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Investment Institute
マーケット見通し

清潔で整然としている


人工知能(AI)への幅広い関心と世界的な株式市場の好調なリターンにより、2025年の債券市場への注目度がやや下がっています。しかし、債券のリターンは2023年以降見られる高い利回り水準と整合した水準にあります。それに関して、AXA IM Core Investments のCIOであるChris Iggoは、以下の見解を示しています。

債券市場はインカムリターンを生み出しており、株式市場のボラティリティが株式市場のリターンを圧迫した場合には、分散投資の手段として有利性があると考えています。唯一異なる市場は、独自の金利正常化サイクルにある日本です。筆者(以下、私)は、市場では東京の債券市場の価格暴落を懸念するよりも、日本の株式市場への関心の方が高くなっています。

  • 主なマクロ経済テーマ – 経済見通しはまちまちながら、現状の米国経済データは軟調
  • 主な市場テーマ – 変動の高かった一年の後、バランスと分散

利回りとリターン

今年は債券市場にとって好調な年でした。11月30日時点で、債券市場のリターンは概ね2024年末の利回り水準を上回っています。短期デュレーション・クレジット戦略は、11ヶ月間のトータルリターンが2024年末の利回り水準をわずかに上回りました。一方、長期デュレーションの米ドル建て債券市場は、年間を通じて利回りが低下したため、リターンは好調に推移しています。米国や欧州では金利上昇の見込みはないとみています。短期デュレーション戦略は、再び現在(執筆時)の利回りに近いトータルリターンを達成する見込みです。つまり、米ドル建ておよびポンド建て投資適格債券戦略のリターンは4.0%~4.25%、欧州短期デュレーション戦略のリターンは約2.60%とみています。いずれの場合も、これはキャッシュのリターンを上回ると予想しています。

インカム

英国の投資家にとって、近年の債券市場のリターンはまちまちです。英国債(ギルト)市場は、持続的なインフレや財政政策への懸念といったマクロ経済の逆風に耐えてきました。しかし、インカムリターンは改善しています。英国債市場は全体で、2025年の年初から11月末までに4.8%のトータルリターンを生み出し、そのうち3.2%はインカムによるものです。残りは、国債利回りの低下が債券価格に与えた影響によるものです(これは、メディアの「国債パニック」という報道とは矛盾しています)。英社債市場について、1~3年の債券市場は2025年に入ってから5.8%のトータルリターンを生み出しており、中期債券市場(7~10年債)は7.75%のトータルリターンを記録しています。今年は債券の年という実感はなかったかもしれませんが、リターンは市場全体の利回り(期待リターン)とほぼ一致しています。米国の債券市場でも同様の傾向が見られましたが、欧州の債券市場のパフォーマンスは相対的に低い水準になっています。

英国のリターン

3年の移動平均でみると、英国債市場のリターンはここ数ヶ月でプラスに転じてきています。2020年以来のドローダウン(最高値からの下落率)は厳しい水準(最悪期はマイナス30%)になっています。一方、同じ期間に、株式市場は好調なパフォーマンスを上げています。3年の移動平均年率換算値でリターンを比較すると、FTSE All-Share指数やFTSE World ex-UK指数は約15%(英ポンド建て)となっており、英国債市場のリターンを超えています。しかし、英国債市場のリターンもインカムの向上により改善しており、また、イングランド銀行の利下げが今後も支援材料になるとみています。予算内容は分析中ですが、ギルトの発行はあまり増加しないとされています。

債券市場と株式市場の負の相関性は短期のデータに必ずしも明示されるものではありませんが、中期的なパフォーマンスに着目する投資家にとっては、その相関性は重要でしょう。2008年以降、3年間のリターンの英株式市場と英国債市場の相関は-0.16になっています。2008年に株式市場がマイナスのリターンとなっていた時や、新型コロナ感染の直前からまん延の期間では、英国債市場はプラスのリターンになっていました。米国市場での同様な比較、つまり、S&P500 と米国債市場の各3年のトータルリターンの相関は-0.4でした。

当社グループは、今年を通して、債券市場はあるべき形に戻ってきていると述べてきました。つまり、インカムをもたらし、リスク市場のマイナスの変動に対するヘッジ効果を提供しているとみてきました。株式市場は今年の世界の金融市場のリターンをけん引してきましたが、今後ポートフォリオの債券の組み入れを引き上げる理由には強固なものがあり、実際にパフォーマンスが向上しています。クレジット市場や株式市場の現状のバリュエーション(投資尺度)を見ると、国債市場は最大のリスクを伴う市場ではないでしょう。

2026年に堅調なリターンを見込む

現在の利回りは来年の債券市場のインカムリターンを支えると予想されます。米国および英国の投資適格社債市場の利回りは現在約5%、ユーロ圏の投資適格社債市場では約3.5%です。ハイイールド債券市場はさらに高いインカムをもたらすと予想しています。トータルリターンは当然のことながら債券市場の価格変動に左右されます。価格変動は、金利予想の変化、インフレと財政リスク、そして信用不安といった要因によって決まります。価格リターンのマイナスがインカムリターンを消してしまうためには、市場の信頼感が大幅に低下する必要があるとみています。例えば、英国社債市場のデュレーションが6年であることを考えると、今後12ヶ月間のトータルリターンがゼロになるためには、社債市場の利回りが約80ベーシスポイント(bp)上昇する必要があります。

一方、日本はどうか?

日本国債(JGB)市場は他の債券市場とは異なる独自の動きをしています。10年のJGBの利回りは現在1.9%付近にあり、これは2007年以降で最も高い水準です。この動きは、高市新総理大臣による今まで以上に積極的な財政スタンスやインフレ率の上昇(9月のコア・インフレ率は3%)、そして、日銀の政策金利である翌日物金利の上昇見通しを反映したものです。長期国債利回りは世界の主要な市場で上昇しています。米国の30年国債利回りは2021年初から現在まで313bp上昇しています。日本の30年国債利回りは同じく274bp上昇しています。しかしイールドカーブ(利回り曲線)の傾きは、短期金利が依然として低位にある日本が急勾配になっています。日本では、30年国債利回りから2年債利回りを引いたスプレッドは240bpになっており、これは米国の2倍です。この急な傾斜は、インフレ期待が急に高まり、長期国債の需給に対し懸念が強まっていることによって、引き起こされています。

緩やかな金利上昇

私は11月最終週に日本にいましたが、日本の市場では、日銀は今後数か月で政策金利を少なくとも1.0%にまで上げると予想されていました。また、予想の中には来年中旬までに1.5%を見込む向きもありました。一方、市場では2026年末までに1.0%になることを織り込んでいます。インフレは懸念材料ですが、日本での市場の見方では、政治家は賃金上昇に注目していますが、インフレは食料価格が要因として大きいとしています。財政面では、懸念はもっと強くなります。長期国債を求める自然な需要は弱まっています。日本の金融機関は多く保有していますが、30年債の利回りが3.4%になっていることを考えると、もう少し買うことができるとみています。しかし、日本の投資家は、高齢化が進み経済成長が近年脆弱な社会にあって政府債務の増加には当然のことながら懸念を強めています。しかし、現在のJGB市場の利回り水準は円ヘッジした外債市場の利回りを上回っています。財政面では、政府の21.7兆円の財政政策案には賛否両論がありました。しかし、私が見たところでは、この政策案が 国債発行に与える影響は少なくとも来年は例年と比べ軽微と考えています。日本は依然として多額の経常黒字を持つ非常に裕福な国です。政府の資金調達には問題はないとみています。

円高に向かうべきか?

日本でのもう一つの焦点は為替でした。理論的には、財政政策が拡大方向に向かい、金融政策が引き締め方向に動いている場合、為替は上昇するとみています。昨年、米ドルは円に対して約10%上昇しました。ユーロに対する米ドルはもっと大きく下落しました。こうした為替の下落はインフレに影響するでしょうが、日本の株式市場の堅調なパフォーマンス(日経平均は円建てで年初から25%上昇)にも影響するとみています。マクロ政策の方向性を見ると、今後円高に向かう可能性がありますが、円高に向かうとすれば、日本の投資家は外債ポートフォリオをすべてヘッジする必要があるでしょう。ヘッジコストは日本の投資家にとって低下しつつあるものの、ヘッジ後の利回りがJGBの利回りを超えることは依然として難しい状況です。しかし、外債保有を減らそうという兆しは見られませんでしたが、他の地域と同様に、より利回りの高いプライベートクレジット市場や外国株式市場を選好する動きが見受けられました。

資金フロー

市場の見方として、日本の国内金利が上昇すれば、日本の投資家が海外市場から資金を本国に還流させ、海外投資家が円キャリートレード(相対的に低金利の円で借り入れをしてより高金利通貨の金融資産等で運用する取引)を解消する条件が整うという見方があります。どちらも円高につながり、その場合、外国債券市場のボラティリティが高まる可能性があるとみています。各種推計によると、日本の対外純資産残高は約3.3兆ドルです。この数字は、円/米ドル為替レートの変動にもかかわらず安定しています。国内のリターンが相対的に高まるようになれば、純投資残高にわずかな変化が生じる可能性がありますが、裁定取引によってすぐに均衡が回復するでしょう。この見方には、もっと大きな異変が起こるとみる意見もありますが、それはあまりにも劇的すぎると考えています。私が東京を訪問した際に、日本の投資家が問題を引き起こすほどの大規模な資産配分の変更を行う意向は示していませんでした。円キャリートレードに関しては、日本の3ヶ月物金利は2022年の最低値5bpから現在89bpまで上昇しています。この上昇は、レバレッジをかけた多額の円のショート取引を阻害し、世界市場に大混乱を引き起こすのに十分なのでしょうか?私はまだ確信が持てません。

株式市場をロング、債券市場をショートが日本流

かつては、日本株をロングし、日本国債をショートすることは、すべての取引を台無しにしてしまうというジョークがありました。しかし、今ではそうは思えません。日本株式市場は、日本企業が世界的なテクノロジーおよびオートメーション分野のサプライチェーン(供給網)に深く組み込まれているため、注目に値する市場とみています。2025年の株式市場は、資本財セクターから金融セクターまで幅広く良好にパフォーマンスを上げています。MSCI日本株式指数では、今後1年間の利益成長率は10%近くになると予想されており、市場では12ヶ月予測株価収益率(PER)が16倍で取引されています。これは長期平均を上回り、他の市場と同水準ですが、米国市場と比較するとバリュエーションは低い水準になっています。マグニフィセント7銘柄*が多くの割合を占める米国株式市場からバランスを取るという点では、日本の株式市場には多くの利点があるとみています。

*:アマゾン・ドット・コム、アップル、アルファベット、エヌビディア、テスラ、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ

パフォーマンス等のデータの出所:LSEGワークスペース・データストリーム、ICEデータサービス、ブルームバーグ、アクサIMグループ。特に記載がない限り、2025年12月2日現在。

企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。また、記載内容は、2025年12月2日現在の資本市場を説明したものであり、特定の金融商品への勧誘や推奨を意図したものではありません。

(オリジナル記事は12月5日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

※本資料で使用している指数について

FTSE All-Share指数、FTSE World ex-UK指数:前者はFTSE社が算出・公表しているロンドン証券取引所に上場するほぼすべての株式、及び、後者は英国市場を除く世界の中大型株式の時価総額加重型指数です。

S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

MSCI日本株式指数:MSCI社が公表している日本の株式市場の値動きを示す時価総額加重平均型指数です。

※本資料中の指数等の著作権、知的財産権、その他一切の権利はその発行者に帰属します。

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