
市場の雑音は忘れよう:バリューと長期に焦点を当てる
- 2024年10月14日 (5 分で読めます)
主なポイント
経済界の専門家たちは時折、パラレルワールド(並行世界)で活動しているように思えることがあります。経済成長、インフレ、金利に対しては自信に満ちて予測していますが、後になって振り返ると、その実績はまちまちです。
いわゆる中立金利(実世界では観測できないもの)のようなテーマに関する複雑な議論が、投資家の判断を狂わせる可能性があります。こうした議論が市場に関係して来ると、市場が「間違っている」と言う傾向が見られます。株式トレーダーは熱狂的過ぎたり、債券トレーダーは悲観的過ぎたりすることがあります。
長期的な視点を取ろうとする投資家とは違い、経済評論は、短期に関して過剰に焦点を当てることが多すぎると思います。投資家はもちろん経済環境を把握する必要がありますが、焦点はバリューおよび長期的なリターン予想に置くべきであり、「市場価格が何を織り込んでいるか」ではないと考えます。多くのエコノミストが予測していた景気後退が起こることなく、先進国の金利が低下局面に入った今(執筆時)、長期に焦点を当てることは今までより一層重要になっていると見ています。
実際に、現代経済の複雑さを真に理解することは、さらに困難になったように思えます。新型コロナのパンデミックがサプライチェーン(供給網)や需要のパターンに根本的な影響を及ぼしました。労働市場のメカニズムに変化を起こし、当然ながら、一部の企業は生き残れませんでした。テクノロジーが世界を覆し、仕事のパターン、コミュニケーション、研究に大きな変化をもたらしました。
進化する経済
人口動態もまた重要です。現実に経済大国の大半で人口の老齢化が進み、出生率が人口置換水準を下回っており、これは人口増加率が低いかマイナスになっていることを意味します。気候変動や地政学的要因による移住を起因とする移民の増加も、労働力の供給状況を複雑にしてきました。国家の経済統計がこういった複雑性や変化のすべてを完全に把握できるかどうかは明らかではありません。毎月発表される経済データを徹底的に分析する作業は、むしろ無駄なように思えることがあります。金融資産の価格は他のあらゆる価格と同様、需要と供給により決定され、それには最新の小売売上高への単なる反応を超えるものがあると考えます。
このような複雑性にもかかわらず、経済サイクルは過去にあったような浮き沈みがなくなったように思われます。これは経済政策とグローバル化によりインフレ水準が低下し、経済がより柔軟になったことが大きな理由であると見ています。近年に起こった経済成長の混乱の大半が、ほとんどの人が予期しえなかったショックから生じたものと思います。しばしば予想されてきた2024年の景気後退がこれまで起こっていないことは、古いモデルを新しい経済に適用するのがいかに難しいかを示す一例です。金利の上昇は、成長に対して予想されていた影響を及ぼしませんでした。しかし経済サイクルは未だに生きており、2021年と2022年に起こったインフレの急上昇のようなここ数年の経験によれば、長期的傾向からの逸脱が起こることがあり、これらが金融市場の動向に反映されていることを見ることができます。これによりアクティブで長期の投資家は、リスク調整後の健全なリターンを求めるための多数の機会を手にすることができると見ています。
ニューノーマル
今日では、パンデミック後のインフレ急騰はすでに過ぎ去りました。インフレ急騰に対して中央銀行が金利引き上げによって対処したことによって、金融資産全体でバリュエーションとリスクプレミアムがリセットされました。株式市場の下落は景気後退に似ており、債券価格は長く続いたイージーマネー(低利の資金調達)の終焉に対応しなければなりませんでした。そうした状況も終わり、市場は今、将来を見つめています。長期的な近郊の為の要素の一部が戻ってきたと思われます。中央銀行は徐々に金融引き締め政策の撤回を始め、より中立的な姿勢に戻りつつあります。米国の大統領選挙、中国経済の不調、地政学的混乱に関して不確実性があるものの、経済成長は先進国では長期トレンドに近くプラスで推移しています。
2022年と2023年の金融市場は、マイナスのリターンを避けることが困難でした。債券は金融の新たな現実に対応しなければならなかったことから、株式やその他の資産の損失を相殺できませんでした。しかし今日、分散投資は、ポートフォリオ構築の中核的原則であるべきと考えます。金利の見通しは明白になってきたと見ています。筆者の予想どおり、先進国におけるインフレ率が2%付近に落ち着くなら、名目金利は現在の市場価格に織り込まれている水準に近づく可能性があると見ています。米国の金利を3%、英国でそれより若干高く、欧州で2%とする中期目標は、近い将来に妥当と言える安定状態を表すものと考えます。エコノミストは市場予想を容認したがらず、このような予想にまつわるあらゆるリスクを指摘するでしょう。しかし実現する確率が不確定な代替シナリオやリスク事象は、長期ポートフォリオの構築には役立たないと思います。
金利の低下はすでに、住宅ローンの借り換えを検討している世帯や、全体的な債務返済コストを管理する企業への支援となっています。一方、エネルギー転換や生成人工知能の開発などのメガトレンドは、資本の再配分および収益成長にとって巨大な機会を生み出していると考えます。中立に向かう金利、さらに緩和するインフレ、財務体質が堅固で収益成長を生み出している企業といったすべてが、分散ポートフォリオに対する今後のリターンに前向きな見通しを裏付ける要因となっていると見ています。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
(オリジナル記事は10月14日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
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