなえるだけの貯蓄がない傾向にある。
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各国政府は速やかに対応し、ユーロ圏の4大国と英国を例にとると、措置は1年前に始まっており、2月以降強化されている。今後より多くの発表があるだろう。
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最近の措置は、経済的に最も歪みが少ないアプローチから逸脱している。この逸脱が続いた場合、価格・財政の安定および排出量削減などの長期的な他の目標と対立するリスクがある。
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また、最新の措置は、エネルギーショックの分配効果を認識していない。長期的な分配効果は、後退するインフレ、金利の上昇、景気後退が複雑に混じり合ったものとなろう。
インフレは低所得層に最も大きな打撃
インフレは発展途上国や新興国の双方を含む大半の国際経済で、数十年来の高水準に上昇しました。最近引き金となったのはロシアによるウクライナ侵攻で、これが食品価格やエネルギー価格に著しい影響を与えました。しかし、総合インフレ率動向の背後には、食品やエネルギー価格の上昇が通常、低所得の国や家計、そして個人により大きな打撃を与えるという事実があります。
本レポートでは、異なる所得層に対するインフレの異なる影響を検証し、政府がどのように対応してきたかを考察します。政府がとる政策は、的を絞った所得ベースの支援という初期の傾向から、より一般的で価格ベースの現在の措置へと次第に移行してきました。この動きは価格および財政の安定や、温室効果ガス(GHG)排出量削減など、より長期的な他の目標との緊張を生んでいます。
エネルギー価格が高水準にとどまる可能性が高いことから、今後数カ月にかけて、特にユーロ圏で、さらなる財政措置の発表があると当社は見ています。それでも、これまでに発表された措置を検証し、一部の所得分配に対する意味合いを考察します。
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