
欧州株式市場は長期的な成長と価値を提供する可能性があるとみている
主なポイント
2025年の欧州株式市場は他地域の主要株式市場をアウトパフォームしています。ストックス欧州600指数の年初来リターン(米ドル建て、9月25日現在)は25%、これに対しMSCIワールド指数は16%、S&P500指数とナスダック指数はそれぞれ13%、16%です。1
欧州株式市場は米国株式市場よりも割安です。バリュエーション格差はもっと極端だった水準からは縮小しましたが、マクロ経済状況の改善や長期的な政策コミットメントという現在(執筆時)の状況を踏まえれば、今年何度も最高値を更新している米国市場と比べて、欧州市場は引き続き割安感があると考えられます。
- 出所:ファクトセット、2025年9月25日時点のデータ
成長を後押しする政策支援
特に防衛、電気通信、エネルギーなどの分野で、欧州連合(EU)と各国の政策は地域全体にわたってさらなる経済成長を促し、より優れた投資機会をもたらす上で中心的な役割を果たしています。
例えば、EUの「Readiness 2030」計画(旧「ReArm Europe」)は、現在進行中のウクライナ紛争を背景に欧州の防衛能力を高め、この分野における数十年間の投資不足に対処することを目指しています。このプロジェクトには、8,000億ユーロ以上の防衛支出、物資調達のための1,500億ユーロの融資ファシリティ、防衛投資を支援するための民間資本の動員計画が含まれます。2
さらに、ドイツは防衛の強化と経済のてこ入れを目的とする5,000億ユーロのインフラ・防衛支出計画を発表しました。この計画は、輸送やエネルギー、調査研究、デジタル化のプロジェクトへの融資を通じて実施され、欧州の防衛セクターを長期にわたって下支えしようとするものです。
他にも、欧州委員会(EC)は、2019年の欧州グリーン・ディールを後押しするために少なくとも1兆ユーロのサステナブル投資を推進すると約束しました。この欧州グリーン・ディールは、2050年までに欧州大陸の気候中立化(温室効果ガスの総排出量と総吸収量の差を実質ゼロにすること)を目指す取り組みで、この取り組みから再生可能エネルギーやテクノロジー、農業、輸送の分野で様々な投資案件が生まれています。
これと並行して、ECが提案する「貯蓄・投資同盟」(欧州資本市場のより優れた統合を目指すECの取り組み)は、競争力の強化や欧州大陸が気候変動などの重要な問題に対処する能力の向上につながるエコシステムの構築を目指しています。
- https://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/BRIE/2025/769566/EPRS_BRI(2025)769566_EN.pdf
インフラ支出の拡大
欧州は、電力需要の増加に対応するため、電力・送電網の見直しも進めています。欧州委員会によると、欧州の送電網の約40%は40年以上前のものであり、今後10年間で必要な投資は5,840億ユーロに上ります。3EU送電網アクションプランは、2030年までに欧州大陸の国境をまたぐ送電インフラを倍増させることにより4、サプライチェーン(供給網)を改善し、電力需要拡大に対処することを目指しています。これに伴い、株式戦略への投資家にとってはインフラやエネルギー分野で投資機会が生じるとみられます。
同様に、EUのデジタル10年プログラムの一環として、通信会社は接続性の向上に向けて投資を行っています。5また、欧州の通信市場では企業統合が一層進みつつあり、合併や買収でより大規模かつ強力な企業が生まれる可能性があります。例えば、電線メーカーのプリスミアンは最近、米国の光ファイバー会社を買収し、同社によれば、住まいの問題解決にエンド・ツー・エンド(二者間を結ぶ経路全体)の光ファイバーを提供する業界最大手の企業が誕生します。6
- https://ec.europa.eu/commission/presscorner/api/files/attachment/876888/Factsheet_EU Action Plan for Grids.pdf
- https://ec.europa.eu/commission/presscorner/api/files/attachment/876888/Factsheet_EU Action Plan for Grids.pdf
- https://commission.europa.eu/strategy-and-policy/priorities-2019-2024/europe-fit-digital-age/europes-digital-decade-digital-targets-2030_en;Europe’s digital decade
- https://www.prysmian.com/en/media/press-releases/prysmian-closes-the-acquisition-of-channell
勢いを増す
今年はこれまでのところ、欧州株式市場の中で最も好調なセクターは銀行セクターで、長期金利が銀行の利益を押し上げる中、欧州銀行セクターは8月に2008年のリーマンショック以来の高値をつけました。7
他のセクターの例では、フランスのタイヤメーカー、ミシュランは、業績が好調に伸びているにもかかわらず、株価は長期平均を下回って推移しています。しかし、景気全体がどうなろうとも、自動車は新しいタイヤを必要とします。ミシュランはタイヤ業界のトップ企業で、規模と高級ブランドのメリットを享受しています。
また、売上高で世界最大の広告会社ヒュブリシスの株価は、新たな事業獲得を受けて通期成長予測を最近上方修正したものの、長期平均を下回って推移しています。8しかしアクサIMグループは、同社のデータ・プラットフォームと人工知能ツールが引き続き成長を牽引する、と考えています。
明るい経済環境
全体的なマクロ経済環境も改善しつつあります。ユーロ圏は2025年4-6月期に0.1%成長し、1-3月期の0.6%成長から減速したものの、横ばいとした市場予想を上回りました。9さらに、GDP成長率の上昇が予想される中で市場のセンチメント(心理状況)は改善しつつあります。
- https://www.ft.com/content/c75ed243-d9d5-4013-b9b1-6e01617ce70d
- https://www.publicisgroupe.com/en/news/press-releases/publicis-groupe-first-half-2025-results
- https://ec.europa.eu/eurostat/en/web/products-euro-indicators/w/2-14082025-ap
欧州を巡るセンチメントは改善しつつある

実質GDP累積成長率の予測(縦軸は%表示)
出所:EPFR、Haver Analytics、ゴールドマン・サックス・グローバル投資リサーチ
ユーロ圏全体のインフレ率はここ数か月、欧州中央銀行の目標である2%またはそれに近い水準で落ち着いています。これに対し米国のインフレ率は2.7%で、米政権の関税のため、物価圧力が高まるとみられます。
関税による影響の全容はまだ明らかになっていませんが、欧州が7月に米国と合意した貿易協定は、企業と投資家の双方が待ち望んでいた一定の明確さをもたらしました。それまでは多くの企業が事業に関する投資判断を棚上げし、それが欧州の経済成長に影響を及ぼしていました。とはいえ、欧州の輸出業者は以前よりも高い関税を乗り切っていく必要があります。
関税や地政学的不確実性、低迷する経済成長といった逆風はあるものの、欧州株には依然としてかなりの上昇余地があると考えられます。相対的に良好なバリュエーションや成長と統合の改善見通し、ドイツやEU全体の財政刺激策を踏まえると楽観主義に傾く多くの理由があり、潜在的な投資機会は広範囲にわたり、かつ増加しているとみています。
企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
(オリジナル記事は10月07日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
※本資料で使用している指数について
ストックス欧州600指数:STOXX社が算出・公表している欧州先進国における株式市場の600社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。
MSCIワールド指数:MSCI社が公表している世界の先進国の株式市場の値動きを示す時価総額加重平均型指数です。
S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。
ナスダック総合指数:米国NASDAQに上場している全銘柄の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。
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