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Investment Institute
マーケット見通し

分岐が多様化を促す: アジアの投資家が欧州に目を向け始める

主なポイント

アジアの投資家は長年にわたり米国への投資を積極的に行ってきたが、今年は他の市場への分散投資の傾向が加速していることが見られる
市場動向、地政学的懸念、そしてより高いリスク調整後リターンへの選好といった要因が重なり、欧州は良好な代替投資先として認識が強まりつつある
アジアではドル建て投資への選好は継続するとみているが、分散投資は徐々に進むと予想され、大規模な変化には時間がかかるとみている

10年以上にわたり、アジア諸国の多くは長期的な投資機会を求めて国境を越えた投資に目を向け、多額の資金が米国に流入しました。今年は、アジアの投資家がポートフォリオのリバランスを目指す動きが強まっており、欧州資産が相対的に良好な代替投資先として注目されていることが分かります。

2010年代半ばにかけて、経常収支黒字の拡大により、アジアの中央銀行は多額の外貨準備を積み上げ、世界の債券資産全般、特に米国債への需要が高まりました。海外投資のリターン上昇と、また、場合によっては自国市場の規模が十分でないことも、企業、家計、金融機関において、アジアから資本流出が増加することにつながりました。米国株式市場の他市場を上回る企業収益成長と、債券資本市場の流動性と厚みが要因となって、米国資産に資金が集まりました。

アジアにおけるこうした外国資産保有の増加、特に米ドル建て資産の増加は目覚ましいものがあります。アジアの国際投資残高は過去13年間で倍増し、2025年1~3月期 46兆米ドルに達しています1 。これは株式、国債、社債などのクレジット、海外直接投資、外貨預金、融資、そして準備資産に分散しています。この46兆米ドルのうち、中央銀行が管理する準備資産に含まれる証券保有を含むアジアの証券ポートフォリオは21兆米ドルを占めています。別の指標によると、台湾は現在、GDPの100%以上をドル建てで保有しており、次いで日本が68%、韓国が40%となっています2

特に注目すべきは、最近の現地通貨の急騰とドル安により、台湾の生命保険会社の負債に対し為替をヘッジしていない外貨建て資産の価値が減少し、収益に打撃を与え、支払い能力を脅かしていることです3 。参考までに、2025年5月時点で台湾の海外資産総額は1兆7000億ドルです。そのうち約7500億ドルは、生命保険会社による外国債券への投資であり、主に米国債と社債です4

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再配分

アジアの投資家による米国資産への過剰配分、いわゆる米ドル偏重は長年の傾向ですが、市場環境と投資家心理は今やリバランスへと傾きつつあるとみています。米国政権の「アメリカ・ファースト」政策、そして金融政策と財政政策の乖離は、世界経済の繋がりを徐々に弱めつつあり、投資家は国際的な分散投資の価値と必要性について認識を強めつつあります。さらに、米ドル安によって、米国債を大量に保有するアジア諸国にとって、国際分散への圧力が強まっているとみています。

年初来では、欧州株式市場が米国株式市場をアウトパフォームしていることから、欧州への分散投資について投資家の意欲に顕著な変化が見られます。このアウトパフォームは、長年信じられてきた米国市場の優位性という見方に疑問を投げかけ、ポートフォリオの分散化を目指す投資家に新たな投資機会をもたらしました。

ドイツの債務規制緩和、1兆ユーロ規模の防衛・インフラ投資計画、そして広範な再工業化への取り組みなど、欧州経済の動向は成長を押し上げると予想され、投資家の注目を集めています。欧州株式市場は成長株よりもバリュー株に偏っており、配当利回りも高く、米国株式市場に比べてバリュエーションが割安であることも、さらに投資を促す要因を提供しています。


記録的な資金流入

市場間のバリュエーションの差は、長期にわたって大きく、かつ持続的に残る可能性があると考えられます。通常、バリュエーションの極端な乖離が解消し始めるのは、基礎となるファンダメンタルズが変化する場合のみです。ここで期待が大きな役割を果たす可能性があります。金融市場のパフォーマンスにおいて真に重要なのは、将来の結果への道筋ではなく、期待に対する相対的な結果です。欧州とドイツが良い例です。投資家は今年、過去10年間を特徴づけてきた株式市場のトレンドが継続するだろうと過度に楽観的に、一方で欧州の見通しについては過度に弱気な見方をしていました。

欧州企業の利益成長は依然として低迷していますが、グローバルポートフォリオにとっては分散投資の機会となる可能性があるとみています。セクター別で比較すると、欧州株式市場は株価収益率(PER)が過去に比べて低い水準で取引されており、一部の分野に潜在的なバリュー(割安)株が存在することを示唆しています。これには、成長とリターンを複利的に生み出せるグローバル企業だけでなく、株主リターンが上昇している銀行などのバリュー志向の市場セクターも含まれます。

欧州とアジアの投資家は、米国市場を除くグローバル株式ファンドに記録的な額を投じています。実際、モーニングスターのデータによると、2024年12月初旬から2025年4月末までに、投資家は米国市場を除く世界の投資信託や上場投資信託(ETF)に25億ドルを投資しており、これは月間総額として過去最高を記録しました4

この流入は、3年間続いた純流出からの反転を示しています。過去10年間の大半にわたる米国株式市場の持続的上昇が外国人投資家を惹きつけていたため、米国株式市場を除外したグローバル株式ファンドは長年人気が低迷していました。投資家は2022年から2024年の間に、これらのファンドから差し引き25億ドル資金を引き揚げました4 。この期間、MSCIワールド指数(米国を除く)は7%の上昇でしたが、S&P500指数は25%の上昇を記録しました。

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持続的傾向の出現

分散化のトレンドは株式市場に限ったものではありません。アジアの投資家は、金融政策と財政政策の相違を背景に、米国債券市場からの分散も進めている兆候が見られます。アジア諸国と米国の金利差は、多くの投資家が代替投資先を探す状況を生み出しています。欧州債券市場は、ほとんどのアジア諸国と金利差が小さいため、ヘッジコストが低く、質の高い代替投資を求める投資家にとって投資機会が増えています。

欧州の資本市場は米国に比べて依然として断片化され、未発達である一方、企業は依然として銀行からの融資に依存する割合が高くなっています。とはいえ、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、第二期において資本市場の統合を重要な優先課題と位置付けています。委員会の提案には、証券化市場の復活、監督の一元化、個人投資の促進に加え、長年にわたる倒産法に関する協議終結と銀行同盟の完成が含まれています。

分散投資に向けた傾向は現れつつあるものの、グローバル化とサプライチェーン(供給網)の再構築が進む中で、分散化の進行は緩やかなものになる可能性が高いことに留意することが重要とみています。アジアの経常収支黒字は相対的に高い水準を維持しながら、今年1~3月期には過去最高の1.1兆米ドルに達しました。当面は米ドル建て投資が引き続き優位を維持すると予想され、大規模な変化が顕在化するには時間がかかるとみています。

今後、米国資産への投資比率が相対的に大きいアジアやその他地域の投資家は、よりバランスのとれた、より回復力のある可能性を持つポートフォリオへの道を見つけるために、欧州やその他の国際的な投資機会を検討する可能性が高いとみています。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は9月23日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

MSCI ワールド指数:MSCI社が公表している先進国の株式市場の値動きを示す時価総額加重平均型指数です。

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